【小ネタ】ジュリアン・アサンジが自分の名前を商標登録出願の件

WikiLeaksの創設者ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)氏が自分の名前を商標登録出願したニュースがちょっとだけ話題になっています(参照記事(英文))。

今まで同じような話を何回書いたかもう覚えてませんが、この手のニュースが出ると、必ず「アサンジの名前が勝手に使えなくなる」という人が出てくるのでまた書いておきます。商標権とは、商標(名前とかマーク)を商品やサービスの標識として独占的に使える権利です。なので、仮にアサンジ氏の出願が無事登録されたとしても、商品やサービスの標識でなく普通にジュリアン・アサンジ氏の話を書くためにジュリアン・アサンジと書くのは全然問題ありません。より詳しくは、本ブログの過去記事「【保存版】商標制度に関する基本の基本」をご参照下さい。

そういえば、米国共和党のサラ・ペイリンやロシア美人スパイのアンナ・チャップマンも自分名前を商標登録出願したというニュース(参照記事参照記事)がありました。まあ、日本でも、「マツモトキヨシ」とか「本田ちよ」とか自分の名前を商標にしているケースはいっぱいありますので、別に珍しい話ではありません。

カテゴリー: 商標 | コメントする

米国でのTV番組そのまんまストリーミング再送信はやはり違法ぽい

ちょっと前に書いたエントリーで触れた米国のivi.tvというTV番組ネット再送信サービスが裁判所の命令により事業停止したとのニュースがありました(参照ニュース(英文))。

ivi.tvはTV番組をそのまんまネット上で契約者向けに再送信するサービスです。SlingBox(米国のロケフリ的商品)をホスティングする等はまったくやっておらず、TV番組をそのまんまストリーミングで配信するという大胆なビジネスモデルです。私のエントリーでも「何となくアウトな気がします」と書きましたがその通りになってしまいましたね。

なお、ivi.tvとまねきTVとの比較をしたがる人もいると思いますが、まねきTVとivi.tvは目的は似てますが、前述のとおりサービス構成がまったく違います。ivi.tvにはまねきTVのように個人でやれば合法な行為を業者が顧客の機器を預かって行なうという要素がまったくありません。米国でまねきTV類似のシステムとしては、一般にSlingBoxホスティングというサービス形態がこれに当たり、何社か営業をしています。SlingBoxホスティングが合法かどうかには議論の余地があるようですが、一応個人がやれば合法なSlingBoxの機能を、事業者が機器を預かってやっているだけという理屈が今のところ通っているようです。

ところで、ivi.tvがなぜこのように大胆なビジネスモデルを始めたかの根拠ですが、インターネット上のストリーミング配信はケーブルTVと同じであるというロジックのようです。以前のエントリーにも書きましたが、米国では、地上波TV放送をケーブルTV事業者が規定の料金を再配信することに対してTV局は禁止権を行使できません。これに関して、米国著作権法111条には、FCCのルール、規制、認可にしたがったケーブル事業者のみが再配信できる旨の規定がありますが、ivi.tvは、自分たちもFCCのルール、規制に従っているので問題ない(そもそも、ivi.tvの実体はホスティング業者なのでFCCの規制とはあまり関係ない)とのちょっと無茶な理由付けを行なっています。このロジックに対して裁判官は「論外」と結論づけています。

まだ、一審なので最終的にどうなるかわからない(とは言え、個人的にはivi.tvが勝つのは厳しいと思います)ですが、裁判の過程において、米国におけるTV番組ネット再送信のあるべき姿に対する注目が高まることを期待します。

カテゴリー: メディア, 著作権 | コメントする

中国商標における「攻撃は最大の防御」について

タオルが特産品である今治市のタオル組合が中国で今治タオル(Imabari Towel)の商標を出願したところ、今治と全然関係がない中国の団体が先に類似商標を出願していたために、本家の今治市の方が拒絶になってしまったという事件がありました(参照記事)。

中国で偽物商品を作って売られるのはまだ我慢できるとしても(もちろん許される話ではありませんが)、偽物の方が本家よりも優先されてしまって本家が権利を獲得できない本末転倒状態はさすがに困りますね。今までにも「クレヨンしんちゃん」とか「青森」だとかこのような事例は数多くあります。

一般に、こういう関係ない第三者が抜け駆け的に出願してしまう行為を「冒認出願」と言います。(「冒認」とはこの文脈でしか出てこない特殊な知財用語です。特許の世界でも冒認出願はあります(たとえば、共同研究していた人が会社をやめてから自分の名義で出願してしまうパターンなど)。中国(そして、台湾や香港)における商標の冒認出願問題は当面の間続きそうです。

現行の中国の商標制度では、海外地名や海外の著名商標に関する保護がちょっと弱いという問題点があります。ゆえに、仮に日本で有名なブランドや特産地であっても中国であまり有名でないと冒認出願がスルーでそのまま登録されてしまうケースがでてきます。商標出願料金はそれほど高いわけではないので、とりあえず出願してみてうまく取得できたら後で高額で転売しようという商標ゴロ的なケースもあると思われます(ドメイン名の不正取得行為であるサイバースクワッティングと似たようなパターンです)。

ちなみに、日本の場合は、海外の著名商標を不正の目的で出願しても登録されないとの規定(3条1項19号)がありますし、不正競争防止法による保護もありますので商標ゴロ行為は困難です。

この問題の対策については日本の特許庁でも対策をまとめています(参考ページ)。しかし、かいつまんで言ってしまえば最善の対策は先に出願してしまうということです。

中国に商標登録出願するとだいたい1区分あたりで10万円強くらいで権利取得できます(中国は日本とちがって1出願1区分なので、たとえば2種類の商品/サービス(たとえば、衣服と洋服屋)について出願する場合には2つの出願になってしまうので費用は倍額かかります)。一方、冒認出願されてしまってから異議申立や無効審判で取り消すことになると費用も手間もかかります。さらに万一訴訟沙汰になると弁護士さんマターになり費用面でも手間の面でもさらに大変になります。

中国はパリ条約加盟国なので、日本に商標登録出願してから半年以内に中国に優先権を主張して出願すると出願日を繰り上げる効果が得られます。どういうことかというと、たとえば、1月5日に日本に出願し(それから6ヶ月以内の)5月1日に優先権を主張して中国に同じ商標を出願すると中国の出願日が1月5日として扱われるようになるということです(つまり、1月5日から5月1日の間に冒認出願されていても大丈夫)。日本に商標を出願した場合には出願日から6ヶ月以内に中国(および他の国)に出願するかどうかの意思決定をした方がよいかと思います(なお、特許の場合はこの優先期間は1年となります)。

中国の商標事情はひどすぎるという意見もあると思いますが、日本も昔はフランスに全然関係ないベッドとかロンドンに全然関係ないキャバレーとかが商標登録をしていますので、海外の地名に関する権利に無頓着であるというのは、国の中に知財保護の意識がある程度普及するまではしょうがないのかなという気もします(もちろん、だからと言って冒認出願してよいというわけではありませんが)。


CMです。テックバイザー国際特許商標事務所では中国への商標登録出願代理業務を強化しています。冒認出願(抜け駆け出願、勝手出願、商標ゴロ行為)の最善の防止策としての早め早めの商標登録出願をご検討ください。英語ができる現地代理人と英語で直接コミュニケーションを取ることで迅速かつお手軽な料金のサービスを提供しています。お問い合わせは info[アットマーク]techvisor.jpまでお気軽にどうぞ。

カテゴリー: 商標 | タグ: | コメントする

【入門】特許文献の活用法について

きわめて基本的なことを書きますが、特許制度のポイントは発明(技術的アイデア)の公開の代償として独占権を付与することにあります。したがって、秘密にしたままで独占するという選択肢はあり得ません(特許出願しないで秘密のノウハウとするのは勝手ですが、万一、ノウハウが流出して他社に使われたり、他社が偶然同じアイデアを実施してもそれを禁止することはできません)。特許のことを英語でpatentと言いますがこれは「明らかな」という意味の形容詞patentと語源を同一にしています(豆)。

特許はイノベーションを推進しているかそれとも阻害しているかという議論を行なう場合にはこの「特許は公開が前提」というそもそものポイントを考慮する必要があります。もし、特許制度がなければ、摸倣されたくないアイデアは秘密のノウハウ化するしかありません。そうすると同じようなアイデアをいろいろな会社で重複研究することになり、産業全体で大きな無駄が発生する可能性があります。特許制度により発明が公開されると、それを見た他の人がその発明に基づいてより良い発明をすることができるようになり産業の発展に貢献できます(まあ、実際には特許ゴロのような存在もあってそう良いことばかりではないのですが)。

いずれにせよせっかく特許の中身は世の中に公開されていているのですから、それを使わない手はありません。特許文献は通常はウェブURLのアドレススペース上にはないのでサーチエンジンではサーチできません。専用のサイトで検索する必要があります。有料のデータベース・サービスもありますが、無料サービスでも結構な情報を入手可能です。日本であれば、特許電子図書館(IPDL)があります。米国の特許であれば、USPTO(米国特許商標局)のサーチサービスGoogle Patent Searchが使えます。

サーチのやり方についてはWeb上でもいろいろ情報がありますし、入門書も出ています(たとえばこちら)。このブログでもおいおい紹介していこうと思います

ここでは、アイデアの宝庫たる特許文献をどう活用していくかのポイントをご紹介します。

1.守る
テクノロジーの世界で商売しているのであれば、自社が実施中(ないし実施予定)のアイデアを他社(特に競合他社)が既に特許化していないかは常にチェックしておくべきです。特許の世界で「知らなかった」は通用しません(過失・故意がなくても差止めはされ得ますし、損害賠償においては過失が推定されるので訴えられた側が自分に過失がなかったことを立証しなければいけません(これは現実にはきわめて困難))。要は、テクノロジーの世界で商売する以上他社の特許動向を知っておくのは当然と考えられているということです。万一、自分が開発・使用しようと思っていたアイデアが他社により特許化されていた場合には、1)設計変更による回避、2)ライセンス、3)買い取り、4)無効化などの手段を取ることができます。

2.回避する
既に世の中で公開されているアイデアは特許化されませんので、自分で特許出願する時には同じアイデアが既に知られていないかをチェックする必要があります。と言っても世の中にあるあらゆる情報をチェックするわけにはいきません。チェック対象としては特許文献は最優先すべきものです。

3.改良する
発明をする場合にまったくの無の状態から優れたアイデアが生まれることはほとんどありません。既にあるアイデアや特許を改良するのが通常で。改良部分に十分な進歩性があれば特許化できます。特許文献を調べて、ここを直せばもっとよくなるかも等と考えてみるのは優れた発明を行なうための近道です。なお、既にある特許に新たな要素を加えて改良発明(利用発明)をした場合、その発明を特許化することはできますが、その場合でも元の特許発明の権利者の許諾がないと改良特許発明は実施できません(特許とは他者の実施を禁止できる権利であって自分の実施を保証してくれる権利ではありません)。ただし、魅力的な改良発明を特許化できれば元の特許権者と交渉してクロスライセンスできる可能性が高まります。

4.つぶす
特許訴訟関係のニュースが出るとたまに「何でこんな当たり前のアイデアが特許になるんだ」と文句を言う人がいますが、本当に当たり前であれば証拠を示すことで特許を無効にすることができます。要はその特許の出願前に同じアイデアが既に世の中に知られていたことを示せばよいのです。無効にする(新規性・進歩性を否定する)ための材料は、別に特許文献である必要はありません。学術論文、製品説明書、仕様書、Webページなど世の中一般に公開されていてかつ日付の証明ができるものであれば何でも使えます。ただ、特許文献は日付の証明がしっかりしているので無効にする際の証拠としては使いやすいと言えます。

5.ライセンスする/買い取る
特許権は自由にライセンス/売買できますので、特許文献を検索して興味深い特許があればライセンス交渉/売買交渉をすることもできます。そのような取引のためのマーケットプレースを作ってもっと自由に特許を流通させましょうというのがいわゆる「オープン・イノベーション」の考え方です。ところで、世の中には自分で発明をするのではなく他者から特許を買い集めて訴訟を起こす(ないし、訴訟をちらつかせてライセンス料を得る)ビジネスがあります。これが一般にパテント・トロール(特許ゴロ)と呼ばれている「ビジネス」形態です。

6.学ぶ
特許とは直接関係ないお話しとして、特許文献は技術文献としても有用です。マニュアルや論文等には出ていないシステムの内部的仕組み等が記載されていることもあります。

このブログでもIT分野で興味深い特許の公開文献をピックアップして紹介していく予定です。

カテゴリー: 特許 | 1件のコメント

どんどん広がる自炊支援サービスについて

TSUTAYAに引き続きマンガ喫茶チェーンのメディアカフェポパイというところも試験的に自炊支援サービスを始めたようです(参照記事)。

店内で裁断機とスキャナーを時間貸しするわけですが、もちろん、店の本を裁断・スキャンさせるわけではなく、客が持参した本をコピーするだけなので法律上の問題はなさそうです(コンビニのコピー機と同じです。)老婆心ですが、マンガ喫茶に客が自分の本を大量に持ち込むようなサービスをやって管理面では大丈夫なのでしょうかね?

TSUTAYAのサービスは1冊300円でしたが、こちらのスキャナーレンタルは30分360円で、一般に1冊スキャンするのに30分弱かかるようなので、大体同じくらいの設定でしょうか?自分的には結構高いような気がしますがどうなんでしょう。ITmediaの記事によるとTSUTAYAの方のサービス開始後7日間で客は3人だったそうです(笑)。もう少し価格を落として宣伝すれば需要があるのでしょうか?正直よく読めません。

と言いつつ本を買いたくても置き場所がなくて躊躇する人は世の中にいっぱいいると思います(私も含めて)ので、ほとんどの本が電子化されて自炊作業そのものが過去の遺物になる世界が早く来ることを希望します。

カテゴリー: メディア, 著作権 | タグ: , | 1件のコメント