twitterでちょっとだけ話題になっている中央日報の「アップル、デザイン特許を放棄?…サムスンとの特許戦の変数に」(ママ)という記事についてコメントしておきます。
記事を見るとあたかもアップルが「丸い角の長方形」のデザイン特許(意匠権)を放棄したように読めますが、2つの点で誤解を招きそうです。
まず、今回問題になっている意匠権はD618677(下図参照)であって、前回のエントリーで触れた最近話題の11月6日に登録された意匠とは違います。なお、D618677は、先日のカリフォルニア地裁においてサムスンによる侵害が認定された意匠権のひとつです。
そして、記事中の「放棄覚書」というのは米国の特許制度に特有のterminal disclaimerという制度で、過去の権利とかぶった権利の存続期間の一部を自発的に放棄することで、全体が無効にされること(いわゆるダブルパテント)をさけるための手段です。この場合は、アップル自身の過去の登録意匠D593087(下図参照)の存続期間を超える期間について権利を放棄することを宣言することになります。
FOSS Patentsによれば、サムスン側がD618677はD593087とダブルパテントで無効と主張してきたようなので、これに対するアップルの対抗策です。もし、この主張が認められず、D618677の全体が無効にされてしまうと、カリフォルニア地裁判決においてD618677は侵害しているが、D593087は侵害していないと認定されたサムスン製品がいくつかあることから、損害賠償額が約半分くらいになってしまう可能性があるようです。