【実務者向け】商標登録査定後に名義変更する方法

弊所はスタートアップ企業のクライアントも多いので、商標登録出願の登録査定が出たので連絡すると「実はその事業は別会社でやることになりました」なんて話になっていることがたまにあります。登録されてから、商標権を譲渡してもよいのですが、(1)印紙代が高くなる(3万円、ちなみに特許印紙ではなく収入印紙)、(2)商標登録証の権利者が旧名義で載ってしまう(これは移転登録後に登録証再発行しても直りません)という問題が生じます。(2)は実害はないのですが、会社によっては登録証を社内に飾りたいところもあるかもしれないので、できれば避けたいところです。

なので、出願係属中に名義変更した方が好ましいのですが、これは登録査定が出た後でも設定登録前であれば可能です。その際は、登録料納付書に【その他】欄を設けて、「xx年xx月xx日付で出願人名義変更届提出済」であることを書いてほしいとのことです(上申書を提出しても登録課には届かないようです)。

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【実務者向け】マドプロでWIPOと直接やり取りする際の手段について

マドプロ(国際商標出願)の最初の出願(MM2)は特許庁に書類で提出する必要がありますが、いったん国際登録が完了した後の手続(典型的には事後指定(MM4))は、特許庁に対して行なうことも、スイスのWIPO本部に直接行なうこともできます。

特許庁経由だとWIPO料金に加えて印紙代がかかってしまいます。特許庁経由にする意味があるのか特許庁の担当者に聞いてみたことがありますが「ない」とのことでした。強いて言うと、書類のチェックをしてもらえることと、(持参した場合には)受領印をすぐもらえるということくらいでしょうか?

WIPOに直接手続を行なう場合には、FAXかEメールかといういことになるかと思います(郵送という手もありますが着信主義なのであまりやる人はいないと思います)。だいぶ前に受けたマドプロの研修で、FAXは受領書が(FAXで)もらえるけどEメールは受領書がもらえないので、FAXの方が良いと聞いていたので、今までずっとFAXを使っていました。

しかし、先日、FAX(正確に言うとeFAXサービス)の調子が悪かったので、MM4のPDFファイルをメールに添付して送ってみました。メールでも自動応答の返信はあるのですが、やはりMM4がちゃんと処理されたいう受領書は送られてきません。しょうがないので、メールで問い合わせたところ、担当者から問題なく通っているとの返事が返ってきました。その時についでに教えてくれたのですが、WIPOに直接送った手続がちゃんと通っているかどうかはMadrid Real-Time Statusで確認すればよいと言われました。

ということなので、これからは、マドプロ関連のWIPOへの直接手続はメール+リアルタイム確認で行こうと思います。

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【実務者向け】出願業務における重要期日について

前も書いたように弊所ではOutlookを使って期日管理をしています。出願を行なった時に設定すべき期日としては以下があると思います(国内出願のみ)。

出願日から3ヶ月後(意匠・商標): パリ条約優先権を指定した場合の優先権書類の提出期日です(徒過した場合の救済措置はないと思います(たぶん))。特許の場合は万一優先権の処理が終わってないと特許庁からサービスとして期日前に警告が来る運用になっているようですが、意匠・商標ではそのような運用はないと思います(たぶん)。海外代理人の中には、意匠・商標の優先権書類は現物が必要であることを知らない人もいるといるようなので十分な注意が必要です。なお、優先権書類の現物はどんなシンプルなものでも翻訳文の添付が必要です。

6ヶ月後(意匠・商標):パリ条約優先権を指定した出願の期日です。実際にはその2週間ほど前に出願人に告知しています。

10ヶ月後(特許):国内優先権またはパリ条約優先権の指定による出願を行なうかどうかを出願人に聞くタイミングです。国内出願やPCTならまだしも、パリ条約優先権を指定して、中国等の翻訳文後出しができない国に出願するパターンを考えると2ヶ月前がぎりぎりということでしょう。

12ヶ月後(特許):国内優先権またはパリ条約優先権を指定した出願の期日です。

1年4ヶ月後(特許):出願公開を中止するための出願取り下げを行なう期日です。実際にはその2週間ほど前に出願人に告知しています。この時期になると出願人も出願したことを忘れており、もう特許化の意思はないが公開も避けたいというポジションになっている可能性もあるので告知する意味はあります。

1年6ヶ月+α後(特許):出願公開された時にクライアントケアとして出願人に通知することがあります。

2年半後(特許):出願審査請求の期日を出願人に通知します。小規模企業ですと担当者がちゃんと引き継ぎしないで退職していたリすることもあるので余裕を見て通知しています。

3年後(特許):出願審査請求の期日です。言うまでもなく徒過すると大変なことになるので念には念を入れて管理しています。

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間違って古いバージョンのファイルを使ってしまわないための工夫

弁理士業務にかかわらずプロフェッショナルの実務では、組織をまたがって特定のファイルを複数の人で更新する作業は頻繁に発生します。文書管理システムでバージョン管理できれば理想ですが、そこまではやらずに、ファイル名にバージョン番号を付けたり、タイムスタンプを付けて、添付ファイルとしてメールでやり取りするのが一般的でしょう。

この場合に、最も気を付けたいのは、古いバージョンのファイルで出願してしまったり、入稿してしまったりするトラブルです(かと言って、古いバージョンのファイルを消すようにすると、やり取りの履歴が残せないですし、前バージョンに戻れないという問題が生じます)。このトラブルは簡単な工夫で防げます。

弊所の場合、ファイル名の先頭にYYMMDD形式日付を付けることで簡単なバージョン管理しています(一日に複数バージョンがある場合は枝番付けています)(余談ですが、こうしてくと、「2015年6月頃に扱ってたはずのファイルが見つからないな−」なんて時に、Windowsで”1506”で検索すればすぐ見つかるので便利です)。

そして、更新の結果、バージョンが古くなったファイルにはYYMMDD(OLD)…という名称を付けるようにしています。こうしておけばファイル名ソートで更新履歴を見やすくしつつ、旧バージョンファイルを最終版として扱ってしまう間違いを防げます。

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【実務者向け】出願公開を防ぐための出願取り下げについて

出願日(または優先日)から1年6ヶ月で特許出願の内容が公開されるのを防ぐには出願そのものを取り下げるしかありません。

特許出願後に出願人の事情が変わる(たとえば、特許化はあきらめて機密のノウハウとしたい)ことにより、出願自体を取り下げて出願公開を防ぎたいというケースはあると思いますが、この場合に、1年6ヶ月ぎりぎりで出願を取り下げてももう公開公報発行の準備が始まっているので出願公開は防げません。

では、いつまでに出願を取り下げれば出願公開を防げるのかというと、期日の2ヶ月前、すなわち、出願日(または優先日)から1年4ヶ月後までです。ただし、これ以降に取り下げた場合も(出願公開を防ぐことが出願人の利益になると考えられることから)公開を取りやめる努力はしてもらえるようです(参考方式審査便覧)。

なお、出願取下書に連絡事項として「出願公開中止希望」みたいなことを書いても、方式審査課にはこの情報が回らないので、もし、2ヶ月前を越えて時点で出願公開をやめたい時には、方式審査課に電話で連絡するのがよさそうです(特許庁確認済み)。

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