何かのきっかけで「ネスプレッソ海賊版!?「紅茶カプセル」を飲んでみた」という記事を見て、「あれ、ネスプレッソのカプセルは特許で保護されてないのかな?」と思いました。ご存じのようにネスプレッソはコーヒー粉のカプセル方式により安定しておいしいエスプレッソ等を作れるのですが、その一方で、カプセルはネスレから直販でちょっとお高めの純正品を買うしかなかったからです。お高めの価格を維持できるということはインクジェット・プリンターのカートリッジと同じパターンで特許によって互換品を排除している可能性が高いです。
ちょっと調べてみると普通にWikipedia(英語の方)に「ネスプレッソは特許権で保護されているが、その特許は2012年から権利期間満了し始める」と書いてあります。ネスレ社の日本国内の特許を調べてみたところ、結構な数が登録されていますが、ネスプレッソのカプセルそのものの特許はたぶん2784293号だと思います(権利者を「ネスレ」ではなく旧表記の「ネッスル」としてサーチするのがポイントです)。この特許の出願日は1992年5月7日なので、2012年5月7日で権利が消滅しています。したがって、冒頭の記事のカプセルも海賊版ではなく、合法的な互換品である可能性が高いと思われます(他にも関連特許権が残っている可能性があるので絶対ではないですが)。
さらに、ネットで検索してみると今はネスプレッソ互換カプセルはわりと普通に売ってるんですね。中身を自分で詰められるカプセルもあるみたいです(まさに、インクジェットのカートリッジみたいです)。ジェネリック医薬品と同じで最初に発明した会社の特許権が満了したので、競合他社が自由に同等製品を作って売れる状態になっているのではないかと思われます。
実は、自分のオフィス用にエスプレッソ・メーカーを買う時にネスプレッソも検討したのですがカプセル代が高いのでやめて、普通の粉方式のものにしたのですが、普通のエスプレッソ・メーカーってなかなか難しく3回に1回くらいでしかおいしく作れません。また、キッチンがコーヒー粉でひどく汚れます。もし、合法的な互換カプセルが安く入手可能になるのならばネスプレッソにしておけばよかったかなあとも思いました。
特許はあくまでも一定期間に限って独占権を提供する制度です。こうすることで、イノベーターが先行者利益を得て、研究開発投資を回収しつつ、業界全体もイノベーションの恩恵を受けられます。ネスレもネスプレッソ特許では十分投資を回収できたのではないでしょうか?(まあ、ネスレに十分回収しましたよねと聞いても「はい」とは答えないでしょうが)
ちなみに、コーヒーメーカーのような分野であれば20年くらいの権利期間もまだ妥当とは思いますが、ソフトウェア分野で20年(ドッグイヤー換算140年)はほとんど永遠に近いので長すぎではないかという議論もあるとは思います。
ディスクレイマー: 特許についてはブログネタとして簡単に調べただけなのでネスプレッソのカプセル関連で、別の特許権が残っている可能性はあります。個人として互換カプセルを買うことで特許権侵害になることはないですが、業として互換カプセルの輸入等をして差止等の権利行使をされた場合の責は負いかねますのでご了解願います(商売としてやるのならばちゃんとお金をかけて調査願います)。