中国商標における「攻撃は最大の防御」について

タオルが特産品である今治市のタオル組合が中国で今治タオル(Imabari Towel)の商標を出願したところ、今治と全然関係がない中国の団体が先に類似商標を出願していたために、本家の今治市の方が拒絶になってしまったという事件がありました(参照記事)。

中国で偽物商品を作って売られるのはまだ我慢できるとしても(もちろん許される話ではありませんが)、偽物の方が本家よりも優先されてしまって本家が権利を獲得できない本末転倒状態はさすがに困りますね。今までにも「クレヨンしんちゃん」とか「青森」だとかこのような事例は数多くあります。

一般に、こういう関係ない第三者が抜け駆け的に出願してしまう行為を「冒認出願」と言います。(「冒認」とはこの文脈でしか出てこない特殊な知財用語です。特許の世界でも冒認出願はあります(たとえば、共同研究していた人が会社をやめてから自分の名義で出願してしまうパターンなど)。中国(そして、台湾や香港)における商標の冒認出願問題は当面の間続きそうです。

現行の中国の商標制度では、海外地名や海外の著名商標に関する保護がちょっと弱いという問題点があります。ゆえに、仮に日本で有名なブランドや特産地であっても中国であまり有名でないと冒認出願がスルーでそのまま登録されてしまうケースがでてきます。商標出願料金はそれほど高いわけではないので、とりあえず出願してみてうまく取得できたら後で高額で転売しようという商標ゴロ的なケースもあると思われます(ドメイン名の不正取得行為であるサイバースクワッティングと似たようなパターンです)。

ちなみに、日本の場合は、海外の著名商標を不正の目的で出願しても登録されないとの規定(3条1項19号)がありますし、不正競争防止法による保護もありますので商標ゴロ行為は困難です。

この問題の対策については日本の特許庁でも対策をまとめています(参考ページ)。しかし、かいつまんで言ってしまえば最善の対策は先に出願してしまうということです。

中国に商標登録出願するとだいたい1区分あたりで10万円強くらいで権利取得できます(中国は日本とちがって1出願1区分なので、たとえば2種類の商品/サービス(たとえば、衣服と洋服屋)について出願する場合には2つの出願になってしまうので費用は倍額かかります)。一方、冒認出願されてしまってから異議申立や無効審判で取り消すことになると費用も手間もかかります。さらに万一訴訟沙汰になると弁護士さんマターになり費用面でも手間の面でもさらに大変になります。

中国はパリ条約加盟国なので、日本に商標登録出願してから半年以内に中国に優先権を主張して出願すると出願日を繰り上げる効果が得られます。どういうことかというと、たとえば、1月5日に日本に出願し(それから6ヶ月以内の)5月1日に優先権を主張して中国に同じ商標を出願すると中国の出願日が1月5日として扱われるようになるということです(つまり、1月5日から5月1日の間に冒認出願されていても大丈夫)。日本に商標を出願した場合には出願日から6ヶ月以内に中国(および他の国)に出願するかどうかの意思決定をした方がよいかと思います(なお、特許の場合はこの優先期間は1年となります)。

中国の商標事情はひどすぎるという意見もあると思いますが、日本も昔はフランスに全然関係ないベッドとかロンドンに全然関係ないキャバレーとかが商標登録をしていますので、海外の地名に関する権利に無頓着であるというのは、国の中に知財保護の意識がある程度普及するまではしょうがないのかなという気もします(もちろん、だからと言って冒認出願してよいというわけではありませんが)。


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