Facebookで普段会ってない人に誕生日お祝いするときに気を付けたいこと

Facebookのお誕生日通知機能、普段ちょっと疎遠気味の人が再度コンタクトを取れるようにするきっかけを作ってくれるという点では良い仕組みだと思います(自分はセキュリティ上の観点から誕生日は公開してないですがそれはまた別論(参考過去記事))。

しかし、友人、特に、普段しょっちゅう会ってない友人や知り合いレベルの人のタイムラインに誕生日お祝いメッセージを送る(タイムラインに書き込む)時には、その人のタイムラインを少し遡って内容をチェックしておくべきだと思います。そもそも、機械的に定型メッセージ送るよりは、やはりその人の近況を知った上でカスタマイズしたメッセージを送るべきですし、さらに言えば、その人が既に亡くなっている可能性もあるからです。

実際、昨年急逝した私の友人のタイムライン上に多くのお誕生日おめでとうメッセージ(その多くは定型的なもの)が表示されて、ちょっと辛い状態になっています。数ヶ月遡ってタイムラインを見れば亡くなっていることはわかるのですが。その友人はそれなりの地位の人だったので友人の輪が広かったのでしょう。そして、こういうケースを見たのは一度や二度ではありません。

なお、Facebookでは、アカウントの持ち主が亡くなった場合に、アカウントを追悼アカウントにしてくれる機能があります。タイムラインの情報はそのまま残りますが、当然ながら他ユーザーに誕生日メッセージは送られなくなります。

アカウントを追悼アカウントにするためにはFacebook上のフレンドまた家族が請求する必要があります。また、家族であればアカウントの削除を依頼することもできます。いずれも、自動的に行われるのではなく、Facebook担当者側でのチェックは入るようです(なので気にくわない人を死んだことにして…なんて手は使えません)。

追悼アカウント機能があるとは言え、設定が遅れている場合もありますし、家族がアカウントを引き継いでということもあると思うので、やはり上記のようにタイムラインを遡って近況を確認するのはメッセージを書く側の礼儀としてやっておくべきでしょう。

なお、Facebookのポリシーとして故人のパスワードは家族であって教えてもらえません。自分の死後にアカウントの運営を(少なくとも一定期間)家族に任せたいという人は事前にパスワードを教えておくしかないですね。

自分のケースで言うと、自分が急死した時に家族に見てもらうためメモ(紙)を某所にしまってあります。銀行口座情報、保険情報、業務を引き継いでくれる弁理士先生のリスト、クライアントのリスト、手持ちビンテージ楽器を処分するときのオークション相場金額に加えて、ソーシャルネットワークのパスワードも書いてあります。

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【自己解決】WordPress 4.2で急に投稿ができなくなった件

本ブログはWordPressで動いているのですが、4.2に自動アップデートしたら、急に投稿ができなくなってしまいました。

いつも使っているマイクロソフトのLive Writerだと”Internal Server Error 500 ”データベース内の投稿を更新できませんでした” でエラーになります。WordPressの管理画面から投稿しようとするとそもそも新規投稿の画面が崩れています。

いろいろと調べると英語だけの投稿であればちゃんと投稿されることがわかり、問題は日本語文字コード関連ぽいことがわかりました。

応急処置としてwp-includes/wp-db.phpとwp-includes/post.phpをWordPress 4.1のものに置き換えるとLive Writerからはちゃんと投稿できるようになりました(WordPressの管理画面の新規投稿画面が崩れているのは直らないですが、これ以上応急処置をすると危険なのでほっておきました)。

ちょっと時間ができた時に調べるとMySQLの一部のテーブルが照合順序がujis_japanese_ciになっていることが判明しました。これを本来のustf8_general_ciに直すことで問題は解決しました(少なくともpostsのテーブルを直してだけで解決しましたがついでに他も直しました)。間違って設定していた理由は不明ですが、WordPress4.2以前では顕在化していなかった間違いが、WordPressの内部ロジック変更によって悪さをするようになったということなんででしょう。

データ喪失でバックアップからリストアなんて事態にならなくてよかったです。

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鳥貴族対鳥二郎裁判:アメリカだったらどうなるか

「『鳥貴族』とそっくり? ロゴ使用禁止求め『鳥二郎』を提訴」なんてニュースがありました。

焼き鳥チェーン最大手「鳥貴族」(大阪市)が、ロゴマークやメニューがよく似た焼き鳥店を営業され損害を受けたとして、京阪神で「鳥二郎」を展開する経営会社に対し、ロゴの使用禁止や約6千万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

鳥二郎は西日本ででのみチェーン展開しているようで、私は現物が見られないですが、テレビ報道から判断する限り紛らわしいのは確かなようです。しかも、鳥二郎は鳥貴族の店舗と同じビルの真下や真上のフロアで営業することが多いそうです。”二郎”というネーミングも(少なくとも無意識的には)鳥貴族の姉妹店という印象を与えているかもしれません。実際、テレビ報道では、間違えて入ってしまった、姉妹店かと思ったとインタビューに答えている人がいました。

しかし、単に紛らわしいからと言って、損害賠償や差止めが認められるわけではありません。

まず、商標権についてはどうでしょうか?「鳥二郎」と「鳥貴族」は商標としては類似しないと思われます。主に鳥料理を売っている飲食店なので識別力のない「鳥」の部分を除いて判断すると「貴族」と「二郎」が類似する要素はまったくありません。また、ロゴ、特に象形文字ぽい鳥のフォントですがこれも類似とまでは言えないと思います。配色も異なるので全体的な印象も異なります。

さらには、鳥二郎側(株式会社秀インターワン)は鳥二郎ロゴを既に商標登録しています(5698660号)。これに対して、鳥貴族側が異議申立を行なっています(現在進行中なので特許庁まで行かないと資料は閲覧できません)。(特許権の場合とは異なり)商標権を取得したということはその商標を使用できる権利があることを意味するので、(異議申立が認められない限り)鳥貴族側は苦しいです。おそらく裁判では不正競争防止法(2条1号1項および2項)で争うのだと思いますが、商標が類似していないとなるとこれまた鳥貴族側は苦しいです。

商標5698660号商標5698660号

その他、テレビ報道によると、メニューの構図、ウェブサイトの構成や文章、店内の雰囲気、従業員の制服などが類似しているそうです。

しかし、メニューの構図やウェブサイトの構成はアイデアであって著作物ではないので著作権法では守られません。また、文章については、鳥二郎側は明らかに鳥貴族を意識しているものの文章を微妙に変えているので著作権侵害を主張するのは厳しいと思います。

では、店の全体的雰囲気等はどうでしょうか?米国であれば、「トレードドレス」という特別な権利で商品・サービスの全体的なイメージが保護されることがあります。「トレードドレス」に関する有名な判例に、テキサスのローカルなメキシコ料理店のTwo PesosとTaco Cabanaによるものがあります。下の写真(裁判の証拠資料)からわかるように、店舗名や配色は違うものの、全体的イメージはよく似ています。裁判所は「トレードドレス」に基づきTaco Cabanaによる差止と損害賠償を認めました。

画像

しかし、日本では「トレードドレス」を直接的に保護する法律はありません(不正競争防止法で一部カバーされ得ますが)し、今までに「トレードドレス」的な権利が裁判で認められたケースもないようです。

ということで、報道されている情報から判断する限り、正直、鳥貴族側はちょっと苦しいと思われます。

想像ですが、鳥二郎側には専門知識のある知財アドバイザーがいて、権利侵害にならないぎりぎりのレベルでやっているのだと思います。感情論としては「やらしい」ですし、鳥貴族側にとってもおもしろくない話ですが、消費者としては競争によって安くておいしいものを食べられるようになることに越したことはないので、このケースは自由競争のひとつと考えるべきだと思います。

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コルビジェのジェネリック家具は著作権的にどうなのか?

「そもそもXは著作物なのか」というのは著作権がらみの裁判でよく論点になります。特に、実用目的の大量生産品が著作物になるのかが問題です。大原則は、著作権は芸術作品を保護する法律であり、大量生産品は意匠権で保護すべきということなのですが、裁判所の判断には常にそうなるわけではありません。

TRIPP TRAPPという椅子(下画像参照)の類似品に関する最近の知財高裁判決で、当該製品の著作物性を肯定する判断がなされ、知財関係者に衝撃を与えました(なお、判決では製品が類似していないことを理由に侵害は否定されました)。

出典: Stokke社ウェブサイト
出典: Stokke社ウェブサイト

詳細はブログ「企業法務戦士の雑感」の「応用美術の「常識」を覆した新判断〜「TRIPP TRAPP」幼児用椅子著作権侵害事件・控訴審判決」等をご参照ください。

もちろん、これによって今後あらゆる工業製品が著作物と判断されるということではありません。著作物と判断されるためのハードルが知財高裁により低く設定されたということです。すなわち、上の画像のような工業製品ぽい「作品」が裁判において著作物とみなされる可能性が高まったことです。この判断の影響はそれなりにあると思います。

家具の世界では「ジェネリック家具」という言い回しがあります。販売から相当な年月が経って仮に意匠権があったとしてもとっくに切れている著名デザインの家具のコピー品のことです。家具が著作物とされなければ一応合法です(ただし、不正競争防止法上の問題はあり)。家具を著作物とみなすと、通常、著作権の保護期間は意匠権よりもはるかに長いので問題になるケースが出てきます。「ジェネリック家具」として有名なものの一つであるフランスの建築家ル・コルビジェの作品について考えてみましょう。

コルビジェは1965年没なので、仮に、コルビジェがデザインした家具が著作物と判断されようとも、2016年の正月に著作権の存続期間が満了し、パブリックドメインになりそうに思えます。しかし、ここで注意しなければいけないのは戦時加算です。戦時加算は洋楽の著作権切れで問題になることが多いですが、戦勝国の著作物すべてに及びます。コルビジェはスイスとフランスのに二重国籍なのでその著作物は戦時加算の対象になると思われます。何年加算されるかは、家具のデザインを創作したタイミングによりますが、同氏の作品として有名なLC2 Grand Comfortの場合で言えば、1928年作のようなので(参考リンク)、戦時加算がフルに(約10年)加算されてしまいます。そして、そうこうしているうちにTPPのからみで日本の著作権保護期間が70年に延長されてしまうと、2036年の正月までコルビジェ家具の著作権は切れないことになります(期間延長と同時に戦時加算撤廃が行なわれると仮定)。

出典:MoMAウェブサイト出典:MoMAウェブサイト

さらに言えば、MOMAの情報によると、LC2 Grand Comfortには、コルビジェに加えてPierre Jeanneret(1967年没)とCharlotte Perriand(1999年没)がクレジットされているので、3者による共同著作物と判断されれば、TPPや戦時加算は関係なしに、最後に亡くなった著作者の死後50年まで著作権が存続しますので、どちらにしろ2049年以前に著作権切れにはなり得ません。

もちろん、コルビジェの家具が著作物とされるかどうかは実際に裁判しないとわかりません。ただ、前記のリンクにあるように、LC2 Grand ComfortはMoMA(ニューヨーク近代美術館)に所蔵されているくらいの作品なので、著作物と判断される可能性はあるでしょう。既に持っている家具を自分で使う分には問題ないですが、「ジェネリック家具」(特にデッドコピーに近いもの)の販売ビジネスについてはちょっと不透明感が増したと言えます。

強力かつ存続期間の長い権利が登録もなしに発生してしまう現在の著作権制度は、こういう境界線が微妙なケースでは特に不都合が多いですね。

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「色彩のみからなる商標」出願一番乗りはあの会社のあの色

商標法の改正により2015年4月1日から音の商標、色彩のみから成る商標等のいわゆる「新しいタイプの商標」が出願できるようになったのは既に何回も書きました(5)。出願一番乗りグループについては既に公開公報が発行されたという特許庁のプレスリリースが4月14日付けでありました。

4月1日から10日までで音の商標166件、色彩のみの商標203件、位置商標106件、動き商標37件、ホログラム商標3件の計515件の出願があったそうです。商標は先願主義ですし、大企業にとっては出願費用は知れていますから、多くの企業が速やかに出願することになったのはうなずけます。

前記プレスリリースには代表的な出願の例が載っています。また、番号一覧も載っていますので、J-PratPatの「商標番号照会」メニューから詳細を検索することも可能です(「商標出願・登録情報」メニューでは商標のタイプを指定して一括検索する機能もあるのですがなぜかそこからは検索できず、番号を逐一いれないと検索できません、まだデータベースの準備が整っていないのかもしれません)。なお、音の商標については、音源の提出がされるまでは出願公開されないようなので、出願番号や出願人は(出願人自身が公表しない限り)まだわかりません。

色彩のみの商標の例を見るとなるほどなあという大企業の有名な色の出願が多く見られます。代表例はプレスリリースを見ていただくとして、ここでは、色彩のみの商標の出願第一号をご紹介します。久光製薬による商願2015-29831、サロンパスのパッケージの色ですね。色味をまねた箱の便乗製品は結構ありそうなので、保護を求めるのは当然と言えます。

商願2015-29831商願2015-29831

商標出願第一号を狙って、代理人弁理士先生が残業して日付が切り替わってすぐに出願したのでしょうか。前述のとおり、音の商標についてはまだ出願公開されていないのでどの企業が出願しているかはわかりませんが、久光製薬が「♪ヒ・サ・ミ・ツ」のサウンドロゴを出願しているのは別報道で明らかなので、音の商標出願一番乗りも久光製薬になるのかもしれません。

これから数カ月経過後「新しいタイプの商標」の審査結果が順次出てくると思いますが、特に「色彩のみから成る商標」については使用による識別性があることが事実上の登録要件なので、特許庁がどの程度の著名性を閾値として審査するのかは興味があるところです。

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