【Dreamforce2010便り(4)】小ネタ集


Expo会場の様子、大手コンサルタント会社から名前を聞いたこともないスポット・ソリューションの会社まで、大変な熱気です。Saleseforce.comのクラウドがプラットフォームとしてエコシステムを確立していることがわかります。


会場特設ブックストアのベニオフ選書コーナー。自分の本、ニコラスカーの本、Freakecnomics、Facebook Effectなどの書籍が並びます。25%オフですがもうさすがにハードカバー本買う気にはならないですね。Kindle版の割引クーポンでも提供してくれればすぐ買ったのに。


基調講演開場前、カメラの広角が足りなくてちょっと広さ感が出てないですがものすごい観客数です。記者/ブロガーのMac率が妙に高い気が。


基調講演前に踊り狂って時間をつなぐSaaSyとChatty


同じく基調講演前の時間つなぎのブッシュそっくりさん(ややスベリ気味)。


初日基調講演中に客席最前列にずっと座ってたBlack Eyed PeasのWill.i.am、Salesforce.comの社会貢献活動つながりだと思うのですが、エンタープライズITの話はさすがにちんぷんかんぶんだったのでは。ところで、本名William→Will.I.Am(我は意思)という芸名はなかなかナイス。後のランチョンセッションで講演者の一人が「『お父さんはWill.i.amの前で講演してきたんだぞ』と娘に自慢できますよ、サンキュー、ベニオフ」と言ってたのがちょっとほほえましかったです。


講演者用のモニター、現在のスライドだけでなく、次のスライドも映してます。これはわかりやすい。ちなみに開場後方の上部にも同じモニターとプロンプターがあって視線を落とさず講演が可能になってました。


Database.comの宣伝垂れ幕、drop database …のコマンド列がナイス。


初日の会場付近でMicrosoftの人たちがセグウェイに乗ってDynamics CRMのチラシを配ってました(モスコーニセンターに行ったことがある人はわかると思いますが、ダウンタウンから行ってモスコーニ・ノースに曲がる角のところです)。ところで、ここは、昨年度もSugar CRMの人たちが「クラウドにデータを預けてロックインされるな」というチラシを配ってました(参照エントリー)。コンペ企業のアンチキャンペーンの定位置なのでしょうかね。


セグウェイに貼ってあるのはエコノミストやWSJで展開していたらしいMicrosoftのSaleforce.com対抗キャンペーン広告。”I Didn’t Get Forced”(私は強制されてない=自分の意思でDynamics CRMを選んだ)というコピー、当然ながら”Forced”という単語がSalesforce.comを示唆してます。


「『悪の帝国』Microsoftがこんなことやってるようだが」という前振りがあって、ベニオフの呼びかけに応えて壇上に登場したのはまさにその広告の人物バーナードさん(ダースベイダーのテーマに乗って登場(笑))。ベニオフが「どうか目を覚まして戻ってきてくれないか」とお願いすると、会場も「戻ってこい」の大合唱。そして、ついにバーナードさんも「わかったよ」と折れて、会場はスタンディングオベーション。まあいかにもアメリカぽい演出です。

WSJの記事によるとバーナードさんはベニオフの友人であるらしいです。この人が俳優さんなのかリアルな顧客なのかは会場ではいまいちよくわからなかったのですが、前述WSJ記事によればどうやら俳優さんであるようです、もし俳優で、かつ、ベニオフの真の友人だとするならばその友人の会社を揶揄するCMに出演するのはそもそもどうなのよと思いました。まあ、お遊びとしてはおもしろいのですが、「こういうのはSalesforce.comの社風と違うんじゃない」というような誰かのツイートがあったのも事実。


SaaSyとの記念撮影コーナーは長蛇の列でした。


レセプションのゲストはスティービーワンダー! 懐メロ中心の営業モードで会場は大盛り上がりでした。Will.i.amとのデュエットも実現。後ろに映ってる巨漢ベースはネイサンワッツ。

カテゴリー: IT, クラウド | タグ: | コメントする

【Dreamforce 2010便り(3)】ソーシャル・メディア・マーケティング担当インタビュー

Saleforce.com社ソーシャル・メディア・マーケティング担当シニア・ディレクターであるJamie Grenney氏にインタビューしました。グループ・インタビューだったので私以外の方の質問も含めた形で再構成しています。

Q「Jamieさんのレスポンシビリティについて教えてください」

Grenney「Salesforce.comのソーシャル・メディアを通じたマーケティング活動を統括しています。マーケティング・チャネルとしてのソーシャル・メディアは大きく3つに分類しています。まず、公式ブログ、IdeaExchangeなどの会社としての公式チャネル、第二がfacebook、YouTubeなどのパブリックなソーシャル・メディアで特に重要なもの、第三がそれ以外の掲示板やブログなどです。」

Q「第二のグループに属するメディアとしては他に何がありますか?たとえばtwitter、LinkedIn、MySpaceなどは?」

Grenney「重要なものは前述の2つ、facebookとYouTubeです。YouTubeはマーケティング・チャネルとして特に重要です。人間のセールスマンとは違い24時間お客様に情報を提供してくれますからね。現在では1,400本ほど当社の動画が上がっていると思います。twitterは重要性を増しており当社にとってきわめて可能性の大きなチャネルになりつつあります。LinkedInも、前述のメディアに比べれば優先度は低いですが重要です。特に、コミュニティによる製品推奨の機能は弊社にとって重要ですね。MySpaceはほとんど関係ありません。これ以外のソーシャル・メディアとしてはSlideShare、flickrなども使っていますが優先度としてはそれほど高くありません。」

Q「Jamieさん配下のチームは何名くらいいらっしゃるのですか?」

Grenney「10名くらいです。」

Q「それでは、ソーシャル・メディア全体に対応するには不足なのでは?」

Grenney「我々だけですべての仕事をするのではなく、他のマーケティング組織のハブとして機能していますし、ソーシャル・メディアの監視にはRADIAN6、ScoutLab、Exact Targetなどのツールを活用していますので不足ということはありません。」

Q「ソーシャル・メディアの世界では会社に敵意を持ってわざと悪評を拡げようとする人物もいると思うのですが、どのように対応されていますか?」

Grenney「まずはその悪評の発信者に直接、できればオフラインでコンタクトすることですね。そして、その人の意見を聞き、根拠がないものであれば直ちにやめるようにお願いします。重要なのは、迅速に対応することです。ほっておくとソーシャル・メディアの世界ではあっという間に根拠のない悪評が広がってしまいますから。」

Q「ソーシャル・メディアを活用したいと考える企業に何かアドバイスすることはありますか?」

Grenney「ソーシャル・メディアはきわめてパワフルです。Groupon.comという急成長した会社をご存じでしょう。実はもっと前からCoupons.comという同じようなビジネスを行なっている会社がありましたが同じようには成長はできませんでした。両社の違いはソーシャル・メディアの活用の仕方にあったと思っています。さて、ソーシャル・メディアが強力である一方で多くの企業にとっては困難な変革を要するものであることは確かです。成功のためのアドバイスとしては、やはりトップのリーダーシップということになるでしょう。」

栗原コメント: ソーシャル・メディアの企業活用の秘訣はリーダーシップ、「それができれば苦労は…」という感じだと思いますがやはり結局それなんですよね。

カテゴリー: IT, クラウド | タグ: | コメントする

【Dreamforce 2010便り(2)】二日目基調講演 Heroku買収とForce.com 2

Dreamforce2010の二日目基調講演は開発プラットフォーム中心です。

まずは、おそらく今回のDreamforceにおける最大のニュース、RubyベースのPaaS提供/開発会社Herokuの買収合意の発表です。と言いつつ、この件がアナウンスされた時の会場の反応はイマイチでした。デベロッパー以外の人にとっては、インパクトがすぐに理解しにくいのかもしれません。

HerokuのCEOバイロン・セバスチャン氏とベニオフ

会場前席に着席しているHerokuのデベロッパーの方々が起立。そんなに大人数のチームというわけではありません。高額(2億ドル)の買収でホクホクなのではないでしょうか?

ところで、Herokuの読み方ですが、同社のサイトでは”her-OH-koo”と読むと書いてあります。実際には人によって「ヘロク」ぽかったり「ハロク」ぽかったりしてました(ただし、いずれも「ロ」にアクセント)。日経コンの中田記者(Nakada_itpro@twitter)によれば「日本語ぽい言葉をわざわざ作ったのを尊重して『ヘロク』と呼びたい」ということなので、日本語標準表記は「ヘロク」でいいんじゃないでしょうか(ただし、「ロ」にアクセントを置かないとたぶん米国人には通じません)。ところで、Rubyという日本起源のプログラミング言語がグローバルに注目を集めるのは喜ばしいことですね(日本起源ですというような話はここでは出なかったですが)。

デベロッパー(コミュニティ)を押さえるのはプラットフォーム成功の鉄則(マイクロソフトもそれで成功した)なので、クラウド・プラットフォームの勢力図が確定していない現時点でいろいろと押さえておくのはきわめて重要だと思います。昼食時の記者向けQ&Aセッションでも「正味30名程度の会社に2億ドル出すのは高すぎるのでは?」というような質問が出ていましたが、Salesforce.com社CTOであるParker Harris氏の回答は「長期的戦略の一環として考えているので長い目で見て欲しい」というものでした。

次は、BMC SoftwareとのアライアンスによるRemedyCloudの発表、BMC社のIT構成管理ソフトウェアをクラウド化したソリューションです。個人的に注目したいのはChatterとの統合、リアルタイムで例外処理を扱うことが多いシステム管理系ソフトとChatterはベスト・マッチではないかと思います。ビジネス・コミュニケーションとアラート監視をうまく融合できるのではないでしょうか?

さらに、発表はForce.com系と続きます。Force.com 2というそのまんまの名称になりました。新機能としては一般的Webサイト向けCMSのSiteForceが提供されました。また、アプリケーション開発用のAppForce、そして、ISVソフトウェア展開のためのISVforceも発表されましたが、これはリブランディングに近いように思えました(詳細は後日補充)。また、既に発表済みのVMforceはプライベートベータ段階となりました。

Force.com 2部分の担当はプラットフォームとマーケティング担当EVPのGeorge Hu氏、オーラがあります。出世街道まっしぐらという感じです。

本日基調講演を通じて、Salesforce.com社が開発プラットフォームとしてのクラウド戦略を着実に進めていることを感じました。

なお、夕方にはビル・クリントン元大統領の講演があるのですが、これは録音・撮影はおろか、記事に書くことすらもNGということなので残念ながらブログには書けません

カテゴリー: IT, クラウド | タグ: | コメントする

【Dreamforce 2010便り(1)】初日基調講演 database.com発表

#ブログの更新がめちゃくちゃ滞っておりどうもすみません、ほぼ毎日更新モードに戻す予定です。

さて、ただ今サンフランシスコで開催中のSalesforce.com社のユーザー・イベントDreamforce 2010に参加しています。今年は8回目。登録者数は3万人と去年の倍レベルです。

基調講演の来場者は約1万5千人。会場のモスコーニ・センターの一番大きい部屋をフルに使った会場。ステージはいわゆる「出べそ」があるタイプ、ジャニーズのコンサートみたいです(笑)。

マークベニオフ氏の講演はいつも通りのエネルギッシュなもの、元フォレスターのアナリストで現在は自分のリサーチ会社Constellation Reserachの代表Ray Wang氏(rwang0@twitter)は「現在のIT業界で最強のスピーカー」とツイートしていました。エンタープライズ系に限れば(ジョブズを抜かせば)そうかもしれません。また、Wang氏は「OOW、PDCと比べても今回のイベントは最高の出来だった」とも言っています。私は他の2つは行ってないのでよくわかりません。

基調講演の導入部は、メインフレーム→クラサバと来てこれからはクラウド、クラウド使うと半分の予算で5倍のスピードで開発可能、「偽物のクラウド」に気を付けろ等々、ここのところずっとしている話。正直ちょっと飽きました(笑)。ベニオフ本人も飽きてるんじゃないでしょうか?と言いつつ、やはり同じことを何回もしつこく主張するのがアメリカで成功するためには必要なのかもと思ってしまいます。

初日の大きな発表は大きく2つ。まず、社内twitter的なコラボサービスであるChatterの無料バージョン、Chatter Free(そのまんま)です。機能限定バージョンを無料で提供するといういわゆるフリーミアム戦略です。Chatterは使いたいけど、ユーザー以外の社員もシートベースで課金されるのはちょっとと考えていた企業をChatterの世界に呼び込む強力な武器となるでしょう。なお、Chatter Freeは既にSalesforce.comのサービスを使っている人がユーザー以外の社員を無料でChatter(の機能縮小バージョン)に登録できるというものであり、誰でも無料で使えるサービスではありません。

これとは別に2011年の2月にChatter.comという無料サイトも開設されます。こちらは誰でも無料で使用可能です(Yammer等と同じビジネスモデル)。ただし、利用はモバイル(iPhone/iPad、Android、BlackBerry)に限定されるようです。(←これは私の勘違い、どうもすみません)

個人的にはChatterは素晴らしいソリューションだと思っているので日本でもどんどん普及してほしいですね。

本日のもうひとつの重要な発表は、クラウド上のDBMSであるdatabase.comです。Salesforce.comのSaaSやForce.comの背後にあるDBMS層を開放したもの。一般的にはDatabase-as-a-Serviceと呼ばれる形態ですがこの言い回しは使われていません。クラウド上のデータベースというとNoSQL系かと思ってしまいますが従来型のRDBMSです(実体はOracle DBMSなので当たり前です)。database.comのドメインもちゃんと取得しています(まあ当たり前ですが)。結構なお値段だったのではないでしょうか?

10万レコード、月5万トランザクション、3ユーザーまでは無料、それ以上は従量制料金。プログラミング言語はJava、C#、Ruby、PHPをサポート、使用環境はForce.com、VMforce、Amazon EC2、Google AppEngineをサポート、REST、SOAP、OAuth、SAMLも全部サポートとオープンなプラットフォームです。トランザクション(ACID)のサポートは?とかサーバマシンをまたがった時のスケーラビリティは?とか大量データのロード?は等々現時点の疑問は数多くありますが、それはまた後日情報が得られ次第補充します。

最近「栗原さんが今一番興味のある分野は?」と聞かれた時「エンタープライズとソーシャルの境界領域」と答えたことがありますが、まさにそれを実感した基調講演でありました。

明日は、Force.com関係でまた大きな発表があるようです。

(オマケ画像)ベニオフのおしゃれ(?)な靴下。

カテゴリー: IT, クラウド | タグ: | 2件のコメント

「ダウンロード行為だけで刑事罰に問われることはない」ということはない

P2Pソフトを使って公開前の映画を放流して逮捕された人が、既にダウンロード済だがアップロードはしていない(アップロードの行為が証明されていない)行為についても追起訴されたという事件がありました(参照記事)。

著作権侵害には未遂罪はないですし、30条1項3号のいわゆる「違法ダウンロード」は刑事罰の対象外ですし、113条1項2号の海賊版の頒布目的所持によるみなし侵害は物理的な物品(DVD等)しか関係ないはずなので、これは検察の法の拡大解釈ではと一瞬思ってしまいましたが、よく考えてみればそんなことはありませんでした。

今回は、容疑者自身が「『ダウンロードしたものを流すのは共有ソフトユーザーの常識』と、流出目的でダウンロードしたことを明確に認めていた」そうなので(誘導尋問で心にもないことを言わされたのではないかという話は別論)、そもそもダウンロード行為が私的使用目的の複製にはあたらず、権利者の許諾は得ていないことから当然に複製権を侵害することになり、故意であれば刑事罰の対象になります。法解釈としては全然間違ってません。

一般に、著作権者に無断でのアップロード(公衆送信)は刑事罰の対象だが、ダウンロードについては民事上の責任は負っても刑事罰の対象にはならないという認識があるかもしれませんが、これはあくまでもダウンロード行為が私的使用目的である場合に限ります。

カテゴリー: 著作権 | コメントする