弁理士+本人のみでも特許侵害訴訟は可能です

業として訴訟事件の代理人をできるのは弁護士だけです。これに違反すると(いわゆる、「非弁活動」)弁護士法の規定により刑事罰が課されます。

一方、代理人を使わず、当事者本人が裁判を起こすことは可能です(いわゆる、「本人代理」)。とは言え、法律知識のない当事者のみで裁判を継続し、有利な結果を得ることは困難です。

そして、弁理士法の定めにより、知財関係(著作権を除きます)の訴訟であれば、弁理士は補佐人として裁判に関与できます。

第五条 弁理士は、特許、実用新案、意匠若しくは商標、国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願、回路配置又は特定不正競争に関する事項について、裁判所において、補佐人として、当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができる。

2 前項の陳述及び尋問は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。

ということで、本人代理+補佐人としての弁理士の組み合わせにより、弁護士抜きで知的財産権(著作権を除きます)の侵害訴訟を行なうことは法律的には問題ありません。ただし、訴訟の提起や和解交渉等は本人が行なう必要があります。また、代理人がいない状態なので、裁判には常に本人が出席する必要があります(弁理士のみでは不可)。権利者が法人である場合には、代表取締役が出席する必要がありますので大企業では非現実的かと思います。

合法は合法としても実際にそのようなケースがあるのかと調べてみると、弁理士会の会報「パテント」に経験談が載っていました。当事者(原告)が体調不良により裁判に出席できなくなったというアクシデントもあったようですが、何とか有利な和解に持ち込むことができたようです(事実上の勝訴に近いです)。

もちろん、特許侵害訴訟は知財分野の経験豊富な弁護士と弁理士の組み合わせで行なうのが理想(弊所でも比較的低めの着手金で受任していただける弁護士先生をご紹介可能です)ですが、個人発明家や小規模企業において、予算が非常に厳しく、特許侵害は明らかなのに裁判費用の問題で訴訟に持ち込めないというパターンの場合には、弁理士が補佐人として本人代理訴訟のお手伝いすることが可能です。是非ご相談ください。

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【実務者向け】商標登録出願の公開を防ぐ方法はないようです

twitter界隈でちょっと話題ですが、商標権取得のためではなく、特許庁に自分の思いのたけを伝えるかのような商標登録出願を繰り返している人がいます(事情がよくわからないのでこの件そのものには触れません)。これらの出願の審査経過情報を見てみると、出願して同日に取下げていることがわかりました。

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これを見て思ったのは、出願即取下というパターンでも出願公開はされてしまうということです。特許であれば、ちょっと前に書いたように出願日(優先日)からおよそ1年4ヶ月経過までにに出願自体を取下げれば出願公開を防ぐことができますが、商標の場合は出願後ただちに公開準備に入る規定なので事情が異なるようです(特許庁に問い合わせたところシステムによって自動化されているので止める手段がないそうです)。

たとえば、新製品発表直前に製品名を商標登録出願したところ、何らかの事情により新製品発表が半年後に延期、このままだと出願公開で製品名が発表前にネタバレしてしまうというような事態で、あわてて出願を取下げても出願公開は食い止められないということになります。

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【実務者向け】商標登録査定後に名義変更する方法

弊所はスタートアップ企業のクライアントも多いので、商標登録出願の登録査定が出たので連絡すると「実はその事業は別会社でやることになりました」なんて話になっていることがたまにあります。登録されてから、商標権を譲渡してもよいのですが、(1)印紙代が高くなる(3万円、ちなみに特許印紙ではなく収入印紙)、(2)商標登録証の権利者が旧名義で載ってしまう(これは移転登録後に登録証再発行しても直りません)という問題が生じます。(2)は実害はないのですが、会社によっては登録証を社内に飾りたいところもあるかもしれないので、できれば避けたいところです。

なので、出願係属中に名義変更した方が好ましいのですが、これは登録査定が出た後でも設定登録前であれば可能です。その際は、登録料納付書に【その他】欄を設けて、「xx年xx月xx日付で出願人名義変更届提出済」であることを書いてほしいとのことです(上申書を提出しても登録課には届かないようです)。

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【実務者向け】マドプロでWIPOと直接やり取りする際の手段について

マドプロ(国際商標出願)の最初の出願(MM2)は特許庁に書類で提出する必要がありますが、いったん国際登録が完了した後の手続(典型的には事後指定(MM4))は、特許庁に対して行なうことも、スイスのWIPO本部に直接行なうこともできます。

特許庁経由だとWIPO料金に加えて印紙代がかかってしまいます。特許庁経由にする意味があるのか特許庁の担当者に聞いてみたことがありますが「ない」とのことでした。強いて言うと、書類のチェックをしてもらえることと、(持参した場合には)受領印をすぐもらえるということくらいでしょうか?

WIPOに直接手続を行なう場合には、FAXかEメールかといういことになるかと思います(郵送という手もありますが着信主義なのであまりやる人はいないと思います)。だいぶ前に受けたマドプロの研修で、FAXは受領書が(FAXで)もらえるけどEメールは受領書がもらえないので、FAXの方が良いと聞いていたので、今までずっとFAXを使っていました。

しかし、先日、FAX(正確に言うとeFAXサービス)の調子が悪かったので、MM4のPDFファイルをメールに添付して送ってみました。メールでも自動応答の返信はあるのですが、やはりMM4がちゃんと処理されたいう受領書は送られてきません。しょうがないので、メールで問い合わせたところ、担当者から問題なく通っているとの返事が返ってきました。その時についでに教えてくれたのですが、WIPOに直接送った手続がちゃんと通っているかどうかはMadrid Real-Time Statusで確認すればよいと言われました。

ということなので、これからは、マドプロ関連のWIPOへの直接手続はメール+リアルタイム確認で行こうと思います。

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【実務者向け】出願業務における重要期日について

前も書いたように弊所ではOutlookを使って期日管理をしています。出願を行なった時に設定すべき期日としては以下があると思います(国内出願のみ)。

出願日から3ヶ月後(意匠・商標): パリ条約優先権を指定した場合の優先権書類の提出期日です(徒過した場合の救済措置はないと思います(たぶん))。特許の場合は万一優先権の処理が終わってないと特許庁からサービスとして期日前に警告が来る運用になっているようですが、意匠・商標ではそのような運用はないと思います(たぶん)。海外代理人の中には、意匠・商標の優先権書類は現物が必要であることを知らない人もいるといるようなので十分な注意が必要です。なお、優先権書類の現物はどんなシンプルなものでも翻訳文の添付が必要です。

6ヶ月後(意匠・商標):パリ条約優先権を指定した出願の期日です。実際にはその2週間ほど前に出願人に告知しています。

10ヶ月後(特許):国内優先権またはパリ条約優先権の指定による出願を行なうかどうかを出願人に聞くタイミングです。国内出願やPCTならまだしも、パリ条約優先権を指定して、中国等の翻訳文後出しができない国に出願するパターンを考えると2ヶ月前がぎりぎりということでしょう。

12ヶ月後(特許):国内優先権またはパリ条約優先権を指定した出願の期日です。

1年4ヶ月後(特許):出願公開を中止するための出願取り下げを行なう期日です。実際にはその2週間ほど前に出願人に告知しています。この時期になると出願人も出願したことを忘れており、もう特許化の意思はないが公開も避けたいというポジションになっている可能性もあるので告知する意味はあります。

1年6ヶ月+α後(特許):出願公開された時にクライアントケアとして出願人に通知することがあります。

2年半後(特許):出願審査請求の期日を出願人に通知します。小規模企業ですと担当者がちゃんと引き継ぎしないで退職していたリすることもあるので余裕を見て通知しています。

3年後(特許):出願審査請求の期日です。言うまでもなく徒過すると大変なことになるので念には念を入れて管理しています。

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