画面領域内の画像を正確にテキスト認識する方法

PowerToysというマイクロソフトが提供する公式ユーティリティセットがあります。便利な機能満載で手放せません。特に便利に使っていた機能の一つとしてText Extractorがあります。スニッピングツールのように画面上の領域を選択すると領域内の画像をOCR処理してテキスト化してクリップボードに保持してくれます。

特に、公報データがイメージ版しかない時にテキスト化してコピペしたい場合などに重宝していたのですが、OCRが文章のコンテキストをまったく理解していないようで、たとえば、for(エフ オー アール)をf0r(エフ ゼロ アール)と認識するようなアホな間違いを平気でします。テキストの修正に結構な手間がかかっていました。

代替の機能として、翻訳アプリのDeepLの「画面上のテキストの取り込み」の方が全然優秀であることがわかりました。無料版でも使えます(設定でオンにする必要あり)。選択した領域のOCRをしてくれますが、ちゃんとAIが機能しているようでスペルミスはまずありません。本来翻訳のための機能ですが、原文を正確にOCRしたい場合でも使えます。

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Thunderbirdでメール作成時にPDFの添付ファイルが開けない問題の解決策

知財に直接関係ない、Thnderbirdの一般的お話しです。

Thunderbirdで受信したメールに添付されたPDFファイルはAcrobatで開けるのに、メールの作成中に添付したPDFファイルの内容を確認しようとするとエラーになり「関連付けを変更してください。」というメッセージが表示されてしまう問題にしばらく悩まされてきました。Acrobatの再インストールをしても直りません。

WordやExcelの添付ファイルは問題ないのでPDF固有の問題です。メールの送信前に添付ファイルが正しいものであるかを確認するのは必須(他人宛のファイルを送ったりしたら大変です)なので、困っていました。

設定でPDFをThunderbirdの内部ビューアーで開くようにすれば一応解決しますが、そうすると、受信済メールを含めてすべてのPDFファイルが内部ビューアーで開かれるようになるのでちょっと困ります。

Google検索で見ると少なくとも2021年には既に発生していた問題のようですが、日本語のサイトでは解決策は見つかりませんでした。

しかし、Thunderbirdの言語設定を英語に変えて、エラーメッセージ”Change the association in your preferences.”で検索するとすぐ答が見つかりました。設定エディターでpdfjs.disabledをtrueにすれば直ります。

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【弁理士の日記念企画(期限徒過)】初学者に知財を教える場合のポイント

期限を1日徒過してしまいましたが、弁理士の日記念企画というということで、知財業界での教育というテーマで書いてみようと思います。

自分は、金沢工業大学(虎ノ門大学院)で10年以上にわたり、知財の入門講座(「知的財産要論」)を担当してきました。8コマ(12時間)で、知財の経験がない学生を対象に、特許・実案・意匠・商標・著作権・不競法を全部カバーするというチャレンジング(教える方にとっても学ぶ方にとっても)な講座です。

この経験の中から、限られた時間内で未経験者向けの知財研修を行う際のポイントについていくつか書いてみようと思います。

①特許においては「手続関連」の話をどれだけ省略できるかがポイント

特許の説明で手続き的な話を始めると時間がいくらあっても足りなくなってしまいます。補正・分割出願・拡大先願(29条の2)・損害論・PCTあたりは実務上はきわめて重要であるのは当然として、初学者にとってはややこしいだけの話なので、そういうものがあるよレベルの説明に留めて、ばっさりカットすべきだと思います。

特許制度の意義、発明(技術的思想)の定義、新規性・進歩性の考え方等にできるだけ時間を割くべきです。

②特許権は禁止権であり、独占権でないことの説明は必須

一般に、特許を取れれば特許発明の実施が保証されると勘違いしている人は多いです。当然初学者でも誤解しやすいポイントです。利用発明、改良発明の話は時間をかけて行うべきです。私は、このあたりの説明は、昔Yahoo!に書いた記事「”特許を取れれば他人の特許権を侵害することはない”ということはありません」のたとえを使っています。

なお、合わせて、商標の場合は、登録商標の使用は保証される(不正競争防止法が関係する場合は別として)点も説明しておきたいです。

③新規性・進歩性の話と特許権侵害の話がごっちゃになる人がいる

公知の技術との共通性により新規性・進歩性が否定されて出願が拒絶になる話と、他人の特許発明との共通性により自分の技術の実施が特許権を侵害する話がごっちゃになっている初学者が一定数いるようなので注意が必要です(これは、ある程度知財を勉強した人でもそうで、たとえば、「この出願をすることでxx社の特許権を侵害することはないか?」といった問い合わせをしてくる方もいたりします)。

④特許の例としては実際の特許公報を使いたい。

発明は自然法則を利用した技術的思想の創作である、とは言っても正直イメージしにくいですよね。かと言って、「末端に消しゴムを備えたことを特徴とする鉛筆」のような(新規性要件を無視した)架空の例もイマイチだと思います。ということで、最近は、実際の特許公報を例として使っています。

公報の選択には気を使うところです。あまりに複雑で技術の説明に時間を要してしまうのもまずいですし、たまに見られるアホみたいな特許でも問題です。具体的イメージがしやすく、説明も容易で、かつ、特許としての有効性がわかりやすい公報として、最近は無印良品(良品計画)の6445744号(「リュックサック用肩紐及びそれを備えたリュックサック」)を使っています。技術の内容と優位性については無印のサイトでもわかりやすく説明されているので例として使いやすいです。

追記:公報を例に使って、クレームの構造とオールエレメントルール(権利一体の原則)について絶対に説明しておきたい所です(一般的な特許入門書でこのあたりに説明がほとんどないものがありますよね)。

⑤実案・意匠は特許との差分の説明で時間を節約

初学者向けの講座であれば、実案は特許のライトバージョンで無審査登録制がポイント、意匠は特許の工業デザイン版といった説明ではしょってしまってよいと思います。

⑥商標は「識別性」が最難関

特許と比較して商標は比較的イメージしやすく、理解も容易と思うのですが、「識別性」(商標機能論)の説明が最難所かと思います。伝統的な「巨峰」判例を使って説明したりしていますが、どこまで理解してもらっているか正直不安なところがあります。

追記:識別性に関する他の例としてLADY GAGA事件を説明したりもしましたが、かえって学生の混乱を招いたような気がしてきました。そもそも境界領域であって意見が割れがち、日本の審査運用が世界的に特殊、栗原としてもイマイチ納得出来ないwという理由により、説明例としては使わない方が良いかもしれません。

⑦著作権もどこをカットするか勝負

特許の場合と同様、著作権も全部説明していると時間がいくらあっても足りませんので、どこをカットするかが勝負所です。自分としては、著作者人格権と著作隣接権は大幅カット、損害論もカット、支分権は複製・上演・譲渡・公衆送信のみ説明、権利制限は私的複製と引用のみ説明という感じでしょうか?著作権制度の意義(自然権vsインセンティブ論)、二分論(表現vsアイデア)、支分権の構造等に時間を割きたいところです。

また思いついたら追記するかもしれません。

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外国語特許出願の34条補正翻訳文提出手続備忘録

外内でPCT出願の34条補正翻訳文を提出する手続が続いたので自分用の備忘録として書いておきます。

1.どういう手続か?

PCT出願の国際段階でした34条補正を日本国内移行出願に反映させる手続です。19条補正の場合は、補正後の翻訳文のみを提出して国内移行すればよいのですが、34条補正の場合は、PCTの原文どおり(または19条補正後)の内容で翻訳文を提出した後に、補正の翻訳文を改めて提出することが必要です。

2.いつまでにやるか?

国内処理基準時までに行う必要があります。

細かい点として、故意でない期限徒過の制度を利用して国内書面(と翻訳文)を提出した時には、国内書面を出した時には既に国内処理基準時を過ぎていますので、34条補正翻訳文を提出する機会はありません(特許庁確認済)。この場合でも、34条補正と同様の補正を通常の国内出願の自発補正として行えば良いので特に問題はありません。

3.どうやってやるか?

「特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書」でインターネット出願ソフトで提出します。形式は通常の手続補正書と類似ですが、補正の根拠(新規事項追加でないこと)を(上申書ではなく)【その他】欄に書く必要があります。34条補正を行った時に補正の根拠が出願人(現地代理人)により書かれているはずですが、34条補正の内容は最先出願日から30カ月は公開されません。翻訳文提出特例期間が適用されている場合はPatentScopeで見ればよいのですが、そうでない場合は、国内処理基準時(34条補正翻訳文提出〆切)までPatentScopeで見ることはできませんので、補正の根拠情報は現地代理人から直接入手する必要があります。

4.やらないとどうなるか?

34条補正の翻訳文を提出しなくても特にペナルティはなく、34条補正がないものとされるだけです。後で国内段階で自発補正しても同じです。マルチマルチ従属クレームの手当等が必要な場合は自発補正でまとめてやった方が楽かもしれません。

5. 国内自発補正ではなく34条補正として行う意味は何か?

これは特許庁に聞きましたが、条文の説明が返ってくるだけで、具体的な答は得られませんでした。自分として考えているのは以下の2点です。

①補正の内容が新規事項追加を問われそうなものである場合、34条補正であれば、国際段階で一度認められていれば、その後、原文新規事項により拒絶される可能性はまずないのではないか?一方、国内で自発補正をすると、通常どおり、新規事項追加がチェックされてしまう。

②権利化を急いでおり、かつ、34条補正でクレーム数が激減している場合、34条補正翻訳文提出後に審査請求すれば減少後のクレーム数の料金で済む。国内自発補正として行うと、減少前のクレーム数で審査請求しなければならず料金が無駄。

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移転登録済通知書をPDFでもらう前提

先日、特許庁から「折曲禁止」と朱書きされたA4サイズ封書が届きました。特許証等は既にPDF化されていますので何だろうと思って開けたら、商標の登録移転済通知書でした。今まで三つ折りで送られきてた書類が何で「折曲禁止」なのかと思いましたが、たぶん、封筒を使い回しているだけでしょう。

そして、ここで生まれる第2の疑問は何故PDFで届かないかです。特許証等は既にPDFでもらっています。特許庁ウェブサイトの当該ページをよく見ると「※移転登録済通知をオンラインで受領希望の方は、提出する申請書に申請人又代理人の識別番号を記載することが必須です。」と書いてあります。登録系のシステムから審査系のシステムにつなぐために必要なんでしょうか?それくらい調べてくれないものかとは思いますが。

元々、登録済通知書はスキャンしてPDF管理していたので特に問題はない(強いて言うと特許庁からの通知タイミングが遅くなるという弊害がある)のですが、登録系のテンプレを全部直しておきました。

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