意匠の国際出願における優先権証明書について(実務者向け)

久しぶりに投稿します。ハーグ協定に基づく意匠の国際出願の外内のお話しです。

マドプロの外内の場合、拒絶理由は受理官庁の代理人に届きますが、日本国特許庁とのやりとりは日本居住者でないとできませんので、そのタイミングで日本国内の代理人がを任命されて補正等の手続を行なうことになります。

ハーグの意匠でも基本的な流れは同じですが、パリ条約優先権主張がされている場合は注意が必要です。優先権証明書の現物を国際公表日から3カ月以内に特許庁に提出しないといけないからです。拒絶理由が来てからの対応では間に合いません。マドプロの場合は優先権指定してても証明書の提出は不要ですし、特許の場合は証明書の現物を扱うことはほとんどないので、同じようなつもりでいると大変なことになります。

なお、この3カ月の期間は絶対厳守で徒過すると優先権が無効になります。コピーで提出したり、添付物件なしで優先権証明書提出書だけ出しておいて、補正で現物を後出しすることも認められません(特許庁に確認済)。海外の代理人だとここを緩く考えているところがあるかもしれないので意匠の外内案件が来そうな海外事務所には先に周知徹底しておいた方がよいかもしれません。

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【お知らせ】ブロックチェーン関連特許の無料セミナーを行ないます

まだまだ不確定要素が多いブロックチェーン技術ですが、このように不安定な時期は強力な特許を取得できるチャンスでもあると言えます。

ということで、7月7日(金)の15時より、にビットコイン/ブロックチェーン関連特許の無料セミナーを行ないます。場所は私が「従たる事務所」としているつむぎ国際特許事務所(@渋谷)です。

詳細とお申し込みはこちらから。

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【お知らせ】6月8日につむぎ国際特許事務所のセミナー(無料)

私が「従たる事務所」としているつむぎ国際特許事務所が6月8日に無料セミナーを開催します。詳細アジェンダとお申し込みはこちらです。今回は私は話しません。

2017年6月8日(木)15時〜17時(受付開始:14時30分)
場所:東京国際フォーラム会議室【G502】

ハンドル式移動棚で業界トップレベルのシェアを誇る金剛株式会社様および特許庁からゲスト講演者をお招きしています。今回は最先端の技術動向等のお話しではなく、中堅ものづくり企業にとって真に価値がある知財戦略とはといった話になります。ご興味ある方は是非ご参加下さい。

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米特許訴訟検索サービスRPX Searchがなかなか便利です

米国は基本的にすべての裁判情報がPACER(Public Access to Court Electronic Records)というサービスにより公開されています。実費相当額の料金が必要(件数が少なければ無料ですみます)ですが、進行中のもののも含めてほぼすべての裁判情報にアクセスできますので、確定判決の一部が裁判所のウェブで公開されるだけの日本と比べるとかなり進んでいます。

と言いつつ、PACERはUI的に決して使いやすくはないですし、あらゆる裁判情報が含まれているので特許訴訟だけを調べる時にはかえって大変ですし、前述のとおり有料であるという問題があります。この代替案として、防御系パテントアグリゲーターのRPX社が提供するRPX Searchが結構使えることがわかりました。PACERやITCのサイトから特許訴訟関連情報のみを抽出してモダンなUIで提供しています。有料制会員サービスですが、無料会員でもある程度のことはできます。

たとえば、トップページには「最近の特許訴訟10件」が常に表示されていますので興味深い裁判情報をいち早く得ることができます。また、サーチボックスに企業名を入れるとその企業が当事者になった特許訴訟がリストされます。最近Yahoo!ニュース個人にも書いたマクロニクスと東芝の訴訟の情報を見ようと思えばサーチボックスに”macronix toshiba”と入れてサーチすればすぐ見られます(ただし、ITCの情報は有料会員でないと見られません)。

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なかなか便利なのはその特許訴訟の対象特許が一覧になって表示される点です。一般メディアの特許訴訟関連のニュースでは肝心の特許番号が書いてないことが多いですが、これを使えばすぐに調べられます。また、同じ特許による他の訴訟の情報も表示されます。たとえば、クライアントにトロールから警告書が来たとき等はこれで調べれば、そのトロールが他にどこを訴えているか等がすぐ分かって便利ですね。

こういう便利なサービスは政府(と司法)が裁判情報(およびITCへの申立て情報)をオープンデータとして公開していて初めて実現できるサービスなので、やはりこの点は米国は一歩先を行っていると言わざるを得ません。

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事務所のファイルバックアップ方式を見直しました

ちょっと前にGoogle Driveの中身が全部消えてしまって(操作ミスかシステム障害かは不明)Googleの中の人に戻してもらうという薄氷の思いをしたので、事務所のパソコンの重要ファイル類のバックアップ方式を見直すことにしました。

単にディスクの障害だけではなく、オフィス全体の災害(火事等)、オペミス、マルウェア、システム障害等にも対応できることが目的です。

以前からミラーディスク(Windowsの標準機能)は使っていますし、真に重要なファイルはGoogleドライブに同期しているので、仮に、事務所のPCが燃えちゃったなんてことになっても大丈夫なのですが。問題は、操作ミスやマルウェアへの対応です。Googleドライブ上のファイルは一定期間内であれば元に戻せるのですが、「半年前のファイルがない、間違えて消しちゃったかも(あるいはマルウェアに消されたかも)」という事態には対応できません。また、Googleドライブは指定した1個のディレクトリ下のファイルしか同期できない(この仕様は不便)ので、メールボックスだとかインターネット出願ソフトのファイルは同期対象にできません。

ということで、まずはバックアップ専用にNASを買いました。一昔前だとSOHO用NASと言えばBuffaloとIODATAのほぼ二択でしたが、最近はSynologyやQNAPなどの台湾メーカーが提供するNASキット(HDDは別売)が定番的選択肢になってます。HDD障害が起きたときに”純正”の高い交換ドライブ買わされるのはいやなのでNASキットを採用することにしました。価格コムで売れ行きナンバーワンのSynologyのDS216jにHDDはこれまた定番のWD Red 3TB×2のミラー構成としました。Synologyは日本語マニュアルとかがほとんどないので、ある程度詳しくないと大変かもしれませんが、なかなか使いやすいです。

バックアップソフトはSynologyに付属しているのを使ってもよかったのですが、定番のAcronis TrueImageを買いました。これで、重要ファイルを毎日NASに差分バックアップする構成とします。

さらに、金だけ払って使いこなせていなかったAmazon Unlimited Driveも使うことにしました(Acronisのバックアップ用クラウドは従量制なので検討対象外)。SynologyのNASはアドオンを使ってAmazon Driveを含むクラウドに同期できるのですが、その際に、一方向同期が可能です。すなわち、NAS側でファイルを消してもクラウド側には残す設定にできます。Amazon Unlimited Driveはその名の通り容量無制限なのでファイルを消さないで溜める一方の設定にしました。

なお、Amazon Unlimited Driveはかなり帯域が絞られているので、PCから直接使うといつまでたってもバックアップが終わりません(これが、今までうまく使えていなかった理由です)。いったんNASにバックアップしてからPCは電源オフ、夜中にゆっくりとNASからAmazon Unlimited Driveに再バックアップという方式が良いと思います。

これにより、直近3カ月くらいまではNASから任意の時点まで遡ってリカバリー、それ以前であれば、Amazon Unlimited Driveで無限に遡ってリカバリー可能な状態となりました(ただ、帯域制限によりAmazon Unlimited Driveからのリカバリーは相当の(数日単位の)時間がかかかると思います)。

出願関連の書類が消える洒落にならない状況になりますので、そのリスクを考えれば、妥当な投資だったかと思います。

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