【実務者向け】「本明細書に記載の発明。」といったタイプのクレームについて

たまに請求項が1つしかなく、「【請求項1】本明細書に記載の発明。」となっているような公報を見ることがあります(出願人が在外者のことが多いように思えます)。PCT国内移行や分割出願において、とりあえずのプレースホルダーとして記載しておき、実体審査が始まる直前に自発補正することを想定しているのだと思います。

それとはまた別に、ちゃんとした請求項を記載しつつ、1個だけ「【請求項10】図1に記載の方法。」といった請求項を用意し、そのままで実体審査に入っている出願を見ました。当然ながら、明確性要件違犯の拒絶理由が通知されます。なんでこんなことをするのかと思いましたが、一発特許査定を避けて、必ず拒絶理由通知が出るようにしているのかと思いました。この例で言えば、請求項10以外の請求項に拒絶理由がない場合でも、必ず一度は拒絶理由通知が来ます。それに応答して、請求項10を削除すれば特許査定になります。

特許査定後でも分割できるようになった今、何か意味があるのでしょうか?特許庁の審査係属期間を長くし、分割出願の検討に十分な時間をかけられるようにするのを狙っているのかもしれません。

同様に、最初の拒絶理由通知への応答のクレーム補正で「【請求項10】図1に記載の方法。」を追加した出願も見られました。これは、いきなり拒絶査定を避けて、確実に最後の拒絶理由通知をもらえるようにする(審判請求費用を節約する)ための手法なのでしょうか?実際、意見書には、「請求項10は記載要件違犯、他の請求項は拒絶理由なしの査定をください」的なことが正直に書いてありました。しかし、審査官はこれを無視していきなり拒絶査定にしていました(その後、補正→前置審査で無事登録にはなりましたが審判請求費用節約の目的は達成できなかったわけです)。審査官が最後の拒絶理由を通知すべきなのに通知しなかったという点を争おうとしても、結局不服審判請求が必要になるので審判請求費用を節約するのは無理筋と思います。

一般に、弁理士が代理人である場合に、拒絶理由をもらうためにわざと間違ったことを記載する手法というのはどうなのでしょうか?違法ではないですが審査官の心証を著しく害するのではと思います。拒絶理由を確実にもらいたいのであれば、「前記」の記載をわざと間違えるなど方がマシなのかもしれませんが、審査官が見落としてそのまま特許査定になってしまう可能性もあるので難しいところです。

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解説系YouTube動画の作り方(自分流)

「栗原潔の知財解説チャンネル」なるYouTubeチャンネルを始めました。まだ1本しかアップしてませんがこれからコンスタントにアップしていく予定です。

https://www.youtube.com/watch?v=44qehzXlfKQ

YouTube動画の作り方なんですが、凝り出すと、キリがないので、自分は以下のように作ってみました。基本はパワポのスライドショーで作ってます。もう少しくだけた内容だと、テロップやアニメーションを駆使して、一般的なYouTuberのように作ってもよいのですが、このようなある程度複雑な知財解説の話だと普通のプレゼンのようにした方が聞いてる方もわかりやすいのではと思います。また、おっさん(爺さん)がずっと顔出しして話すのも見てる方としてはあまり楽しくないと思います。

パワポでアニメーション込みのスライドショーを作成したら、メニューから「エキスポート」→「動画の作成」を選びます。これでスライドショーを操作しながらナレーションも一緒に録音して、動画をワンステップで作成できます。後で編集できるのでちょっとくらい間違えてもどんどん進めます。ずっとスライドショーだと味気ないので、最初と最後だけ、挨拶として顔出しします。最後に動画編集ソフトに読み込んで間違えたところをカットして、顔出し映像を追加して終了です。BGMがないと寂しいので、Band-in-a-Boxという古くからある自動演奏ソフトで生成したテキトーなジャズっぽい音楽を小さく流しています。

上の動画を自分で視聴してみると、イマイチ声が遠い(SONYのYouTuber向けミラーレスZV-E10内蔵のそれなりに高品質のマイクなのですが)ので、次回はマイクをもっと寄せて録音してみようと思います。

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【実務者向け】商標取消審判における権利者代理人への通知について

特許庁審判部から「代理人受任屆等の依頼」という件名のメールが届きました。私が、出願代理した商標登録に対して取消審判が請求されたが、この事件の代理人になる意思があるか2週間以内に回答してくださいというものです。

商標がいったん登録されてしまうと審査に係属していないので代理人の地位はなくなるわけですが、無効審判や取消審判が直接権利者に行ってしまうと、よくわからずに放置されてしまったりするリスクがあるので、出願代理人である弁理士にまず通知が行くという手順になっているのだと思います。これは知識としては知っていましたが経験するのは(たぶん)初めてです。

権利者に審判請求書の副本が届くのを待って、それを見てから判断すればよいか(取消審判の内容次第では対応しても意味がないケースもあるし)と思っていましたが、この特許庁のメールに対して代理人になる意思ありと返信して、代理人受任届(+委任状)を送ると弁理士側に副本が届き、意思なしと回答した場合のみに権利者に副本が届くようになっているようです。ということで、審判請求書の中身を見てから代理人になるかならないかを決めるというのはかないません。

とは言え、取消審判はほとんどの場合、不使用取消審判であって、審査で類似先登録を引用された出願人が請求するはずなので、特許情報プラットフォームで類似商標の出願を検索すると誰が請求人であるのかはわかりました。

もうこの商標は使ってないので対応不要、あるいは、別の弁理士に頼みますという可能性もゼロではないので、権利者に了承をもらった後、代理人になる意思ありとの回答をすることしました。

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めちゃくちゃ便利なエクスプローラ拡張ソフトQuick Access Popup

自分の場合、Windowsのエクスプローラで最も頻繁に行う動作は「最近使ったフォルダー」でしょう。しかし、なぜか、Windows 10から「最近使ったフォルダー」が、エクスプローラのクイックアクセスから消えてしまいました。「最近使ったファイル」や「よく使うフォルダー」はあるんですけどね。自分が欲しいのは、現在作業中のいくつかのフォルダーにすぐアクセスできる機能なんだよー。タスクビューでも過去に使用したファイルには容易にアクセスできるのですが、そのファイルが属するフォルダーにアクセスするのはスムーズに行きません(右クリックの項目に「ファイルの場所を開く」があればいいんですけどね)。

「最近使ったフォルダー」復活させるにはレジストリをいじればよい(たとえば、こちら参照)のですが、「最近使ったフォルダー」をクイックアクセスの先頭に表示するようにしても、いつのまにか後ろの方に移動してしまいます。その結果、現在作業中のフォルダーにアクセスする度に、エクスプローラーを開く→クイックアクセスをスクロールして「最近使ったフォルダー」を探す→「最近使ったフォルダー」をクリックするという操作を頻繁に行うことになり、かなりフラストが溜まっていました(Windowsって余計な機能が多い割にかゆいところに手が届かないことが多いですよね)。

「最近使ったフォルダー」をクイックアクセスのトップに固定する方法をずっと探していましたが見つかりませんでした。

しかし、Quick Access Popupというユーティリティにより、別のやり方ではありますが、この問題も解決しそうです。このアプリによりデスクトップ上のマウス右クリック(および、ホットキー)に任意のフォルダーを登録することができます。自分の場合はホットキー(SHIFT+CTRL+R)で「最近使ったフォルダー」を呼び出せるようにしました。これによりマウスカーソルがどこにあっても、カーソルのすぐそばに「最近使ったフォルダー」のリストが表示されます。めちゃくちゃ効率アップです。フリーウェアですが、このまま問題なく使えるようなら作者に寄付しようと思いました。

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インターネット出願ソフトの通信エラーメッセージについて

先週末、事務所の引越し後の、ネットの開通とPCのセットアップが終わったので最も重要なインターネット出願ソフトのチェックをしました。「発送書類の受取」を行うと、「V5IPX9999E 通信処理中に異常が発生しました。(略)connect 関数でエラーが発生しています」と如何にもシステム系のエラーのようなメッセージが表示されます(週末は発送書類の受取はできないですが、正しく動いていれば「時間外です」といったメッセージが表示されるはずです)。

「何も変えてないのに動かなくなった案件」かと思い、ファイヤウォール、プロキシ周りといろいろ調べてみましたが変わりません。2時間ほど奮闘後、この週末は電源メンテで特許庁のサーバが落ちていることが判明しました。告知をちゃんと見てない自分が悪いのですが「メンテ中です」みたいなエラーメッセージを表示する仕組みにはできないものでしょうか?

よくよく思い返せば以前も同じようなパターンには遭遇していたので、すぐわかるはずだったのですが、今回は事務所の引越し(ネットの引越し)と同時だったので、知らないうちに何か環境いじってしまったんじゃないかなーとの疑心暗鬼で無駄な時間を使ってしまいました。

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