Apple Watchのサードパーティ製バンドは許されるのか?

過去記事「Apple Watchの意匠登録とサードパーティの時計バンドについて」において、

ここで、特に問題となるのはバンドの本体との接続部分メカの部分意匠が登録されるかどうかです。もし、登録されてしまうと、Apple Watchに取り付け可能な機構を持つ時計バンドはどんなデザインであってもアップルの意匠権を侵害してしまう(少なくとも侵害だぞとアップルに警告される)可能性が生じます(あくまで可能性)。

と書いて、アップルが、サードパーティ製によるApple Watch互換時計バンドの製造・販売を排除する可能性について懸念を述べました。

そして、実際、接続部分メカ(Band Attachment)の部分意匠がつい最近の4月28日登録されました(US D727,787)。

D727,787D727,787

しかし、サードパーティ製バンドの排除については、私の心配のしすぎであったようです。アップルが、開発者向けにApple Watch互換時計バンド向けのガイドラインを公開したからです。

ガイドラインにはApple Watch本体との接続部分の寸法図面も含めて互換時計バンドを製造する際のさまざまな指針が書かれています。たとえば、心拍センサーとの互換性を維持するために「長さ調整のピッチは7ミリ以下とすべきである」等と書かれています。互換時計バンドを排除するどころか奨励しているように見えます。なお、このガイドラインに準拠したからといって、それだけで”Made for Apple Watch”の表示を付けてよいというわけではなく、それには別途アップルによる商標権の許諾が必要です。

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やはり、腕時計というファッション製品はアップルにとってやや「アウェイ」なので下手にクローズドに行くよりは、エコシステム重視という戦略を取ったものと思います。高級時計バンドメーカーによる互換バンドや中華製のお手頃なお値段のバンドの品揃えが増えるのは一消費者として喜ばしい限りです(既にeBayでは互換バンドが1000円台からあります)。

特に、Apple Watchは従来型の腕時計と異なり特殊な工具なしに容易にバンドの交換ができますのでバンドの品揃えは重要です。個人的にはApple Watchはちょっと様子見だったのですが、Apple Watch Sportを買って運動時は純正のスポーツバンド、仕事時はオーソドックスな革製バンドと取り替えて使うというやり方が俄然魅力的に見えてきました(もちろん、これは純正バンドだけでもできるのですが結構なお値段(特にステンレス)なので..)。

なお、アップルによるApple Watchの純正バンドの意匠登録は続々と登録・公開されています。以前紹介したモダンバックルに加えて、スポーツバンド(US D727,197)、ステンレス(US D727,198)も登録されました(レザーループやミラネーゼループもまもなく登録されるでしょう)。ということで、互換バンドOKとは言っても、当然ながらアップル純正品のデッドコピー品は禁止されることになるでしょう。

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I/O DATAのNASのリカバリとDRMについて

#今回はちょっと毛色の違うネタです。

家でDLNAサーバと通常のファイルサーバ兼用で使っているNAS(I/O DATA LANDISK HDL2-A)が突然読めなくなりました。パネルを見るとHDDのひとつがエラーになってます。RAID1で運用しているので本来なら片肺で動作するはずなのですが全くアクセスできません。

しょうがないので電源落とそうとしたらいつまでたってもシャットダウンが完了しません。1日置いといても終了しませんでした。最後の手段として電源ケーブルを抜き、問題のあるHDDを抜いて片肺で立ち上げようとしましたが、立ち上がりません。HDL2-AはブートシステムまでHDD上にあるので、RAID崩壊すると立ち上げすらできなくなります。DLNAのテレビ録画に加えて旅行の動画等の貴重なコンテンツが入っているのでちょっとあせりました。

ネットの情報から、HDL2-AのHDDはGPT形式パーティションでファイルシステムはxfsであることがわかりました。

生きている方のHDDを抜いてWindows PCにつないで見ましたが、パーティションが認識されません。ちなみに壊れた方のHDDをつなぐとドライブとして認識されたりされなかったりします。いわゆる「こわれかけのRAID」で中途半端なハードウェア障害により生きてる方のHDDまで論理破壊してしまったと思われます(ちなみに、HDDのモデルはSeagateのBarracudaです)。業者に頼むと結構なお値段なのはわかっているので、自前での復旧を試みました。

まずはパーティションを復旧しないとどうしようもないので、Parttion Magic、復旧天使等のソフトを使ってみましたが認識しません。しかし、testdiskというコマンドラインベースの無料ツールを使うことで、少なくともデータが入っているパーティションは復旧できました(なぜか、MBR形式のパーティションも認識されており、パーティションテーブルがめちゃくちゃになっていることがわかりました)。

PCをUbuntuで再立ち上げして、データの入ったパーティションをxfsでマウントして何とかファイルのサルベージはできました。実際にはもっと試行錯誤があり、3日つぶしてしまったので、充実した連休を過ごすことができました(笑)。

しかし、それでも、DLNAのDRMがかかっているコンテンツ(地デジ録画)は復旧できません。DLNA関連のフォルダーごとバックアップして、新しいHDDでRAID組んでそのままリストアすれば復旧できるのかもしれませんが、よくわかりません。DRMがかかってるとこういう時に困りますね。

最後の手段として生きてる方のHDDのロジックボードを死んだ方のHDDに移植してNAS上でブートできないか試してみる予定です。NASとして立ち上がれば専用ツールでDLNAのDRMがかかったコンテンツを他のデバイスにムーブ可能です(死んだ方のHDDのデータには損傷がないことを祈ります)。

エンタープライズの領域でもストレージ・コスト>サーバ・コストになるのは普通だと思いますが、家庭においてもデータ喪失時のダメージを考えると、業務用のハイエンドNASを入れてもよいのかなという気がしてきました。

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休眠特許をGoogleに売って一儲けしませんか(ただし米国特許に限る)

TechCrunchに「特許保有者がGoogleに特許を販売できるマーケットプレイスがローンチ予定」という記事が載っています(Googleの公式ブログにおける発表(英文)はこちら)。

マーケットプレイスというと恒常的なサービスのように思えますが、2015年5月8日から2015年5月22日までの期間限定でGoogleが特許の買い取りを行なうという実験的プログラムです(公式ページはこちら(現在は部分的にオープン、5月8日に全面オープンします))。

ところで、上記記事中には「特許トロールの問題」を解決すると書いてあったので、自社特許ポートフォリオを充実させても実業を行なっていないパテント・トロールに対する防御にはなり得ないのではと一瞬思ったのですが、休眠特許をGoogleが先んじて買い取ることで、パテント・トロールの手に渡るのを防ぐということですね。

重要なポイントですが、今回の買い取り対象は米国特許のみです。FAQによれば将来的には米国以外の特許も検討対象になる可能性はあるとのことです(ただ、言語の問題から欧州やカナダが優先で日本の特許は後回しになりそうな気もします)。

また、対価の受け取りには米国の納税者番号が必要です。これ自体は米国国税庁に手続きをすれば割とすぐもらえます(私もKindle出版の印税用に取得しています)。申し込みの段階で番号が必要なのか、それとも、対価受取りの段階で揃っていればよいのかはわかりません。

気になるのは、受付から支払い決定までの期間がかなり短いことです。5月8日から5月22日に申込み受け付け、6月26日に暫定回答、(Googleが購入意思を示した案件については)7月8日までに追加情報の提出、7月22日に支払となっています。

特許権の鑑定を入念に行なっている時間はないので、何らかの機械的な評価手法を使っているのだと思いますが、技術分野がGoogleの事業と関係しており、権利として有効に維持されており、無効審判等に係属しておらず、希望金額が法外でなければ買い取ってもらえる可能性は高いのではないかと思います。ただ、申込みの段階で希望金額をこちらから指定しなければならないのがちょっとやっかいです(その後に金額交渉ということはできません)。なお、通常、特許を買い取ってもらう時は権利行使可能性(特許と抵触する他社製品やサービスがあるか)が重要なポイントになりますが、それは申込時には不要なようです(最終段階で提出を求められるのかもしれません)。

申し込むだけなら無料ですし、Googleに買い取りを拒否されても特にダメージはありません。また、当然ながらGoogleが特許権を買い取った場合でも、申込者自身は特許発明の実施を継続することができます(Googleにライセンス料を請求されることはありません)。

ということで、売る側にとってのリスクは特にありませんので、米国で休眠特許を所有している方はGoogleへの売却を検討されてみてはいかがでしょうか?

今回のGoogleの試みがうまくいくかどうかはわかりませんが、こういう「アジャイル」な特許流通が一般化することは悪い話ではないと思います。

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音商標の公開公報が発行されました:一番乗りはあの会社のあの音

特許庁から「音商標の公開商標公報が発行されました」というプレスリリースが出ました。商標法改正により4月1日から音商標、色彩のみからなる商標、位置商標、動き商標、ホログラム商標といったいわゆる「新しいタイプの商標」が出願可能になり、音商標以外については既に早期の出願の公開公報が発行されていた(参考過去記事)のですが、音商標だけはCD-R(DVD-R)による音源の提出が必要なため、公開公報の発行が他より遅くなっていました。

過去記事では、色彩のみからなる商標の出願一番乗りだった久光製薬が音商標(「♪ヒ・サ・ミ・ツ」)も一番乗りするのではないかと書きましたが、現時点での一番乗りはこれも音商標として注目されていた大幸薬品の正露丸のCMにおけるラッパの音楽(参考過去記事)でした。とは言え、公開公報の発行順序は音源の提出の順番が影響するので、久光製薬が大幸薬品より先に出願している可能性は高いです。もしそうなら、出願一番乗りは大幸薬品が「暫定トップ」であり、結局、久光製薬になる可能性も十分にあります(トップになることに特に重要な意義があるわけではないですが)。

その他の主要な音商標の例がプレスリリースの別紙に乗っています。

上記の大幸薬品のラッパに加えて、GMOインターネットのサウンドロゴ(説明は「『ジーエムオー』という若干人の女性の掛け声からなる構成となっており、全体で1.5秒の長さである」となっています)、オリンパスのサウンドロゴ(正直、あまり印象がないです)、味の素のサウンドロゴ、サンヨー食品の「♪サッポロ一番」のサウンドロゴ、アコムの「♪はじめてのアコム」のサウンドロゴ、伊藤園の「おーいお茶」のかけ声等々が出願されています。(ところで、J-PlatPatの商標のタイプ指定による検索っていつ機能するようになるのでしょうか?)

今後どういう審査が行われるのか、特に、使用による識別性(セカンダリーミーニング)の判断が境界事例においてどのように行われるのかは興味があるところです。

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音商標の公開公報が発行されました:一番乗りはあの会社のあの音

特許庁から「音商標の公開商標公報が発行されました」というプレスリリースが出ました。商標法改正により4月1日から音商標、色彩のみからなる商標、位置商標、動き商標、ホログラム商標といったいわゆる「新しいタイプの商標」が出願可能になり、音商標以外については既に早期の出願の公開公報が発行されていた(参考過去記事)のですが、音商標だけはCD-R(DVD-R)による音源の提出が必要なため、公開公報の発行が他より遅くなっていました。

過去記事では、色彩のみからなる商標一番乗りだった久光製薬が音商標(「♪ヒ・サ・ミ・ツ」)も一番乗りするのではないかと書きましたが、現時点での一番乗りはこれも音商標として注目されていた大幸薬品の正露丸のCMにおけるラッパの音楽(参考過去記事)でした。とは言え、公開公報の発行順序は音源の提出の順番が影響するので、久光製薬が大幸薬品より先に出願している可能性は高いです。もしそうなら、出願一番乗りは大幸薬品が「暫定トップ」であり、結局、久光製薬になる可能性も十分にあります(トップになることに特に重要な意義があるわけではないですが)。

その他の主要な音商標の例がプレスリリースの別紙に乗っています。

上記の大幸薬品のラッパに加えて、GMOインターネットのサウンドロゴ(説明は「『ジーエムオー』という若干人の女性の掛け声からなる構成となっており、全体で1.5秒の長さである」となっています)、オリンパスのサウンドロゴ(正直、あまり印象がないです)、味の素のサウンドロゴ、サンヨー食品の「♪サッポロ一番」のサウンドロゴ、アコムの「♪はじめてのアコム」のサウンドロゴ、伊藤園の「おーいお茶」のかけ声等々が出願されています。(ところで、J-PlatPatの商標のタイプ指定による検索っていつ機能するようになるのでしょうか?)

今後どういう審査が行われるのか、特に、使用による識別性(セカンダリーミーニング)の判断が境界事例においてどのように行われるのかは興味があるところです。

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