【お知らせ】Yahoo!個人等で情報発信を強化していきます

Yahoo!個人で書くことになりました。もうサイトはできてるんですがまだ何も書いてません。Yahoo!のブランドで書くからにはあんまりしょーもない記事は書けないと考えているので、強力なネタが出た段階で第1回記事を書くことにいたします。

もちろん、本ブログも(どちらかというと小ネタを中心に)継続して書いていきます。本ブログの記事の一部はBLOGOSハフィントンポストにも転載されます(何が転載されるかは先方の判断によります)。

それから、ITmediaで「知財とITの交差点」というコラムの連載(およそ隔週ペース)を始めました(第1回)。企業IT部門やITベンダーのプロフェッショナル向けに知財の入門情報やニュース解説を書いていく予定です。

さらに、ZDNetで「テクノロジーの先行き」という連載(こちらもたぶん隔週くらいのペース)を始めました(第1回)。こちらは、IoT等の先進テクノロジーの動向を中心に書いていく予定です。

それから9月にIoTのイベントで基調講演するのですが、まだサイトがオープンになっていないようなので詳しくはまた後日。

最近はステルスモードの仕事が多くなりすぎた感もありましたので、まあこういう感じで、ちょっと情報発信を強化していきたいと思っています。

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「進研太郎」とコピーライトトラップについて

過去のエントリー「不正競争防止法の観点からジャストシステムの責任を考える」で、名簿業者は、不正取得行為が介在したことについて善意(事情を知らない)かつ無重過失であれば不正競争防止法の責任を負わないと書きました。

これに関連して毎日新聞に「ベネッセ流出:名簿業者も不正認識か ダミー部削除し転売」なんて記事が乗っています。ジャストシステムに名簿が渡った段階で、ベネッセがデータに入れていた「進研太郎」などのダミーデータが削除されていたことから、(少なくとも一部の名簿業者は)不正取得行為を知っていた(ゆえに、不正競争防止法上の責を負う)のではないかというお話です。

こういうダミーデータはコピーライト・トラップとも呼ばれ(生データには著作権は及びませんので厳密に言えばコピーライト・トラップではなく、コピー検知トラップとでも言うべきですが)、地図の不法コピーを防ぐために昔から使われてきました(実際には存在しない道をわざと描いておく)。他にも、プログラム・コードに絶対実行されない不要な部分をわざと入れておいたりとか、ICのレイアウトで意味のない回路を入れておいたり等々はよくあり、コピーがあったこと(独立した作ったのではないこと)を立証に有効でした。どこかのカナ漢変換ソフトで、特定の文字列を変換すると「ピカチュウ」と変換されるというトラップもあったと記憶しています。

今回は、コピーライト・トラップが見つかったことでコピー行為が立証されたというわけではなく、コピーライト・トラップが見つからなかったことで事情を知ってコピーしたことが疑われるというパターンであるのは興味深いです。

とは言え、「進研太郎」が削除されていたからと言って、これだけでは故意の立証にはなり得ないと思います。データクレンジングの段階で日本の姓名としてあり得ない情報を自動的に削除している可能性もあるからです。アンケート等で姓名を入力させると偽名(たとえば、「大日本太郎」とか)や現実にない住所を入力されるケースもあるので、辞書と突合して削除するのはよくある話(というかデータ品質向上のためにはやっておくべきこと)であるからです。

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【小ネタ】サルは著作権者になり得るのか?

livedoorNewsに「サルの自分撮り写真をめぐる著作権争い、ネットで物議を醸す」なんて記事が載ってます。サルがカメラマンのカメラをひったくって「自撮り」した写真(なかなか絶妙な「自撮り」なので是非リンク先ご覧下さい)がWikipediaで公開されていることに対して、このカメラマンがWikilpedia運営のWikimedia Foundationによる著作権侵害を主張しているというお話です。

一部メディアの記事では「写真の著作権はサルにある」とWikimedia側が主張しているかのようなタイトルになっていますが、冒頭記事をよく読むと、Wikimedia側は公式には写真が著作者がいないのでパブリックドメインであると主張しているようです。まあ、仮にWikimedia側が、サルが著作権者であると言ったのだととしても、本気でそう主張したいのではなく、このカメラマンは著作権者にはなり得ない、敢えて著作者を捜すとすればサルだろう、というレトリックとして言ったのだと思います。

そもそも、サルは、というか一般的に動物は、著作権者になり得るのでしょうか?(少なくとも日本の民法では)人間以外の動物に権利能力はありませんので、著作権の主体となることはありません。もちろん世界的に「アニマルライツ」的な動きはありますが、それは生存権的な話であって、動物が財産権の主体になるという話ではありません(参考Wikipediaエントリー「動物の権利」)。

仮にこの写真の著作権者がサルなのだとすると、Wikimediaはカメラマンではなくサルの許諾を得なければならないことになってしまうので、サルが著作権者になり得ないのは明らかです。

たまに、自然破壊に反対するために森の動物が原告になって訴訟なんて話がニュースになることはありますが、これは却下されることを前提として、メディアに事件を取り上げてもらうための広報戦略であると思われます(昔、これについて書いたブログ記事)。

ということで、本件についてまじめに検討すると、この写真は著作物ではないか、あるいは、カメラマンが著作者である写真の著作物であるかの二択ということになります。

偶然の産物で人間のクリエイティビティは介在していないので著作物ではないという主張も考えられなくはないですが、写真という著作物の特性を考えると、シャッターチャンスと構図の決定は重要であるものの、レンズの選定、絞りやシャッタースピードの設定、撮影場所の決定等もカメラマンの「思想や感情を創作的に表現したもの」になると思われますので、最後に誰がシャッターを押したかには関係なく、カメラマンが著作者であると考えても全然おかしくないと思います。このケースについて言えば、私見では後者の立場です。

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ジャポニカ学習帳の立体商標を登録する意味とは?

日本の小学校に行った人ならたぶんほとんどの人が知っている「ジャポニカ学習帳」の商品外観が立体商標として登録されたという記事がねとらばに載ってます(ショウワノート株式会社によるプレスリリース)。

登録番号は5639776です。登録日は昨年の12月27日なので、なぜ今になって発表したのか定かではありませんが、ホンダのスーパーカブの立体商標登録等(関連過去記事)により、商品形状をそのまま商標登録したケースに注目が集まっているタイミングでということかもしれません)。

分厚いノートで背表紙のデザインに特徴があるならまだしも、小学生用ノートのようなほぼ平面の商品で立体商標を取る意味があるのかのとも思いましたが、商標登録公報の図面を見る限り、表面と裏面のデザインを合わせて登録したことに意味があるのかもしれません(模倣品を防ぐだけなら表表紙だけ登録すればすむような気もしますが)。

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この登録により、競合他社は「ジャポニカ学習帳」に似た名前を使っていなくても、また、似た表紙写真を使っていなくても、上記の写真に類似した外観のノートは販売できなくなります。自分は子供がいないのでよくわかりませんが、他社類似品が問題になっていたのかもしれません。

なお、IPDLで審査経過を見ると2010年に出願されて拒絶理由通知が出てから、かなりのやり取りがあった上でようやく登録されていることがわかります(具体的なやり取りの中味は閲覧請求(600円)をしないとわかりません)。

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クリステンセン”Seeing What’s Next”が新訳で出版されました

翔泳社様から『イノベーションの最終解』の献本をいただきました。photo

原本は、クレイトン・クリステンセンの”Seeing What’s Next”です。翻訳者は櫻井祐子さんです。

クリステンセン教授のイノベーター三部作のうちの最初の二つ、『イノベーションのジレンマ』(Innovator’s Dilemma)と『イノベーションへの解』(Innovator’s Solution)は、櫻井祐子さんの翻訳で翔泳社から出ていたんですが、なぜか三つめの”Seeing What’s Next”だけは『明日は誰のものか』として別の翻訳者でランダムハウス講談社から出てました(現在は絶版のようです)。

内部事情は知りませんが、今回、翔泳社が翻訳権を取りなおして再出版となったのだと思います。三部作共に同じ定評ある翻訳者さんで訳されたのは喜ばしいこです。もちろん、私も原著・旧訳ともに読んでますが、この機会に読み直してみたいと思います。

ところで、この『イノベーションの最終解』の共著者であるスコット・アンソニー氏が著者になっている『イノべーションのへの解(実践編)』は私が訳してます。

スコット・アンソニー氏は、イノサイトというコンサル会社をクリステンセン教授と共同経営している方です。イノサイトは日本ではINDEE JAPANという会社と提携して活動しているようです(関連過去記事)。『イノべーションのへの解(実践編)』はその名の通り、クリステンセン教授の理論をコンサルに応用する時に使いやすい内容になっています(INDEE JAPANの方からも「わかりやすく翻訳してくださってありがとうございました」とお褒めの言葉をいただきました)ので、併せてお読みいただければ幸いです。

ところで、『イノベーションの最終解』の訳者あとがきで、”『イノべーションのへの解(実践編)』の栗原潔氏の訳語も使用させていただいた”みたいなクレジットが入ってます。だいぶ昔なので定かでないのですが、『イノベーションのジレンマ』と『イノベーションへの解』の訳語を踏襲するのは当然として、どうしても齟齬が生じる部分があったので、悩みに悩んだ上で、新訳語を当てたことがあったと記憶しています。

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