【小ネタ】ドクター中松の「ウデンワ」特許について

まさかの3連続でドクター中松間連小ネタです。

前回のドクター中松名義の登録商標の中の「ウデンワ」ですが、聞き覚えがあると思ったら、2003年のITmediaの記事で紹介されていた「発明」でした(参照記事:「ドクター中松、第4世代携帯電話を発明!?」)。要は腕に携帯を取り付ける器具の「発明」です。楽天でも販売中です。(というか、楽天内にドクター中松ショップがあったんですね)

携帯を手から一番遠いところに置くことで心臓への電磁波の影響を防ぐ(ペースメーカー使ってない人でも意味があるんでしょうか?)、携帯の紛失を防ぐ、バッグがなくても携帯が邪魔にならないなどの特徴があるようです。

なお、スマートフォン版の「スマ手」もあるようです(こちらも、まだ登録はされていませんが、商標登録出願済みです)。

さて、この「ウデンワ」ですが、商標登録だけではなくて、特許も成立しています(第3227362号)。発明の名称は「腕電話」です。

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(特許公報中の画像を引用)

元々は、「手甲に載せ手首に固定し得、且つ人体の熱が伝わる事を特徴とする電話」というクレームで、「人の体温でバッテリーを充電したり、バッテリーの持ちを良くする」などの効果も主張されていたようですが、最終的には、「左手(右手)を右方向(左方向)に曲げて右頬(左頬)に近づけた時に、送話口を口に近く、受話口が耳に近い位置とし、左右の手を使わずに迅速に通話が出来るように本体が少なくとも手首に固定され、且つ前記本体は手首部分から手甲方向に及んでおり、手首は自由に屈曲でき、前記手を顔に近づけると本体の送話口に近く、受話口が耳の近くにある事を特徴とする腕電話」というそのまんまのクレームになっています。

この特許、一度拒絶査定になってから不服審判が請求された結果成立しており、中松氏も苦労して成立させたようです。

しかし、それにもかかわらず、この特許は4年目の特許料が支払われていないために権利抹消されています。登録時に1年目から3年目の特許料支払いをするので、要は、最初の支払いをしなかったことになります。4年目の特許料は2万円くらいなのでさすがにお金がなくてというのではなくて、単に忘れてただけでしょう(今は自動振替ができるのですが、昔は自分で管理するしかなく、特許庁から支払時期の連絡等も来ませんので、代理人がいない場合は支払いを忘れることもあったと思います)。

さらに、ドクター中松氏の他の特許についても調べてみましたが、なんとそのほとんどが特許料未納により権利抹消になっています。何年か支払った後に未納になったのもあれば、「腕電話」のようにいきなり1回目から未納のものもあります。まあ、特許権が不要になったのであえて放棄するまでもなく、特許料を支払わないでおくというパターンはよくあるのですが、数が多すぎるのではと思います。

特許権が取れればそこで発明家としての目標達成で権利存続には興味がないのか、単に忘れっぽいのかのいずれかだと思いますが、もし後者だとするならば、特許料の納付を忘れない発明をすればいいんじゃないかと思います。

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【小ネタ】ドクター中松氏の華麗なる商標権ポートフォリオについて

特許電子図書館(IPDL)で「中松義郎」氏が権利者あるいは出願人になっている商標登録(出願)を検索してみました。

1.登録2129938テレビがおいしい
2.登録2355769【図有】
3.登録2355782メ∞においしい
4.登録2373516メ∞においしい
5.登録2378161あたまにおいしい
6.登録2383680§メ においしい
7.登録2405841頭の良くなる
8.登録2405958風呂不老\フロフロ-\FLO-FLW
9.登録2423427頭 においしい!
10.登録2430382ENEREX
11.登録2459663新・民主党
12.登録2488348Dr.中松
13.登録2684665からだにおいしい
14.登録2701319からだにおいしい
15.登録3302082ドクター中松\Dr.NaKaMats
16.登録3334694ホレモン\HOREMON
17.登録4033263ミュジアム
18.登録4093847DR NAKAMATS
19.登録4110188ブレン ドリンク\BRAIN DRINK
20.登録4111435WAO\ワオ
21.登録4115779ウデンワ
22.登録4133849美人を発明する
23.登録4299557Cerebrex\セレブレツクス
24.登録4303383ReBody
25.登録4314889ムカンホ
26.登録4339555フロフロー\風呂不老\FLOFLOW
27.登録4495856JUMPING JAX\ジャンピングジャックス
28.登録4609655Stayung\ステイ ヤング
29.登録4624346Young Again
30.登録4671796ラブジエット
31.登録4737781§増加 け\まかしと毛
32.登録4962061き じゅ し\喜寿司
33.登録4994136ReBody∞活脳長寿\リボデイ∞55
34.登録4997536ザ・カサ\座
35.登録4997537デカ\ヅラ刑事
36.登録5023766ReBody\リボディ
37.登録5046027はげ\ません\べい
38.登録5054157ヒト\人メディア
39.登録5075305§Talent∞Olympic
40.登録5222943美バスト\VIVAST
41.登録5277120知本主義
42.登録5277139しあわ\幸せんべい
43.登録5491506ステイヤング\STAYOUNG
44.登録5494693ECON
45.登録5503113東京都維新の会
46.登録5503114平成維新の会
47.商願2011-090946日本維新の会
48.商願2011-090947東京維新の会
49.商願2012-032488フロフロー\風呂不老\FRO‐FLOW
50.商願2012-045613HAND SMART PHONE\SMARTE\スマ手

様々な「アイデア商品」の名称についてはよいとして、「東京都維新の会」や「平成維新の会」が登録されてしまっているのが気になります(特に、「平成維新の会」は大前研一氏による実在の団体名だと思うのですが)。「新・民主党」が登録されてしまっているのもちょっと気になるところです。

「日本維新の会」がNGで「平成維新の会」がOKな理由が解せないですが、審査官により判断が違うのはよくある話です。また、いったん登録になっても後から利害関係人(典型的には「大阪維新の会」)から物言いが付けば無効にされてしまう可能性はあります。

なお、IPDLは登録済み、および、審査中の商標しか検索できず、出願したが拒絶されてしまったものについてはデータベースから早晩削除されてしまいます。中松氏の場合、どちらかというと拒絶されてしまったものの方を見たいのですが、そのためには、調査会社が提供する有料の商標データベースサービスを使わないといけないので、これまた迷っています(笑)。

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【小ネタ】ドクター中松が「日本維新の会」を商標登録出願したが拒絶された件

facebookで知りましたがあのドクター中松(中松義郎)氏が昨年の12月16日に「日本維新の会」を商標登録出願したようです(2ちゃんねるでもスレ「【政治?】「日本維新の会」の名称が中松義郎氏によって商標登録されていた」が立ちましたが、スレタイの「商標登録されていた」は「商標登録出願されていた」の間違いです。登録はされていません。)

そして、特許電子図書館の経過情報で検索すると8月16日付けで拒絶査定になっています。不服申立をしている可能性があるので確定ではないですが、たぶん拒絶が確定するでしょう。拒絶の理由はネット情報だけでは詳細にはわからないので推定になりますが、おそらく「大阪維新の会」との誤認混同を招くということだと思います(商標法4条1項15号)。昨年末時点でも「大阪維新の会」は全国的に知られてましたのでまあうなずけるかと思います。料金(600円)を払って審査資料を閲覧すると本当の拒絶理由、さらに、それに対する中松氏の反論(意見書)も読めるので、今、閲覧請求するかどうか迷ってます(笑)。

一般的に他人の功績や名声にフリーライドするような商標登録出願をしてもほぼ確実に拒絶されます(万一登録されても後で無効にされてしまいます)ので、他人に買い取ってもらうことを前提に関係ない人が商標登録出願するのは出願料金の無駄になるだけです(ドクター中松氏には商標権の買取以外にももっと崇高な目的があったのかもしれませんが)。

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違法ダウンロード刑事罰化に関するまとめ(その2)

#できるだけ簡潔にまとめようと思ったのですがやはり長くなってしまいました。お急ぎの方は下の「まとめのまとめ」を先に見てください。

本当に直前になってしまいましたが、前回に引き続き、いよいよ10/1から施行の著作権法改正の最重要ポイントとなる違法ダウンロード刑事罰化に関して実際の条文を見て検討していくことにしましょう(なお、他の改正事項、特にDVDリッピング違法化については後日書きます)。

違法ダウンロード刑事罰化に直接関係する著作権法の条文は今回新設された119条第3項です。

第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

いきなり読んでもわかりにくいので構成要素に分解して見ていきましょう。法律の条文の多くは要件→効果、つまり、条件Aを満足するとBという効果になるというIF〜THEN文のような構造になっています。

先に、THEN節にあたる効果の方を見ていきましょう。119条3項で効果にあたるのは「2年以下の懲役 and/or 200万円以下の罰金」です。これは、通常の著作権侵害罪(10年以下の懲役 and/or 1000万円以下の罰金)よりもちょっと軽くなってます(とは言っても、一般市民にとっては警察に逮捕されること自身が社会的に大ダメージなので刑罰の重さはあんまり関係ないですよね)。

次に、ややこしいですが、要件(条件)の方をひとつひとつ見ていきましょう。

1. 第30条第1項に定める私的使用の目的をもって
そもそも私的使用目的でなければ(たとえば、他人に公開するためにダウンロードした場合など)は、普通の著作権侵害(刑事罰が重い方)として扱われます(ダウンロード違法化・刑事罰化を議論するまでもなく元から違法・刑事罰の対象)ので、この条文で扱うのは私的使用目的ダウンロードに限定すると言っています。

2. 有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)
ここはカッコ書きで「有償著作物等」の定義をしていますので先に説明しておきます。

2-a. 録音され、又は録画された著作物又は実演等
対象は音又は映像コンテンツに限られることを言ってます。プログラムの著作物や文書の著作物、マンガなどは対象外です。

2-b.(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)
パブリックドメインのものは対象にしないことを言っています。「有償」という縛りが入っているのでわざわざ言うまでもないと思うのですが、著作権切れの格安DVDなどパブリックドメインだけど有償というケースはないことはないので、それはダウンロード違法化の対象外になることを明記しています。

2-c. 有償で公衆に提供され、又は提示されているもの
普通に店で売っているCDやDVDのコンテンツが対象になることは明らかですが。結構グレーゾーンがありそうな要件です。文化庁Q&A(PDF)のQ6では、「ドラマ等のテレビ番組については、DVD として販売されていたり、オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されていたりする作品の場合は、有償著作物等に当たりますが、単にテレビで放送されただけで、有償で提供・提示されていない番組は、有償著作物等には当たりません」と言っていますが、現実には判断は難しいでしょう。

2-d.(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)有償で売っている著作物であってもそもそも売ること自体が著作権を侵害している場合、要するに、海賊版(市販CDのそのままコピーしたものという意味ではなくて、たとえば、未発表ライブ音源を勝手にCD化したブートレッグ盤という意味です)の場合には対象外というということだと思います。もちろん、ブート盤を作ったこと自体は別途著作権侵害に問われます。

3. (有償著作物等の)著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信
言うまでもなく、アップロード行為が権利侵害行為であることがダウンロード行為が刑事罰の対象となる前提です。私信メールでの送信は自動公衆送信ではないのでこの条文の対象外であるのは前回書いたとおりです。

4. 自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)
前記の「自動公衆送信」はサーバが海外にあった場合でも刑事罰の対象にすると言っています。サーバが海外にあるとアップロード者を捜査しようと思っても実際には難しいわけですが、その場合に国内のダウンロード者だけを捜査できるよということです(まさに、これが刑事罰化の目的のひとつだと思っています)。

5.デジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて
「その事実を知りながら」つまり「違法にアップされたことを知りながら」ということです。これを実際どう判断するかは難しいところです。少なくとも警告があっても無視してダウンロードを続けていれば「その事実を知りながら」ということになるでしょう。文化庁Q&Aでは「警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮するとともに、関係者である権利者団体は、仮に告訴を行うのであれば、事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられます」と他人事のような書き方をしています。ただし、現実には違法アップロードの場合等で警告なしにいきなり警察が家宅捜索に来て逮捕みたいなケースもあるようです。

6.著作権又は著作隣接権を侵害した
権利者が許諾したような場合は対象外にするということだと思います(市販CDやDVDの場合には現実的にあり得ないと思いますが)。

これに加えて、一昨年の改正(ダウンロード違法化)に関する30条1項3号

著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

も含めて、ダウンロード行為が刑事罰対象、違法だけど刑事罰対象でない、合法と分かれることになります。ややこしいですね。

まとめのまとめ

条件をできるだけ簡略化してまとめると以下のようになります。

違法アップデジタル方式の録音・録画有償著作物事実を知りながら
刑事罰対象

違法(刑事罰なし)

具体的なパターンで見ていきましょう。

  • 市販のCDやDVDのコンテンツが違法にアップされたサイトからそれを知ってダウンロードする行為 → 刑事罰対象です(まさに今回の改正がメインターゲットにしている行為だと思われます)
  • 市販のCDやDVDのコンテンツが違法にアップされた海外サイトからそれを知ってダウンロードする行為 → 刑事罰対象です(サーバが海外でも同上です)
  • TV番組が違法にアップされたサイト(海外含む)からそれを知ってダウンロードする行為 → 違法ですが有償著作物ではないので刑事罰対象ではありません(ただし、そのTV番組がDVD化されている時には刑事罰の対象になります)
  • マンガや書籍スキャンが違法にアップされたサイト(海外含む)からそれを知ってダウンロードする行為 → 録音・録画ではないので違法ではありません(倫理的な問題は別)
  • YouTubeに権利者がアップした公式PVをツールを使ってダウンロードする行為 → 違法にアップされたコンテンツではないので違法ではありません(ただし、YouTubeの利用規約違反です)

なお、念のために書いておくと、上記はあくまで私的使用を前提にした話なので、ダウンロードしたコンテンツを他人に提供したりすると(DL違法化とは関係なしに)著作権侵害(故意ならば刑事罰対象)となります。

他にもどう扱われるのか知りたいパターンがありましたら、コメント欄に書いていただければ可能な限りお答えしたいと思います。

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違法ダウンロード刑事罰化に関するまとめ(その1)

10/1から施行される著作権法改正については本ブログでも書いてきました。繰り返しになる部分もありますが、施行直前ということでもう一度まとめておこうと思います。

まずは、ネット上でよくみられる誤解についてまとめておきます。

誤解1:今回の改正によりDVDのリップ行為に刑事罰が課されるようになった。
今回の改正で今まで合法だったDVDのリップ行為(CSSを解除してのコピー)が違法になりましたが、刑事罰はありません。(ブログ等で「手持ちDVDを全部iPadにリップして便利便利」なんて書くといろいろ言われるかもしれませんが)。なお、改正前に既にリップしていたファイルに対して遡って責任を追及されることはありません。

また、DVDリッピング・ソフトの販売やネット上での提供は著作権法ではなく不正競争防止法により前から刑事罰の対象になっています(既に逮捕者も出ています)。

誤解2: 今回の改正によりYouTubeの動画を見ると刑事罰の対象になる。
原則として、著作権法は著作物を見たり、聴いたりする行為を直接制限することはありません。ゆえに、視聴行為が違法になったり刑事罰の対象になることはありません。この辺は、文化庁のQ&A(PDF)においても、明確に書かれています(下線は栗原による強調)。

Q4.違法に配信されている音楽や映像を視聴するだけで違法となるのでしょうか?
違法に配信されている音楽や映像を見たり聞いたりするだけでは、録音又は録画が伴いませんので、違法ではなく、刑罰の対象とはなりません(以下略)

Q5.「You Tube」などの動画投稿サイトの閲覧についても、その際にキャッシュが作成されるため、違法になるのですか。
違法ではなく、刑罰の対象とはなりません。
動画投稿サイトにおいては、データをダウンロードしながら再生するという仕組みのものがあり、この場合、動画の閲覧に際して、複製(録音又は録画)が伴うことになります。しかしながら、このような複製(キャッシュ)に関しては、第47条の8(電子計算機における著作物利用に伴う複製)の規定が適用されることにより著作権侵害には該当せず、「著作権又は著作隣接権を侵害した」という要件を満たしません。

なお、ツールを使ったり、キャッシュ・フォルダーからコピーしたりして、YouTube等の動画をダウンロードしてオフラインでも見れるようにするとその時点で(単なる視聴ではなく)ダウンロードしたことになりますので、条件次第では刑事罰の対象になり得ます。

とは言え、ユーザーがダウンロードしてるのか通常の視聴をしているのかは外からはわかりませんので、警察が「わるいやつをこらしめる」ために文化庁とは違う「独自の解釈」でダウンロード刑事罰化を方便として使う可能性が排除できないとは言えます。

誤解3: 今回の改正によりレンタルCDからのリップが刑事罰の対象になる。
これも前に書きましたが、レンタルCDからのリップ(というよりも、自分で聴くことを目的に自分でCDをコピーする行為全般)はCCCDをコピープロテクト解除してコピーするパターンでない限り合法です。これは今回の改正でも変わりません。ただし、一部のネットレンタルでは利用規約で複製禁止になっているものがあるようなので、この場合にはレンタル事業者との間の契約違反にはなるでしょう。

誤解4: 今回の改正により同人活動が制限されることになる。
これは、現在の著作権法の重要論点ではありますが、今回の改正とは関係なくて、ACTAやTPPなどの条例関係で議論されている「著作権侵害の非親告罪化」に関連するものです。現在の著作権侵害罪は親告罪なので、権利者が告訴しないと起訴されることはありません。また、運用上の話ですが、通常は権利者が被害届を出さないと警察は動きません。

これが非親告罪化されると、第三者(「告発厨」)が告発したり、警察機関が独自に捜査して起訴まで持って行くことが可能になってしまいます。現在の同人活動の多くは権利者の黙認の上に成り立っているわけですが、著作権法の非親告罪化により、このバランスが崩される可能性がでてきます。この辺の議論は福井健策先生の最新著作『ネットの自由vs著作権』で大変わかりやすく解説されていますので、興味ある方はご一読をおすすめします。

誤解5:コンテンツファイルをメール添付で送信すると違法にならないのでこの改正はザル法である。
これは、前述の文化庁のQ&AのQ6が最初言葉足らずだったことによる誤解と思われます。ダウンロードに関する規制は自動公衆送信された著作物だけが対象なので私信であるメールには関係ありません。しかし、メールの受け手は(私的使用目的である限り)違法ではないのですが、送信側のメールを添付する行為が複製権の侵害になり得ます。つまり、昔と同様に、アップ側は違法(刑事罰対象)、受け手側は(私的使用であれば)合法というのと同じです。文化庁Q&AのQ6が7月24付けで追記(以下の下線部分)されています(元々のQ6を見たときに「誤解する人が出そうなので直してもらうよう文化庁にコメント送ろうかな」と思ったのですがそうするまでもなく直りましたね。)

Q6. 友人から送信されたメールに添付されていた違法複製の音楽や映像ファイルをダウンロードしたのですが、刑罰の対象になるのでしょうか。
違法ではなく、刑罰の対象とはなりません。
違法ダウンロードでいう「ダウンロード」は、著作権又は著作隣接権を侵害する「自動公衆送信」を受信して行うダウンロードが対象となります。著作権法上、「自動公衆送信」とは、公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として送信を行うこと)のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うものをいい、友人が送信したメールはこれに該当しません。(ただし、音楽や映像をメールに添付して送信する場合、送信者が、「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」を超えてメールを送ると、音楽や映像のメールへの添付は原則として違法となります。)

次回(明日)は改正の条文(119条3項)について分析します。

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