【実務者向け】Windowsによる簡単な日付計算法

言うまでもなく、弁理士の仕事は日付の計算をすることが多いです(たとえ、1日でも貴期日を間違えると大変なことになってしまいます)。特許事務用のソフトウェアを使っていれば日付計算の機能は入っていますが、そうでなくてもWindowsの標準機能だけで日付計算できるのをご存じでしょうか?

「電卓」アプリで「表示」メニューから「日付の計算」を選択するだけです。ちなみに「単位の変換」を選ぶといろいろな単位間の変換(摂氏⇔華氏等)ができて便利です。

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もちろん、祝日は考慮に入りませんが、仮に、祝日を無視しても早い方に間違えるだけなので期日管理としては問題は少ないでしょう。

また、前にも書きましたが、Outlookで日付を入力する時に、日付欄にたとえば30dと入力するとその日から30日後の日付に変換してくれるので便利です。

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【実務者向け】中国に特許出願する際の言語について

中国に特許出願する際には、当然ながら、中国語で明細書を作成する必要があります。日本や米国等と異なり、翻訳文の後出しはできませんので、優先権等の期日がある場合には翻訳期間を見込んで余裕を持って進める必要があります。

日本語の明細書を中国語の明細書に翻訳する場合には、日中翻訳する方法に加えて、日英翻訳してから英中翻訳する方法があります。英語と中国語は文法的に近いので正確な翻訳が期待できます(もちろん、こちらで日英翻訳の品質を確認できるという前提です)。また、日中翻訳者よりも、英中翻訳者の方が数が多いので、料金や納期的にも有利なようです。

さらに、中間処理で、中国語明細書に補正が入った時でも、現地代理人に「英語で言えばこういう風に直した」と教えてもらえれば、元の明細書との対応付けがしやすいです(中国代理人が日本語を知ってる、あるいは、こちらが中国語を知ってる場合は別ですが、英語が共通言語というケースが多いです)。

中国語翻訳文しか必要ない場合に、わざわざ日英翻訳→英中翻訳のステップを踏むのは無駄ですが、どちらにしろ米国出願等で英語翻訳文が必要な場合には、スケジュールを調整して先に日英翻訳をすませてから英中翻訳を行なうのが好ましいと思います。

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「おじいちゃんのノート」の特許を分析する

#本記事はYahoo!ニュース個人の再掲です。

“おじいちゃんのノート”に大反響 孫がツイッターで拡散→在庫の山に注文殺到 奇跡を生んだ数々の偶然」というニュースがありました。

東京都北区の小さな印刷所が手作りしている「方眼ノート」。元日に、ある女子専門学校生がツイッターでつぶやいたことで、注文が殺到しています。「うちのおじいちゃんのノート、費用がないから宣伝できないみたい。Twitterの力を借りる」。特許をとって製品化したものの数千冊の在庫を抱えていたノートに、一気に注文が入り始めました。

ということだそうです。いい話ですね。

このノート、見開きした時に完全にフラットになるのが特徴です。書きやすい、見開きでコピー取る時に綴じ部(いわゆる「ノド」)がきれいにコピーできる等の利点もありますが、特に方眼ノートの場合には見開き左右2ページを完全に連続した一枚の方眼紙として使えることでさらに利点が増します。方眼ノートを普段使っている人にとっては大変便利なのでしょう。

このノートは特許化されているということだったので調べてみました。「特許」と言われているのに、実は出願しているだけだったり、「実用新案」だったりというケースがたまにありますが、このノートはちゃんと特許化されています。有限会社中村印刷所を出願人とする特許5743362号「無線綴じ冊子の製本方法」です。

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発明のポイントは粘度の異なる2種の接着剤を使うことにあります(上図の5と6、6の方が粘度が高い)。こうすることでページの脱落を防ぎながら優れた見開き性を実現できるというわけです。明細書には接着剤の種類や塗布量についても記載されており、いろいろと実験を重ねたことがうかがわれます。弁理士を代理人にしたちゃんとした明細書になっており、当然ながら中間処理もしっかりやっています。「おじいちゃんのノート」ということで最初は素人の単なる思い付きぽいイメージを持っていましたが、実はめちゃくちゃプロフェッショナルな仕事でした(どうもすみません)。

中村印刷所はこれ以外にももう1件特許(特許第4891798号「オフセット印刷の製版用版下紙フィルム及びその製造方法」)を取得しています。こちらも弁理士を代理人にしてちゃんとした明細書作成と中間処理をやっています。

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2016年のごあいさつとYahoo!個人のアクセストップ10のご紹介

昨年はお世話になりました。今年度も弁理士とITアナリストを両輪にがんばっていきたいと思います(翻訳もちょっとだけやっています)。情報発信はアクセス数が稼ぎやすい知財系が中心になってしまいますが、IT系の仕事も継続しています。今年は、FinTech、C2C、機械学習、ストレージ等を中心に見ていきたいと思います。

さて、ブログによる情報発信ですが、このブログは弁理士の業務関係やIT系の細かい話にフォーカスして、一般向けの記事はYahoo!ニュース個人を中心にしていこうと思います。たまに、Yahoo!ニュース個人の記事を本ブログに転載することもあります。

新春企画としてYahoo!ニュース個人の方に昨年度の自分のアクセス数トップ10に関する記事を書いていますので、ご興味ある方は是非ご覧下さい。

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Airbnbだって特許出願しています

ウーバーやAirbnbなどのシェアリングエコノミー系(C2C系)の新興企業は特許とは縁がないと思われるかもしれません。特許は発明という技術的アイデアを保護するためのものであり、人為的な取り決めは対象外であるからです。

しかし、現実に、シェアリングエコノミー系の企業を運営するためにはインターネット関連の技術を使用せざるを得ません。そこで技術的に独自の創意工夫があるならば特許化できる可能性があります(もちろん、単にウェブで情報交換しているだけという当たり前の使用法であれば進歩性の欠如により特許化はできません)。

たとえば、ウーバー子会社のUber Technologies, Incは積極的に米国で特許出願をしており、そのいくつかは既に権利化されています。主に、カーナビゲーション関連の技術です。個人ドライバーと利用者をウェブで直接仲介するというビジネスモデルそのものの模倣を防ぐことはできませんが、仮に他社が同じビジネスモデルで競合してきたときも、ウーバーが提供するカーナビ機能は他社と比べて効率的(ドライバーはより多く稼げる)という評価をドライバーに得られれば大きな差別化要素にできるでしょう。

一般に、シェアリングエコノミー系ビジネスはアイデア一発のようなところがありますので、ビジネスモデルは容易に模倣されてしまいます。したがって、企業は、先行者利益、スケールメリット、ブランドイメージ等で勝負していかなければなりませんが、特許による技術独占はこれを後押しできます。

個人間の宿泊施設紹介サイトであるAirbnbも米国で特許出願しており、1件が既に公開されています。ウーバーの特許は後日解説することにして、この特許について簡単に分析してみましょう。出願番号はUS13802025、出願日は2013年3月13日、発明の名称は”Automated determination of booking availability for user sourced accommodations”(クラウドソーシング宿泊施設の空き状況の自動的決定)です。

発明のポイントは検索された宿泊施設の表示ランクにおいて、予測モデルで算出した部屋の空き状況を加味する店にあります。通常のホテルサイトですと、空室状況はホテル側が厳格に管理していますが、Airbnbの場合は貸す側も素人ですので更新が適当でウェブ上は空室ありになっていても、実際問い合わせると既に埋まっていたという可能性があります。こういう状況を最小化するための技術です。
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現時点での審査状況を見ると拒絶理由通知に対応中であり特許化される可能性はあります。この機能が絶対必要かというとそうでもないですが、ユーザーの利便性向上、すなわち、Airbnbの差別化には貢献するでしょう。

一般的に言って、テクノロジー中心型ではないビジネスモデルのスタートアップ企業も、絶対特許出願せよとまではいいませんが、少なくとも特許出願の可能性を検討だけはしてみるべきでしょう。

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