「請求項xに従属する場合の請求項yまたは請求項zに記載の〜」といったクレームについて

外内案件で、送られてきたクレーム案に以下のような記載がありました。

as claimed in any one of the preceding claims when dependent on claim 2

特許庁では”any one of the preceding claims”(先行する任意の請求項)という記載はNGなので、たとえば、「請求項1から請求項5のいずれかに記載の」と具体的な数字に直して書く必要があります(経験済み)。

問題なのはwhen dependent on claim 2の記載です。たとえば、以下のようなパターンです。

請求項1:Aを備える装置
請求項2:さらにBを含む請求項1に記載の装置(A+B)
請求項3: さらにCを含む請求項1、または、請求項2に記載の装置(A+CまたはA+B+C)
請求項4:さらにDを含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の装置(A+D、A+B+D、A+C+D、A+B+C+D)
請求項5:BがB’である、請求項2に従属する請求項2から請求項4に記載の装置(A+B’、A+B’+C、A+B’+D、A+B’+C+D)

「請求項2に従属する」の限定がないと、出てきていない発明特定事項Bを引用するパターンが出てきてしまうので明確性要件違犯になってしまいます。同じことを請求項をばらすことで行おうと思うと、請求項数が増えて大変そうです。

ということで、このようなパターンで登録されている特許がないか調べてみましたが普通にありました。ということで、これについては、そのまま訳してしまってよさそうです。

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検察審査会から親展が来た

先日、以下のような親展が届きました。

検察と名が付く組織から「必ず開封してください」とは心臓バクバクでしたが、私が検察審査員の候補に選ばれたというお知らせでした。選ばれるのは、17000人に1人(0.007%)だそうです。こんな所で運を使ってどうすると思いましたが、めったにできない経験でおもしろそうだと思いました。

しかし、中の書類を見ると、審査員になれない者として、国務大臣、裁判官、検察官、弁護士等に加えて、弁理士も記載されています。ということで、残念ながら、次回に調査票が送られてきたときに弁理士である旨を告げて辞退することになるでしょう。弁護士はわかるとして、弁理士がなぜ審査員になれないかと一瞬思いましたが、たとえば、偽ブランド販売による商標法違反で起訴すべきかといった判断の時には中立的に意見をできない可能性があるのでしょうがないかと思います。

ところで、検査審査会法の法文上は、検察審査員の職務に就くことができないものとして、弁護士及び弁理士等と並んで、「天皇、皇后、太皇太后、皇太后及び皇嗣」が挙げられています。この項目いるのかと思ってしまいました。

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原文と翻訳文で明細書の段落番号を合わせる方法

外国語で書かれたPCT出願(外国語特許出願)を日本に国内移行する時、および、(典型的にはパリ優先権を使って)外国語書面出願を行った時には、原文に完全に対応している日本語翻訳文を提出する必要があります。ただし、段落番号は、手続補正をするまでもなく、最初から翻訳文に入れてしまって大丈夫です。

ここで、原文に段落番号がない場合には特に問題ないのですが、原文に段落番号がある場合には、できれば日本語翻訳と段落番号を合わせたいです(後で相互参照するときにめちゃくちゃ楽です)。しかし、外国と日本では、明細書の書式が微妙に違うので、段落番号がずれてしまうことがあります。典型的には、【図面の説明】において、以下のように図ごとに段落を割り当てているケースです。
[0010]Fig 1 is..
[0011]Fig 2 is..
[0012]Fig3 is..

日本は一つの段落で
【0010】
【図1】xxx
【図2】yyy
【図3】zzzz
といったようにせざるを得ないので、これ以降は番号がずれてしまいます。

この場合に、
【0011】
(意図的に空白)
【0012】
(意図的に空白)

といったように帳尻を合わせるためのダミーの段落を設けられれば、以降の段落がずれなくなってナイスです。ただ何となく審査官に怒られそうな気もします。そういう明細書が既にないかと思いましたが、J-PlatPatだとうまく検索できません(「(空白)」でサーチしても「空白」もヒットしてしまうため)。

そこで、試しにツイッターで聞いてみたところ「いつもそうやってる」という先生がいらっしゃったのでどうやら大丈夫そうです。次回からは私もやってみようと思います。

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英国特許庁からの郵便物は一見詐欺っぽい

英国特許庁から郵便物が届きました。差出人欄にはIntellectual Property Office (Patent Officeの通称)しか書いてありません。最初に見たときは、たまにある公的機関をかたって根拠のない登録料金をだまし取る輩かと思ってしまいましたが、正式な郵便物です。内容はマドプロの指定が英国で受理されたという通知でした。

封筒にも中身にも英国を表す表記が全然ないのがびっくりです。UK Patent OfficeやBritish Patent Officeではなく、The Patent Officeが正式名称です。現代の特許制度の起源は英国なんだからわざわざ英国という修飾語を付ける必要はないということでしょうか?

ちょっと話は変わりますが、英国内の商標登録出願については、メールによる通知サービスがあり、英国外の代理人でも異議申立やステータスの変更についてメールで通知を受けることが可能になっています。マドプロ出願時に代理人のメールアドレスを登録しているのでそれを使えばいいのにと思いましたが、登録しました。一般に、マドプロで暫定拒絶が出ることなく登録されてしまうと、現地代理人がいない状態で登録されることになり、異議申立等があった場合の国際郵便での通知による信頼性と時間のロスが気になりますので、その対応だけのために現地弁理士に代理人になってもらうこともあると思いますが、英国についてはメール登録しておけばとりあえず安心かと思いました(もちろん、対応のためには改めて現地代理人を任命する必要があります)。

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【実務者向け】権利譲渡後の代理人受任届について

特許でも商標でも意匠でも代理人が法的な意味を持つのは設定登録までであって、それ以降は代理人がいてもいなくても法律的には影響ありません。ただし、特許庁のサービスとして、特許権等に無効審判等が請求された時には、まず代理人に連絡が行き、審判代理人を引き受ける意思があるかを聞かれます(弊所はFAXやめていますが、メールで連絡が来ます)。登録に代理人がいない状態だと、出願人に郵送で連絡が行きますが、在外者だったりするとちょっと怖いですね(もちろん、英語を含めた通知が行くようですが)。

普通のプロセスで登録されれば、審査時の代理人が登録の代理人として扱われるのですが、登録に代理人が割り当てられていないケースもないわけではありません。典型的には、日本が指定国になったマドプロやハーグで拒絶理由通知がないまま一発登録になってしまった場合です。もう一つのパターンは登録後に権利移転した場合です。この場合、旧権利者の代理人が自動的に新権利者の代理人となるようなことはなく、新権利者の委任状を付けた代理人受任届の再提出が必要です(特許庁確認済)。

移転登録申請と代理人受任届の提出のタイミングですが、同時にやってはだめかと特許庁に聞いたら、代理人受任届は移転登録が設定登録されてから出してくれとのことでした。ただ、委任状については、移転登録申請に譲受人(本来はなくても問題ない)の委任状を添付しておくことことで、代理人届提出時(これはオンラインでできます)に援用すれば、わざわざ紙の委任状を再提出する必要はありません(そもそも、捺印がいらないのに何で郵送が必要なのかという気もしますが)。

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