【OOW09便り】OOWでエリソンが語らなかったこと

ラリーエリソンの基調講演により、Oracle Open Worldが終了しました(イベントはもう1日残っていますがメディアの取材日は終わりました)。OOWでエリソンが何を語ったかについては、他の多くのメディアの人が書くと思いますので、私は「何を語らなかったか」について書こうと思います。

「語らなかった」ことの中で最大のトピックはやはりクラウドでしょう。今回のOOWでは、あたかもクラウドがNGワードになっているかのようでした。あるセッションでCLOUDというスライドが出てきましたが、講演者が「これはOracleの検閲通ってるから大丈夫だよ」とジョークを言ったほどです。そして、そのスライドの内容もプライベート・クラウドに関するものでした。

もちろん、OracleはCRM on DemandなどのSaaSビジネスもやっていますし、Amazon EC2のインスタンスでOrcale DBMSをサポートする等、テクノロジー的にもクラウドをサポートしています。しかし、ビジネス戦略としてはかたくなにクラウドを拒否しているように見えます。

この理由は明らかで、クラウドビジネスに乗り出すことが、Oracleの既存ビジネスモデルに与える影響を無視できないということです。言うまでもなくOracleは企業に対してソフトウェアを販売し、ライセンス料金と保守料金で収益を上げる会社です(これから先はハードウェアも収益になってきますが)。顧客の維持さえできれば最も高利益率のビジネスモデルのひとつです。オラクル的にはこのビジネスモデルをしばらく守りたい、そして、十分に守っていけると思っているということでしょう。

では、同じようなビジネスモデルのマイクロソフトがなぜAzureに乗り出したかですが、これは、同社がソフトウェアライセンス料金中心型のビジネスモデルにそろそろ限界が来たと感じたからでしょう。実際、デスクトップOSやOfficeスイートに依存して成長していくのはますます困難になっていくと思います。このような過去にとらわれない切り替えの速さはマイクロソフトならではと思います。

もちろん、オラクルもいずれはクラウドに大々的に乗り出す可能性は十分にあります(エリソンがクラウドのモデルをまったく評価していないのであればSalesforce.comに投資するわけはありません)。実際、Fusion Applicationはセルフサービスの管理機能を提供することでSaaS-readyであることを売りのひとつにしています。来年か再来年のOOWでは、Oracleが大々的にクラウド戦略を打ち出してもまったく驚くことはないでしょう。

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【OOW09便り】展示ブース小ネタ集

Oracle Open Worldの展示会で見た中で興味深いものをいくつか挙げてみます。

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スタートレックのエンタープライズ号風のBestITというコンサルティング/ホスティング会社のブース。社員がやって(やらされて)いるのでしょうか、どことなく照れが見られます。

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Salesforce.comのブースはかなり大規模(ただし、メイン会場ではなく別棟のMoscone West)

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Salesforce.com社はゴールドスポンサーのはずなんですがなぜかリストされていません。

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地味なマイクロソフトのブース。「いったい何を展示しているのですか?」とぶしつけな質問をすると、「PeoplesoftやJD.EdwardsはSQLServerをサーティファイしてるし、BizTalkなどの統合ソリューションもサポートしてるので」とのこと。

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Green Marketという環境関連コーナーがありましたが、Sunのモジュラーデータセンターのブースがあるくらいで後は自然食品の販売コーナーという超地味な存在。

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プラカードで”STOP STORAGE WASTE”を訴えるデモ隊。その正体はPillar Data Systemsというストレージベンダー。アプリケーションアウェアなHSMを実現しているようです(これはちょっと興味深い)。

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Teradataも出展しています。TeradataによるデータウェアハウスとOracleのBIツールが最強の組み合わせとのこと。Hyperion時代からのつながりでしょう。

とりあえずこんなところで、後で追記するかもしれません。

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【OOW09便り】まさかのマークベニオフCEO登場

今年のOracle Open Worldでは、Salesforce.com社がゴールデンスポンサーの1社になっています。3日目には、同社CEOのマークベニオフによる講演が行なわれました。マークベニオフと言えば、”No Software”の旗印の元に、高額なライセンス料と保守料金に基づく従来型ソフトウェアベンダーを声高に批判してきたことで知られています。まさに、Oracleのビジネスモデルと相反する存在です。

ベニオフCEOが何を話すのかに興味津々だった人はやはり多かったようで、雨天にもかかわらず会場には長蛇の列が。

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記者席が最前列だったので下から見上げるように写真を撮る形になりましたが、ベニオフCEOがますます大きく見えてプロレスラーのようです。

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当日の悪天候にかけて「クラウドを集め過ぎちゃったかな」とのジョークから話し始めます。

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メインフレームからクライアント・サーバの時代を経て今日はクラウドの時代ですといういつものピッチから始まりますが、「こういう古い世界とクラウドとの共存を目指します」といつもとちょっと感じが違います。

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そもそも、この講演のテーマも”No Software”ではなく、”The Best of Both Worlds”、つまり、オンプレミスとクラウドの良いところを組み合わせようというものです。ブレてると言えばブレてるのかもしれませんが、自社のイベントでは理想論を語り、ここでは現実論を語るということなのでしょう。

「長期的にはクラウドだけど当面は共存共栄」だと思っていても、そのまんま講演等で話したのではウケない(メディア等の注目を集められない)ので、「これからはクラウドしかない」と(ウソにならない範囲で)極端な物言いに走るのはほぼすべての米国系ITベンダーで見られるお話しであります。

そもそも、Salesforce.com社はOracle DBMSの大型ユーザーでもありますし、ラリーエリソン氏は同社の株主にして、創業時の役員でもあり、ベニオフ氏の心の師でもありますので、両社の関係は険悪というものではまったくありません。

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【OOW09便り】マクニーリとエリソン、合併の意義を改めて強調

サンフランシスコで開催中のOracle Open Worldに取材に来ています。

初日(日曜日)の夕方からSUNdayと称してスコットマクニーリとラリーエリソンによる基調講演が行なわれました。日曜の夕方という時間帯にもかかわらず会場は満員。

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「スコットマクニーリ名場面集」のビデオが上映された後にご本人登場。サンCEO時代の終盤に見られたようないらついた感じがなく、とても元気そうに見えます。サン時代に恒例であったトップ10ネタ(ちなみにこれは米国のテレビ番組David Letterman Showの人気コーナーのパクリ)を2本やりました。

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最初のトップ10は「エンジニアをキレさせるテクノロジートップ10」。OS/2、Mainframe Linux等々と挙げていって最後にJava Ringという自虐ネタで閉めるという構成でしたがちょっとすべってましたw。

次のトップ10は真面目な話でサンが成し遂げたイノベーションのトップ10。SunRayはちょっと微妙な気がしますが(少なくとも市場での浸透度において)他は納得できるものでしょう。

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そして、Javaの父、James Goslingが登壇。「自分はソフトウェア会社で働くの初めてだ」(ゴスリング)、「俺たちが行くんだからもうソフトウェア会社じゃないよ」(スコット)みたいな会話がありました。まあ、Oracle下のJavaに関して心配する必要はあまりないでしょう。

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そして、Sunのハードウェアシステムの責任者John Fowlerが登壇。Sun+Orcaleのシステムが7つの主要ベンチーマークでトップとなったことを発表。そして、例のデータベース・アプライアンスEXADATA v2を紹介。Sunのフラッシュディスクがテクノロジー上の差別化要素になっているようです(SunのフラッシュというとサンディスクのSDカードのことかと思ってしまいそうですw)。

ところで、話の流れ的にSPARCはすばらしいと続けた後で、XeonベースのEXADATA2を説明したのはどうかなと思いました。あと、どうでも良い話しではありますが、EXADATA2は筐体がねずみ色のロッカーみたいで鳴り物入りマシンのわりにはすごく地味です。

続いてエリソンが登壇しマクニーリと固い握手(急にエリソンが来たのでまともな写真が撮れませんでした)。SPARCへの投資もMySQLへの投資も続けるよと例の広告キャンペーンの主張を再度繰り返します。エリソン自身の口からという点に意味があるでしょう。

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そして、話題はIBMとのTCP-Cベンチマーク比較の件へ。IBMの76ラック構成に対して、Sunは9ラック構成でより高性能を実現、IBMの消費電力はSunの6倍、「IBMのPOWERプロセッサとはこういう意味(power=電力)だったのか」とジョーク。(ちなみに、このTPC-Cの話はSPARCサーバベースでEXADATA2ベースではありません)

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全体的に総合ITベンダーとしてIBMに勝つぞというエリソンの意気込みが感じられました。元々OracleはSunのソフトウェア資産だけを買おうとしていたと伝えられていますが、この半年くらいでエリソンの野望は一気に大きくなったのでしょう。

ところで、このIBM対Oracleのベンチマーク合戦については当然にIBMも対抗策を用意しているようです。時間ができたら別エントリーとしてまとめる予定です。

最後に”The Network is The Computer”というクラウド時代の登場を予言していたSunの創業以来のメッセージ(そういうえば、エリソンは一言も「クラウド」とは言わなかったですね)が映される中、スコットが再登壇して「みなさんOracle Open Worldを楽しんでくださいね」とあいさつ。スコット元気そうでしたがちょっと寂しそうでもありました。まあ、もう悠々自適でしょうからゆっくりお休みくださいと言う他はありません。

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コルシカと他のサービスを比べてみる

やはりコルシカについては雑誌協会側が差止要求を出し、コルシカ側がそれに応じたようです(参照記事)。まあ、これは当然で、警告後も無視して販売を続けていれば刑事事件に発展する可能性もないわけではなかったと思います。ただ、興味深いのははてブ等や掲示板等を見てみると「こういうサービスがほしかった」という意見が結構見られることです。この消費者ニーズを無視すれば雑誌業界は凋落の一途でしょう。実際、一部有力誌が共同して雑誌デジタル配信を目指す動きもありますが、2011年の事業化を目指すということでまったく「速さが足りない」状況です(参照記事)。

さて、コルシカそのものの話はちょっとおいておいて、今までに著作権で物議を醸した他のサービスとちょっと比べてみましょう。

貸レコード:
貸レコード屋が始まった当所は買ったレコードを貸与することを禁止する法律がありませんでした。まさに法律の抜け穴を利用したと言えます。その後、貸しレコード業界と権利者側がすったもんだした上で、著作権法改正により貸与権が制定され、レコード会社側に利用料が回るようなルールにすることで、貸レコード業は一応お墨付きをもらいました。ところで、法律上はレコード会社側は新譜発売1年間はレンタルを禁止できるのですが、現実には(国内レコード会社は)その権利をフルに行使していない(新譜発売後3週間程度のみレンタル禁止にしている)ことから、権利者側もCDレンタルの価値をそれなりに認めていることがわかります。コルシカについては、前回書いたように明らかに著作権侵害なので、貸レコードのケースとは全然違います。

Google Book Search:
Google Book Searchはアメリカでの話(集団訴訟とベルヌ条約コンボで結果的に日本の著作権者にも影響が及びましたが)なので、そもそも適用される法律が違います。なお、コルシカ側は「出版社側に不利益が発生していない」ことを主張していますが、これはフェアユースの抗弁的であって、日本の著作権法では意味がありません。日本の著作権法では、損害の発生のあるなしにかかわらず差止請求が可能です(もちろん、出版社側が「損害が発生してないなら訴えるのはやめておくか、あるいは、許諾をするか」と考えてくれるだろうと期待してのことなら意味がありますが)。また、GoogleがGoogle Book Searchを行える根拠は、法律や判決ではなく和解なので、気に入らない人はいつでも離脱(オプトアウト)できます。ということで、権利者の承諾なしに勝手にスキャンしたという点では似てますが、ケースとしては全然違います。

それから単行本の場合は作者が権利を持つことが多く出版社が著作権(=侵害に対して訴えることができる権利)を持つことは少ないですが、雑誌の場合には出版社に著作権(編集著作権)がありますので、この辺の事情も違います(Google Book Searchでは雑誌は対象外)。

MyUTA:
自分のCDをサーバ経由で携帯に転送するサービスですが、「コピーをする主体はユーザー自身であるが、ただし、コピー機のケーブルがすごく長くてネットのむ向こう側にあるだけ、なので著30条の私的使用目的複製の要件に当てはまる」という理屈は一応納得できます(裁判で否定されましたが)。なお、公衆送信権についての議論もありますが長くなるので省略します。他にも、録画ネット等々類似の事例はあります。これまた、細かくなるので省略しますが、サービス提供者側は「行為を行なっているのはユーザー、あるいは、送信は特定のユーザーにしか行なっていない」ことを根拠にサービスの合法性を主張していました(裁判によって認められたり認められなかったりしています)。ということで、「ユーザー自身が複製を行なっている」と見ることができないコルシカのケースとは違います。

YouTube等のCGMサイト:
サービス提供者は「アップロードを行なっているのユーザー自身なので事業者に責任はない」という理屈で合法性を主張してきました。この主張は基本的に認められて米国ではDigital Millennium Copyright Act、日本ではプロバイダー責任制限法として制定されました。(なお、これらの法律はプロバイダーに対する免責を定めたものであって、アップロードを行なっているユーザー自身が法的責任を負うのは変わりありません)。これまた、コルシカのケースとは全然違います。

ということで、今までにあった「著作権上の問題」→「裁判沙汰」→「それなりに落としどころが決まる」という事例は、「グレーゾーン」とか「法の抜け穴」的なところから始まっています。その一方で、コルシカはこのような理屈付けが著しく困難であり、落としどころも何もないのではないかと思います。

しかしながら、冒頭にも書いたように、この種のデジタルサービスの利便性をユーザーに認知させ、正規サービスの出現を後押しする結果になれば、結果的にはコルシカの存在も全く無駄ではなかったと言えるかもしれません。

ところで、次回からは何回かOracle Open Worldの模様をお届けします。第1回はたぶんSun Microsystemsによる基調講演になります。お楽しみに。

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