いわゆるマジコン問題の対応策として、著作権法を改正しようという動きがあるようです(参考記事)。
現在、日本の法律でマジコンの規制は不正競争防止法2条1項10号(アクセス制限回避機器の販売等の禁止)を根拠としています。マジコン販売は違法であるとの判決が出ていますが(確定ではないですが)、実態としてあまり抑止力になっておらず、相変わらず販売が続けられている現状があるようです。
なお、マジコンの使用については特に違法とする根拠はありません(道義的な問題は別)。もちろん、マジコンで使うために未許諾でコピーしたゲームイメージをネットにアップロードしたり、P2Pで交換可能にしていると著作権法における公衆送信権の侵害となります(刑事罰あり)。また、ダウンロードについては未許諾でコピーしたゲームイメージをダウンロードした場合には、私的使用目的複製の範囲外とされ違法となる可能性があります(ゲームのほとんどは映画の著作物と解釈され、ゲームソフトのダウンロードは映画の著作物の複製に相当すると解釈される可能性があるため)。
さて、マジコン規制が骨抜きになっている原因のひとつに、不正競争防止法2条1項10号に刑事罰がないという問題があります。民事上の損害賠償や差し止め請求を受けても、無視する業者がいるということです。普通の会社ではそういことをすると業務上の信用に差し障りますので、民事上の制裁でも抑止力はあるはずなのですが、そんなのは知ったこっちゃないという人々がマジコン販売の中心になっているということでしょう。
ということで、刑事罰を設けることで抑止力を高めようというのは一応うなずけます(悪いことをすれば罰を受けて当然なので罰則はどんどん増やして良いのだというロジックは近代国家ではあり得ませんが、現実問題として民事上の規制が無視されているのであれば、刑事罰で抑止力を増すことを検討することは許容されると思います)。
ここで、気になるのが、不正競争防止法だから抑止力がないのであって、刑事罰の規定がある著作権法でマジコンを規制すればよいのだという論調が新聞やブログ等で聞かれることです。これはあまり正しくありません。不正競争防止法にも刑事罰の規定があるからです(21条)。たとえば、不正アクセス行為により営業秘密を取得したり、不正の目的で著名な商品表示を使うなどには刑事罰が適用されます。
冒頭の参考記事では「同法(不正競争防止法)に罰則規定がないため…」などと書いてありますが、これはミスリーディングです。不正競争防止法そのものに罰則規定がないように読めますが、単に2条1項10号の行為(アクセス制限回避機器の販売等)が刑事罰の対象になっていないだけの話です。
ということで、マジコン対策としてまず最初にやるべきは、不正競争防止法を改正し、2条1項10号の行為を刑事罰の対象とすることを検討することだと思います。元々アクセス規制という概念がない著作権法の改正でマジコン販売を規制しようとすると相当な大工事が必要とされると思います。文化庁と経産省の関係がどーしたこーしたという話で、適切な法改正が妨げられるようなことがあっては困ります。
なお、刑事罰があってもトカゲのしっぽ切りをするだけで無視する業者は無視するという議論もあるかもしれませんが、それは著作権法改正による刑事罰化でも同じことです。
マジコン問題については、他にも2条1項10号の要件である「のみ」性の話とか、マジコンの輸入を税関で止めるための水際規制の話などがありますが、それはまた後日(たぶん)。