2012年もがんばりますよ

あけましておめでとうございます。関係者の皆様、昨年度はいろいろとお世話になりました。また、ブログ読者の皆様も愛読ありがとうございます。今年もがんばっていきたいと思います(マグロと同じように泳ぎ続けていないと死ぬのが自営業(会社オーナー)の宿命です)。

以下に本年度の業務内容の展望などを書いておきたいと思います。

ITリサーチ/コンサルティング

なかなか特許系との仕事のバランスが難しくなってきてますが依然としてメインの仕事であります。今年のフォーカスは、昨年度と同じく、ビッグデータを含むデータ・マネジメント系、クラウドを含むインフラ系、そして、エンタープライズ・ソーシャル、そして、もう少し先の先進動向いろいろという感じになると思います。開発系、業務アプリケーション系は体力的余裕がないので手を出さない予定。案件のタイプとしては、ベンダー様向けのマーケティング戦略立案、ホワイトペーパー作成、企業内リサーチ部門の報告書作成支援、社内向け研修での講師などがジャストフィットです。

媒体への寄稿については、昨年の末にZDNetにビッグデータ、日経BP特設サイト「常勝経営」にITと経営についての短期連載寄稿をさせていただきました。両者ともさすがにエスタブリッシュされた媒体だけあってSEO効果はものすごく、一時期にはGoogleで「ビッグデータ」と入力するとトップ4項目が全部私の書いた記事という状態だったこともありました(今はちょっと落ち着きましたがそれでも1ページ目に4つとも載ってます)。これは弊社にとっても媒体様にとっても、そして、取材対象のベンダー様にとってもかなりナイスな状況ではあります。

ということで、寄稿関係は(結構スケジュール的にしんどいのですが)積極的にこなしていこうと思います。講演も同様です。最近は企業内のプライベートセミナーの案件が多く、あまりブログ等でオープンにしてはいないのですが、パブリック、プライベート問わず、基本的に講演・寄稿の仕事は断らないという方針でやっていきます。

特許出願代理(ソフトウェア特許)

今年はソフトウェア特許分野の仕事のウエイトをできるだけ増やしていきたいと思っています。4月1日から施行される特許法改正により、発明の内容を自分で公表したり製品として販売したりしてしまっても6か月以内であれば出願が可能になります。これは特にスタートアップ企業や個人事業主の方に取っては朗報です。実際に販売やサービス提供を開始して、ビジネスとして行けそうだと判断できてから特許出願することも可能になったわけです。また、後で詳しくブログを書きますが、米国の特許法改正も日本のスタートアップ企業/個人事業者に有利になっています。

なお、個人事業者の方には、初期料金を安くした(その分、成功報酬を高くした)料金体系を提供しています。特許化できるかどうかまだよくわからない段階でもローリスクで出願することが可能です(参考ブログエントリー)。

特許調査(ソフトウェア特許)

特許系の仕事としては実はIT関連特許調査の方が多くなってます。単に文献を検索してリストするだけではなく、(元)ITエンジニアとしての知見により特許の技術的中身にまで突っ込んだ分析を提供します(この手のタイプのサービスを提供できるところはそんなに多くないのではと思っています)。

Appleのエグい積極的な特許攻勢により、Androidアプリケーションのデベロッパーにも影響が及ぶ可能性が出てきました。また、AppStoreやAndroid Marketでソフトウェアを米国にも販売するデベロッパーにとっては、米国のパテント・トロールの動きを知っておくことも重要です。正直、この分野では一般メディアの情報はほとんど役に立ちませんので、スペシャリストしての弊社の差別化要素としてプッシュしていきます。

商標出願代理

あまり宣伝していないですが、商標出願代理業務も継続的にやっております。商標登録は特許と違いどちらかと言えば効率優先(もちろん、他の権利者との交渉とか取引実情の調査などがからむとかなりややこしくなりますが)なので、必要にして最小限のサービスをリーズナブルに提供することにフォーカスしています。まもなく料金表を会社サイトに掲載しますが、現在の料金体系としては、1区分の場合の出願手数料が25,000円(成功報酬はありません)、万一登録できなかった場合は出願手数料返金というシステムになっています。特許庁料金も含めて58,900円から商標登録が可能です。

また、海外事務所との提携により、海外出願(特に、中国、台湾)にも対応可能です。英語ができる事務所とダイレクトにやり取りしてますので話が早いです。中国での冒認出願(関係ない人が勝手に出願してしまうケース)が依然としてよく見られますので、防衛的に先に出願しておくことは結構重要です(参考ブログエントリー)。

商標については特許とは異なりIT分野限定ではないですが、IT分野の商標であれば、業界経験長いですのでネーミングに対するアドバイスのようなことも可能です。

産業翻訳

業界にいる方はわかっていると思いますが産業翻訳の世界は結構厳しい状況です。多少日本語として怪しくても海外にアウトソースして安く済ませたいというようなケースが増えていて、そういうケースにおいて価格で勝負するのは厳しい状況になってきています。と言いつつ、品質とスピードが最重要の翻訳需要もありますので、そういうハイエンドニッチにフォーカスしていきたいと思います。あとは特許翻訳ですが、こちらは原則的に弊事務所で出願代理を行なった案件に限定して提供していく予定です。

ビジネス書翻訳ですが、昨年末にはジェフリー・ムーア氏の『エスケープベロシティ』を翻訳出版することができました(S社T様(当時)ありがとうございました)。単行本翻訳は体力的に厳しいのですが、そもそも知的作業としておもしろいですし、後に残る仕事でもありますので年1冊程度のペースで続けていきたいものだと思っております(別にS社専属ではありませんので他出版社の方もよろしくお願いします)。

個人としては

仕事以外は音楽というかジャズ(サックスとオルガン両方)に賭けていきたいです。管楽器奏者はどうしても年齢と共に体力的なハンデが厳しくなってきますのでもうあまり時間がないのであります(某所で昔の自分の演奏ビデオを見る機会があり楽器が鳴りまくってるので自分でも驚きましたが要は今は衰えつつあるということです)。ジャムセッション参加およびホストはもちろんのこと、ライブ等もできるだけやっていきたいと思います(ジャズの場合は集客が厳しいことが多いのでご興味ある方はよろしくお願いしますねw)。

twitterにも書きましたが毎日の積み重ねとしてSax基礎連30分、Organ基礎連30分、腹筋15分、ウォーキング30分、仕事に関係ない読書1時間を最低のノルマとしようと思います。加えて、ラーメンは週一まで(二郎系についてはは2週に1回)という誓いも立てております。

clノルマのチェックリストも作ってみましたw

去年の反省

去年の頭にはブログ毎日更新なんて誓いを立てたような気がしますが全然できてないですね。どうもtwitterとfacebookやってると軽いネタはそっちで済ますようになってしまいます。しかし、情報のストック化ということを考えるとブログの更新はちゃんとやらないとまずいですね。また、会社のWebサイトも全然できてません(ブログはありますけど、いわゆる業務紹介等のスタティックなページがありません)のでこれも早急になんとかしようと思っています。

とまあいろいろ書きましたが今年もよろしくお願いいたします。

カテゴリー: お知らせ | コメントする

フェイスブックのNews Feed特許を分析してみた

昨日書いたエントリー「フェイスブックのNews Feed特許が日本でも成立してしまった件」に結構アクセスが来たようなので簡単に特許の中身を解説してみます。昨日のエントリーにも書いたように比較的回避は容易な特許と思われます。

まず、前提として一般的なお話をしておきます。特許権の権利範囲は【特許請求の範囲】によって決まります。特許請求の範囲は【請求項】という項目から成り、各請求項に対してひとつの特許権が対応しています。通常、最初の請求項に一番広い範囲の発明が記載されており、以下の請求項に権利を限定した発明が記載されています。これは、万一、広い範囲の請求項が無効になった場合でも狭い範囲の請求項の方で権利行使できる可能性があるためです。

請求項には、特許権の範囲を明確化するための事項が過不足なく書かれており、また、名詞句として記載しなければいけないので、修飾関係が複雑になって大変読みにくいです。特許公報を読むときは、まずは、【明細書】の方を読んで発明の全貌を理解してから請求項をチェックするのが普通です(とは言え、明細書の方も(特に翻訳の場合)わかりにくいことが多いですが)。

特許発明を侵害しているか否かの判断には請求項に記載された構成要素(発明特定事項と呼ばれます)を全部実施しているかをチェックすることが必要です。構成要素の中のひとつでも実施していないものがあれば原則として特許権を侵害することはありません。

これを踏まえて、フェイスブックのNews Feed特許の請求項1(2011/08/05付の補正が適用されたもの)について見てみましょう。

【請求項1】
コンピュータシステムを用いたソーシャルネットワーク環境においてニュースフィードを表示する方法であって、
前記コンピュータシステムによって、ソーシャルネットワーク環境における複数の活動を監視するステップと、
前記コンピュータシステムによって、前記複数の活動をデータベースに記憶するステップと、
前記コンピュータシステムによって、1以上の前記活動に関する複数のニュース項目を生成するステップと、ここで、1以上の前記ニュース項目が、一人以上の視聴ユーザに対して提示されるためのものであり、かつ、他のユーザによって行われた活動に関係しており、
前記コンピュータシステムによって、前記他のユーザの前記複数の活動の少なくとも一つに関連したリンクを前記複数のニュース項目の少なくとも一つに結びつけるステップと、ここで、前記リンクは、或る視聴ユーザが該リンクが結びつけられた前記ニュース項目の主題である活動に参加できるようにするものであり、該リンクが結びつけられた前記ニュース項目の主題である活動とは、該或る視聴ユーザが当該他のユーザの活動に係るグループやクラス、クラブと同じ活動に係るグループやクラス、クラブに入会することからな り、
前記コンピュータシステムによって、一組の視聴ユーザに対して、前記複数のニュース項目へのアクセスを制限するステップと、
前記コンピュータシステムによって、前記一組の視聴ユーザ中の少なくとも一人の視聴ユーザに対して前記複数のニュース項目中の2以上のニュース項目からなるニュースフィードを表示するステップと
を含むことを特徴とする方法。

頭から読んでもわけがわかりませんので構成要素に分解して見てみましょう。6つのステップからなる方法の特許であることがわかります。原則的にはこの6つのステップのすべてを実施している場合にのみ、この請求項1の特許を侵害することになります。

以下、大雑把に分析します。なお、この分析をするために私は明細書の中身を(ざっとですが)読んでます。いきなり、上の請求項の情報だけから以下のステップに落とし込んでいるわけではありません。

ステップ1: SNSにおけるユーザーの活動の監視(ソーシャルネットワーク環境における複数の活動を監視するステップ

ステップ2: 活動をDBに保管(前記複数の活動をデータベースに記憶するステップ

ステップ3: 他のユーザーに表示するニュース項目を生成(複数のニュース項目を生成するステップ

ステップ4: ニュース項目にリンクを対応づける(前記他のユーザの前記複数の活動の少なくとも一つに関連したリンクを前記複数のニュース項目の少なくとも一つに結びつけるステップ

ステップ5:ニュース項目をアクセス制御する(一組の視聴ユーザに対して、前記複数のニュース項目へのアクセスを制限するステップ

ステップ6: 特定ユーザーに対してのみニュースフィードを表示(前記一組の視聴ユーザ中の少なくとも一人の視聴ユーザに対して前記複数のニュース項目中の2以上のニュース項目からなるニュースフィードを表示するステップ

ここで、ステップ1,2,3,5,6は、おそらく、ニュースフィード的な仕組みを作ろうと思うと必須のステップのように思えます(たとえば、ユーザーの活動を監視せずにニュースフィードを実現することは不可能なのでステップ1は必須)。ポイントはステップ4ということになりますのでもう少し詳しく見ていきます。

ステップ4では大きく2つの限定がかかっています。

第一に、「前記ニュース項目の主題である活動とは、或る視聴ユーザが当該他のユーザの活動に係るグループやクラス、クラブと同じ活動に係るグループやクラス、クラブに入会すること」となっているので、この特許がカバーするのはニュースフィードのうち、他のユーザーがグループ(コミュニティ)に参加したという情報を表示するケースのみということになります。

第二に、「前記リンクは、或る視聴ユーザが該リンクが結びつけられた前記ニュース項目の主題である活動に参加できるようにするもの」と書いてあるので、ニュース項目のリンクをクリックするとその項目に関連したグループ(コミュニティ)に参加できるようになっているということです(普通のUI設計者であればこういう方法にするでしょう)。

と言うことで、たとえば、twitterのアクティビティタブとの本特許の関係を考えてみると、そもそもtwitterにはコミュニティの概念がないので、侵害しないようにも思えますが、特定ユーザーのフォローが「他のユーザの活動に係るグループやクラス、クラブと同じ活動に係るグループやクラス、クラブに入会すること」と解釈できないこともないのでちょっと微妙なところです。いずれにせよ、「お気に入りに登録しました」、「リツイートしました」の表示だけであればこの特許を侵害することはないと思われます。

仕事納めもしてちょっとヒマなのでwさっくりと分析してみました。もちろん、有償サービスとしてならばもっと厳密な分析・鑑定も行ないますので、ソフトウェア特許関連の侵害調査・先行技術調査のご用命がありましたらよろしくお願いします(上のメニューのCONTACTあるいはkurikiyo[アットマーク]techvisor.jpからお問い合わせください)。

カテゴリー: ソーシャル, 特許 | コメントする

フェイスブックのNews Feed特許が日本でも成立してしまった件

フェイスブックのNews Feed機能に関する特許が米国で成立してしまった件についてはだいぶ前(2010年3月)にこのブログでも触れましたが、同じ特許が日本でも拒絶査定不服審判の後に11月18日に成立してしまいました(特許4866463号「ソーシャルネットワークのユーザについてのニュース配信を動的に提供するシステムおよび方法」)。

以前のエントリーでは「ここでいうNews Feedとは一般的なニュース配信のことではないよ」というような説明をしましたが、フェイスブックがある程度普及した現在ではわざわざこのような説明をする必要はないでしょう。要は自分のフレンドあるいは自分がフォロー(サブスクライブ)しているユーザーのアクションや状態変化(誰それさんとフレンドになりました等々)を時系列で表示していく仕組みのことです。フェイスブックだけはなく、twitter(最近追加されたアクティビティタブがまさにこれ)、ミクシィ、LinkedIn等々、SNSであればほぼ確実に実装されている機能です。なお、他のユーザーが入力したメッセージを時系列で表示する機能(twitterで言えばタイムラインの本来の機能)はこの特許には含まれていません。

まだ特許公報がIPDL(特許情報図書館)に上がっていないのですが、以下の方法を使えば、補正後の最終的な公報の内容が把握できます(結構ややこしいですけど)。

  1. IPDLのメインページ(http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)から「特許・実用新案検索」を選択
  2. 「11.審査書類情報」を選択
  3. 「種別」を「特許出願」にした状態で「番号」に本特許の出願番号である2009-523823を入力
  4. 審査の経過書類が見られます(ブラウザによってはエンコードをShift-JISにする必要あり)。特許公報そのものは見られないのですが手続き補正書(計3件)の内容がわかりますので、公開公報にこの補正を適用したものが最終的な特許公報ということになります。

ざっとみた限りでは補正によってもあまり範囲が限定されておらず、記載要件の不足部分に対応する補正を行なっただけで、ほとんど元々のアイデアそのものが特許化されているように見えます。もちろん、特許権を侵害するかどうかをチェックするために対象システムの内部実装にまで立ち入って、特許発明との比較を行なう必要がありますが、ちょっとそれはこのブログの範囲を超えています。(11/12/28追加:と言いつつ翌日のエントリーでかんたんな分析を提供していますのでこちらも合わせてお読みください)

フェイスブックが特許権をすぐに行使することはないと思われますし、回避も比較的容易(twitterのケースであればアクティビティタブをやめればよい(どうせ元々評判良くないですしw))ではありますが、SNS提供事業者の方はちょっと気にはしておいた方がよいように思えます。

カテゴリー: ソーシャル, 特許 | 1件のコメント

拙訳ジェフリー・ムーア『エスケープ・ベロシティ』絶賛発売中です

『キャズム』、『ライフサイクルイノベーション』等、ハイテク業界の戦略関連本を数多く著わしている米国のコンサルタント、ジェフリー・ムーア氏の最新作『エスケープ・ベロシティ』を翻訳しました。Amazon等で絶賛発売中です。

『ライフサイクルイノベーション』の出版直後にTeradataのイベントで基調講演をしたムーア氏と立ち話をする機会がありました(関連ブログエントリー)が、その時は同氏は「今、『Web2.0企業のためのキャズム本』を書いている」と言っていました。しかし、結果的にそういう方向性ではなく、ハイテク業界の大手ベンダーにフォーカスしたビジネス戦略本というムーア氏の元々の得意分野での書籍になりました。

『エスケープ・ベロシティ』というタイトル(原著タイトルも同じく”Escape Velocity”)ですが、脱出速度(別名、第二宇宙速度)という宇宙工学の用語であり、ロケットが地球(惑星)の重力圏を脱して宇宙空間に飛び出していくために必要な速度のことです。これを「過去のしがらみ」や「業界の常識」から離れた新たな差別化を実現するために必要な戦略にたとえたわけです。

脱出速度を超えなければどれだけ運航しても地球を回り続ける(そして、最後には地球に衝突する)ように、企業が現状維持の安全策を取っているだけでは決して差別化は達成できない。差別化達成のためには脱出速度に相当する「大胆な賭け」を行なわなければならないというアナロジーであります。

本書の位置づけですが、今までのムーアの著作の集大成的内容になっています。その割にはページ数がそれほど多いわけではないので、ちょっとはしょり気味のところもあり、ムーアの過去の著作を一通り読んだことがないとちょっと理解が難しい箇所があるかもしれません(翻訳上もがんばりましたが原文にない言葉をあまり勝手に付け足すこともできないのでつらいところです)。

ということで、何回かに分けて本ブログで内容の解説を書くことにします。また、本書(日本語翻訳版)のfacebookページも作ってみました(イイネ!よろしくお願いします)。本読んでよくわからないところがあった場合はブログ記事にコメントしていただいてもよいですし、facebookページのWallに書き込んでいただければ翻訳者としてできる範囲で回答します。同じような質問が多いようでしたらまとめてムーア氏に直接聞いてみるかもしれません。

さて、脱出速度の話はあくまでもアナロジーでありフレームワークではありません。脱出速度達成のために本書で紹介されている重要なフレームワークが「力の階層」(Hierarchy of Powers)と呼ばれる考え方です。

「力の階層」とは、戦略立案をレイヤーごとに分けて考えましょうということであり、以下のようになっています。

  1. カテゴリー力
  2. 企業力
  3. 市場力
  4. 製品力
  5. 実行力

死にかけのカテゴリー(たとえば銀塩写真)で強力な製品を開発してもあまり意味がないように、脱出速度達成のためには各階層がシナジーを生むように全体的な戦略を立案する必要があります。そのためにはどうすればよいかというフレームワークとヒントを提供するのが本書の主な目的です。

「力の階層」についてムーア氏本人が講演した映像を掲載します(許可がもらえたら日本語キャプション付けてみる予定)。

各階層について今後このブログで簡単に説明していくことにします。詳しく知りたい方は本を買ってくださいね(笑)。

カテゴリー: 経営戦略, 翻訳 | コメントする

Appleが特許戦争でHTCに限定的勝利

12月19日(米国時間)、2回の延期の後ITC(米国国際貿易委員会)がHTCのAndroidスマートフォンがAppleの特許権を侵害している旨の決定を行ないました(参照記事)。ITCは特許庁ではないので米国内での販売を差止めたり、損害賠償を命じたりする権限はありませんが、米国への輸入の差止め権限がありますので、米国外のメーカーにとっては重大です。

今回のAppleの訴えでは最終的に2件の特許が関係していました(最初の時点では10件)が、今回の決定ではそのうちの1件の侵害のみが認定されました。その1件とは米国特許5,946,647号、本ブログでも過去に「アップルの対HTC訴訟における特許を分析する(1)」で分析した特許、テキスト中の電話番号ぽい文字列や住所ぽい文字列を自動的に識別してリンク化するというアイデアの特許です。この機能は、AndroidのLinkifyというクラスで実現されているようなので、他のAndroid端末もAppleに訴えられれば同じ結果が出るでしょう。

とは言え、Linkifyの機能をはずせばこの特許は回避できます。禁輸措置が取られるのは2012年4月19日からだそうなので、それまでにLinkify機能をはずしたAndroidの別バージョン(米国輸出専用のビルドでもよい)を作れば禁輸を回避できる可能性が高いです(上記参照記事の元記事でもHTCは「すぐに当社のすべての電話からこの機能を削除する」と言っています)。ゆえに、HTC(およびその他のAndroid機器メーカー)にとっては致命的というほどではありません。しかし、ユーザーは不便を強いられてしまいますね(Linkify機能を復活させるアングラパッチを作る人も出てきたりしそうです)。

今回の決定に関係していた2件の特許のうちのもう一方、米国特許6,343,263 “real-time signal processing system for serially transmitted data” はマルチメディアOSのアーキテクチャーに関連するかなり基本的な特許だったので、こちらの方の侵害が認定されていたら、Android陣営にとってはかなり厳しい状況になっていたわけですが、その最悪のケースは避けられました。

で、そのもう一方の特許の方ですが、このブログで分析内容を書こうと思って書けてませんでした。もちろん公報は読んでおり、その内容も一応は理解しているつもりなのですが、どこに特許性があるのかよくわからなかったからであります。こちらの特許については、今回のITCの決定で範囲外とされたことで、緊急度は減りましたのでお正月にでも書くかもしれません。

カテゴリー: ガジェット, 特許 | コメントする