USPTOの新検索システムは公報にパーマネントリンクが張れない?

USPTOが提供する特許検索システムは、今年の頭からPatFT(特許公報)、AppFT(公開公報)、そして、庁内部向けのPubEASTとPubWESTが統合されたPatent Public Searchというモダナイズされたシステムが稼働していました。基本的には庁内で審査官が使っているのと同等のシステムが外部からも使えるということのようです。そして、9月末にレガシーのPatFTとAppFTのサービスが終了したことにより、Patent Public Searchを使うしかなくなりました。

Patent Public Searchを使ってみると、以前のシステムと比較してはるかに高機能で使いやすいのは良いのですが、どうも公報のパーマネントリンクが取得できないようです(もし、どなたかやり方を知っていたら教えてください)。ブログやメールで公報を紹介する時にちょっと困ります(Google PatentやEspacenetのリンクを使えば良いのですが、公報発行から掲載までちょっと間が開くので)。元々、USPTOの内部向けのシステムベースなので、パーマネントリンクの必然性が薄いのだと思いますが。

そう言えば、包袋チェックシステムのPublic PAIR(かなりレガシー感が強かったですね)ももうサービスが終了しており、新システムのPatent Centerに移行しています。こちらは、めちゃくちゃ使いやすいです。Patent Centerから公報のパーマネントリンクが得られないかと思いましたが、Patent CenterとPatent Public Searchは総合連携しており、公報の表示はPatent Public Search経由で行うようになっているので無理でした。

そういえば、商標検索のTESSもかなりレガシー感が強いので早くモダナイズ(できればパーマネントリンク機能付きで)してもらいたいものです。

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Madrid e-Filingでマドプロ出願が大幅簡素化

マドプロ出願というと、WIPO直ではできずMM2の書類を紙で作成して特許庁に送付する必要がありました。最近は電子現金納付を使えるようになってましたが、昔は特許印紙が必要だったので、特許印紙買いがてらわざわざ特許庁まで書類を持参したりしていました。また、書類に不備(特に、指定商品・役務のWIPO標準との不一致)があると、特許庁とFAXで何回かやり取りして修正するなど、全体的に電子化が進む特許庁業務の中でも昭和感が残る部分がありました。

しかし、2022年6月1日より、Madrid e-Filingというサービスが利用可能になり、マドプロ出願をWIPOのウェブサイトから直接行えるようになりました(特許庁情報ページ)。要するにMM2はもう不要です。

さっそく使用する機会がありましたが、最初こそちょっと戸惑ったものの、MM2を紙で作っていた時と比較すると大幅効率アップです。以下、いくつかコメントと注意点です。

  • WIPOに直接出願するとは言っても、特許庁に払っていた9000円は別途必要です。電子現金納付で支払えます。クレカも使えますが特許庁まで納付書を持参しないといけません。
  • e-Filingのページで国内基礎登録(出願)を指定すると自動的に必要な情報を読み取ってくれます。指定商品・役務は自動的に翻訳されて、WIPO標準と合致しないものを指摘してくれます(こりゃ便利!)。勿論削除しても良いのですが、変更の候補が列挙されるのでそこから適切なものを選ぶこともできます(めちゃ便利!)。今まで特許庁とのやり取りで時間を要していた部分が一気に省力化できました。
  • 指定国をチェックすると、料金を自動的に計算してくれます。支払はクレカで可能です(上述のとおり特許庁に払う9000円は別です)。
  • MM18は画面から情報を入力するだけなので、クライアントに署名もらう必要はありません。
  • 画面上の必須項目を全部埋めないと次の画面に進めないUIなのでとりあえずわかる情報だけ入力しておきたいという場合に不便です。必要な情報を全部用意して一気に入力することを想定しているようです。なお、ちょっとわかりにくいですが、My Portfolioのボタンを押して、メイン画面に戻ると、入力した分は自動保存されています。

とりあえず、出願は終わりましたが、これから先のプロセスでも何か目新しいことや注意点があれば書いていきます。

追記:

  • 上記のとおり、国内基礎登録(出願)を自動で読み取っているのですが、たまにエラーで読み取れないことがあります。そして、画面の遷移のたびに各ページの内容をチェックし、エラーがあると先に進めない仕様になっているので、この状態になると何もできなくなって詰みます。時間をおいてやり直すしかないと思います。この点、WIPOに改善依頼(ページ遷移のたびにエラーチェックして先に進めなくするのはやめてくれ)を出しておきます。
  • WIPOや特許庁は関係なくて、クレカ会社の問題だと思いますが、最後のWIPO料金の支払、クレカ決済が通りませんでした(理由は不明、枠は十分あります)。銀行振込みに切り替えて対応しました。なお、銀行振込みにしても国際出願日が遅れることはありません。
  • 出願後もMy Portfolioのページで審査状況をリアルタイムでチェックできます。これは、便利ですね。

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ウクライナ問題でとんだ落とし穴(PCT-PPH)

米国の事務所から日本国内移行案件のPCT-PPHの依頼を受けました。国際調査機関の見解書では特許性ありの結果が出ていたので楽勝と引き受けたのですが、何と、国際調査機関がロシア特許庁だったので日本の特許庁ではPPHが受け付けてもらえないことが判明しました。今年の5月10日からの措置です(特許庁の関連ページ)。PCT出願番号がPCT/IB20xxだったので気が付きませんでしたがうっかりしていました。

米国等の出願人が自国の特許庁ではなく、敢えてWIPO国際事務局(IB)を受理官庁にして、国際調査機関としてロシア特許庁を指定してPCT出願するパターンがたまに見られます。ロシア特許庁の調査が雑で特許性ありの判定をもらいやすいからと聞いたことがあります。

見解書の結果はもう既に出ているわけですし、PCT-PPHを認めたからと言ってロシアを利するわけでもないのに、何でこうなるのかよくわかりませんが、文句を言ってもしょうがないですね。

追記:特許庁に問い合わせましたが、PCT-PPHは駄目でも、通常の外国関連出願として早期審査を請求することは可能とのことです。事情説明書に国際調査機関の見解書の話を書いておけば、参照はしてくれるものと思います。しかし、そうなるとPCT-PPHを受け付けないことの意味がますますわからなくなってしまいます。

追記^2:外国関連出願としての早期審査(ロシア特許庁のISAを提出)が認められて爆速で特許査定になりました。結局、PCT-PPHでロシア特許庁を指定できないことによるデメリットは全然ないと思います。条約なので、他国と歩調を合わせぜるを得ないということでしょうか?

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【実務者向け】日本の代理人は国際意匠登録出願の更新を気にする必要はありません(為念)

ちょっと前に国際意匠登録出願(海外の出願人が日本を指定国に含めて行った意匠の国際出願(ハーグ))の補正手続を代理したことがありました。その意匠登録について、海外の代理人が「更新時期が近づいてきたので見積もりを出してほしい」と連絡してきたので「あれっ?」と思いました。意匠の国際登録はIB代理人(最初に国際出願を行った代理人)が更新すれば、すべての指定国に対して自動的に更新される(要するにマドプロと同じ)と思っていたからです。

特許庁に問い合わせましたが、やはり、私の理解は正しく、国際登録の更新は誰でもできるので日本の代理人がやってやれないことはないが、通常は、IB代理人(今回の場合は連絡してきた海外代理人)が行うものであると確認が取れました。国際意匠登録出願については、日本の代理人は中間処理して登録になれば後は基本的にやることはない(せいぜい登録証の転送くらいでしょうか)ということ(要するにマドプロと同じ)です。要は、この海外代理人の思い違いでした。こちらとしても、思い込みで重大なミスを犯す可能性を排除できて良かったです。めったにやらない手続は、たぶん大丈夫と思っていても、念のために特許庁に確認すべきと思います。

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今でもあるのか翻訳クラウドソーシング詐欺

前々回の記事を書くために、昔の(嫌な)思い出を思い返していたら、蘇ってきました、詐欺にひっかかった事件。知財とは関係ないです。

今は忙しくてやってませんが、開業直後の時期は、翻訳のクラウドソーシングサイトに翻訳者として登録していたことがありました。空いた時間に案件を受けて納品すればお小遣い稼ぎになるというレベルです。

ある日、特急だが割とレートが良い案件がメールで来たのでサクッとこなして納品すると、次の依頼が来ます。何件か終えて報酬の残高が10万円を超えたので、翻訳会社に請求したら音沙汰がありません。この段階で詐欺にひっかかったことがわかりました。Googleで検索するとその時点で結構な数の被害者がいたようです。

やり口はこうです。

1.詐欺師Xは、クラウドソーシングサイトAに登録(ネット上にある別の人のプロフィールを流用するものと思われます)。

2.Xは、正規の翻訳業者Oから依頼を受け、別の正規の翻訳業者Pを語って、クラウドソーシングサイトBに登録している翻訳者Y(被害者)にメールで依頼。

3.Yの成果物を受け取ったXはOに自分の成果物として納品して報酬を得る。

4.YがPに報酬を請求しても「何ですかそれ?」となる。

という仕組みです。相手のメールがgmailであること、欧州の翻訳会社なのにアジアの時間帯で営業しているように思えること等、今にして思えば怪しいこと満載だったのですが、当時は、クラウドソーシングで来た案件をこなしまくっていたのでうっかり騙されてしまいました。

別に翻訳に限った話ではなく、あらゆるタイプのクラウドソーシングで使われそうな手口です。今でもこのタイプの詐欺はあるのでしょうか?

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