知財デューデリジェンスというお仕事

ホンハイによるシャープの救済の件、土壇場でいろいろ揉めているようです。これだけ大型の案件であれば調査段階でいろいろ出てくるのはしょうがないと言えましょう。一般に、M&Aや投資の意思決定においては、買収対象や投資対象の企業に予期せぬリスクがないかどうかを判断するデューデリジェンス(適正評価手続)が不可欠です。

買収や投資対象の企業がテクノロジー系スタートアップである場合等には、特許を中心とした知財デューデリジェンスも必要になります。知財デューデリジェンスへの注目が昨今高まっているようです。

特許のデューデリジェンスが難しいのは、法律面、ビジネス面、テクノロジー面のすべてからの判断が必要である点です。

特許権がちゃんと管理されているか(年金が支払われているか)、ライセンス契約書に不備はないか、職務規程に職務発明の規定が盛り込まれているか等々、法律面での検討は当然に重要です。しかし、仮に特許権として有効であっても、補正の結果、権利範囲がものすごく狭くなっており他社に権利行使ができなくなっているようなケースですとか、技術環境の変化によって特許の内容が業界の本流ではなくなっているケースもあり得ます。こういった場合、その特許はビジネス上の差別化にまったく結びつかないことも考えられます。

当然、特許権を持っている企業は「わが社は主要事業分野においてxx件の基本特許を取得している」と話を”盛って”くることが多いので、それが本当に正しいかを検証することが重要です。また、事業分野で既に他社の強力な特許が成立していると、事業展開上大きな足かせになりますので、そういうことがないようFTO(Freedom to Operate)調査を行なうことも必要です(FTO調査はやり出すときりがないので結構大変です)。

弊所でも、最近、知財デューデリジェンスの案件が増えてます。最近ですと、ビッグデータ分析、機械学習、サイバーセキュリティ等の案件を実施しました。テクノロジーにおけるドメイン知識がないとできないので、何でもできるというわけではないのですが、最近であれば、上記に加えて、IoT、暗号通貨(ビットコイン系)等は受任できるかと思います。

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【実務者向け】商標登録料値下げ直前の支払タイミングについて

本年(2016年)4月1日より特許関係の諸料金が値下げになるのは周知だと思います。

特に費用全体の中で登録料が占める割合が大きい、商標登録料については区分あたり37,600円が28,400円になるので結構大きいですね。

さて、特許庁サイトにも書いてあるように、査定送達の日から30日目が施行日をまたぐ場合には、新登録料の適用は、登録査定送達の日ではなく、登録料納付の日により決まります。つまり、3月中に登録査定を受領して、あわてて登録料を納付してしまうと、値下げ前の旧料金で払うことになってしまいます。

クライアントが一刻も早く登録したいと希望するのでもない限り、4月を待ってから納付した方がよいと思います。

なお、商標登録料の納付は登録査定後30日を過ぎても、特許庁の運用上は問題なく受け付けてくれますが、だからといって2月に登録査定を受けて4月に登録料を払っても新料金は適用されません(まあこれは当然です)。ただし、所定の料金(2,100円)を払って30日間延長した期日が4月1日以降になっていれば新料金で支払うことが可能です。商標の場合は、延長料金払ってでも新料金で払った方が得です。

さらに言えば、登録料納付の起算日は登録査定を受領した日なので、2月の下旬くらいは敢えてインターネット出願ソフトの送付書類を受け取らなず、3月になってから受け取ることでうまく値下げ後の料金でで支払えるケースもあったのかもかもしれません(弊所の場合はどちらにしろそのようなケースはなかったですが)。弊所の場合は3月2日に登録査定がまとまって来ましたが、ひょっとすると審査官の方が気を利かせて新料金が使えるタイミングで査定を出してくれたのかもしれませんが、偶然かもしれません。

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【実務者向け】特許証の記載ミスについて

日本の場合(中国等とは異なり)特許証や商標登録証は権利行使には必要ないため、出願人の名前くらいしか確認せず、スキャンだけして、出願人に転送していました。しかし、先日、出願人が在外者であったため、サービスとして特許証の翻訳をしていたところ、米国の出願人であるにもかかわらず国籍がウルグアイ東共和国となっているのに気づきました。

何か手続上のミスがあったか(「こちらで国籍を入力することなんてないしなー」「ウルグアイっていったいどこから出てきたんだ?」)とあせって、特許庁に連絡したところ、結局、識別番号付与の時にUSをUYと入力し間違えた特許庁のミスであることがわかりました(要はずっと間違えてたわけですが出願人の国籍情報が表に出るのは特許証くらいなので気がつかなかったわけです)。特許証を再送してもらうことになりました(ちょっと時間がかかります)。間違えた方の特許証は破棄すればよいそうです。当然ながら原簿も直してもらえます。

こういうこともあるので、特許証や商標登録証の内容はちゃんと確認しておいた方がよいと思いました(特許証が間違っているということは原簿も間違っている可能性が高いということですから)。

なお、特許証や商標登録証は権利行使には不要ですが、米国やカナダなどの使用主義の国に商標登録出願を行なう際に本国での登録を証明するとき、また、外国で商標の異議申立をするときに冒認出願者の不正の意図を証明するための証拠等として必要なことがありますので、代理人側でもスキャンコピーを取って管理しておいた方がよいと思います。

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【実務者向け】識別番号の割り当てについて

別の弁理士に頼んで特許出願を行なったことがあるクライアントが商標出願を弊所に依頼してきました。識別番号が割り振られているはずなのですが、担当者が変わってその番号はわからないと言います(特許出願の公開公報は出ていません、公開前に拒絶が確定したのかもしれません)。

識別番号が割り当てられている出願人が識別番号なしで出願すると、特許庁側で既に識別番号が割り当て済かどうかをチェックして識別番号付きに変えてくれるのは知っていましたが、特許と商標でまたがってチェックしてくれるかどうか気になったので、念のため特許庁に確認してみたところ、チェックしてくれるそうです(まあ当然ですが)。

もちろん、特許庁に識別番号を問い合わせることも可能です。FAXでしか教えてくれないこともありましたが、出願書類が手元にあるのであれば、出願番号と整理番号を言えば、それにより本人(代理人)確認として電話で教えてくれるようです。

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【実務者向け】米国商標審査における審査官補正

改めて説明するまでもなく、マドプロは、指定国特許庁での審査で何も問題なく登録されれば楽ちんなのですが、万一、暫定拒絶となった場合には、その国で代理人を任命して中間処理を行なわないといけないのでちょっと面倒ですし、お金もかかります。

実体的な審査に関する事項であればまだしも軽微な形式上の問題を補正するためだけに、現地代理人を使うのは不合理だなと思っていました。日本国内であれば、句読点のミスのような明らかな間違いであれば審査官が職権で補正してくれます(一応電話で確認が来ることが多いです)。

特に、米国を指定して、ロゴ商標を出願した場合、description of the markを追加せよという暫定拒絶が出ることが多いです。マドプロの出願書類(MM2)にはこれを書く欄がないので、どうすればいいんだよという感じです。

しかし、先日、USPTOからの軽微な補正を求める暫定拒絶にTelephone Response Suggestedという記載を発見しました(このパターンは初めてです)。審査官の提案通りに補正してよい旨を電話またはメールで非公式に連絡してくれれば、職権で補正すると書いてあります。

これは、USPTOの商標審査便覧(TEMP)の707に規定されている審査官補正(Examiner’s Amendment)というものです。審査官補正を出すかどうかは審査官の裁量のようです。

日本の弁理士はUSPTOへの代理人になれませんので、出願人にお願いして、審査官宛に承認のメールを打ってもらいました。出願人が法人の場合は代表者がメールする必要があるので、大企業の場合は難しいかもしれません(日本の弁理士がメールした場合、却下されるのか大目に見てもらえるのかはわかりません)。

3週間ほど時間がかかったのでちょっとあせりましたが、無事、審査官補正が反映されて、現地代理人を使うことなく登録まで導くことができました。各国特許庁からの通知のテンプレぽい部分もちゃんと最初から最後まで読むべきだなあとも思いました。

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