苦労して集めたデータをパクられたらどの法律が守ってくれるのか?

あなたが市場調査会社をやっているとします。苦労して(お金もかけて)詳細な調査データ(たとえば、タブレットの機種別売上)を調べて、それをレポートにしてクライアント企業に売ってビジネスにしていたとします。ところがある日、その市場調査データと同じデータが別の会社によって販売されていることを知りました。さて、あなたはそれに対して何ができるのでしょうか?

もちろん、その会社にクレームを言うことはできます。まともな会社なら信用問題になるので販売を止めてくれるでしょうが、残念ながらまともな会社でなかったとします。

著作権侵害で訴えることができるでしょうか?残念ながら、著作権はデータ(事実)そのものには適用されません。レポートの文章や図表をパクられたのであれば、著作権侵害を問えますが、データだけであれば著作権法の範囲外です。

ある程度著作権法を勉強された人は「データベースの著作物」というのがあるではないかと思われるかもしれませんが、「データベースの著作物」として守られるのは「情報の選択又は体系的な構成」の創作性だけです(たとえば、職業別電話帳の分類方法など)。データそのものに保護が及ぶわけではありません。

当然ながらデータは物理的なものではないので窃盗罪は成立しません。また、不正競争防止法(営業秘密の不正取得)も問えません。世の中に広く売っているデータである以上営業秘密ではないからです。

契約違反はどうでしょうか?レポートを買ったクライアント企業自身が勝手に再販しているのであれば、利用規約違反になるでしょうから、契約に従った措置を取れます。ただ、契約が有効なのは合意した当事者だけですから、第三者がパクリデータを売っているのであれば契約ではどうしようもありません。たぶん、その第三者にデータを横流ししたクライアントがいるはずなので、それを見つけ出してその会社に横流し行為についての契約違反を問うしかありません。ただ、誰が横流ししたのかを探すのは現実には困難と思われます(なお、企業間の契約の話なので警察は動いてくれません)。

一般不法行為(民法709条)はどうでしょうか?これは、ケースバイケースですが、裁判官がこれは理不尽であると考えてくれれば認められる可能性はあります(たとえば、自動車データベース事件)。ただし、通常は差止め請求は認められませんし、損害賠償額は原告が立証した損害額だけです。

ということで、日本の現在の法制度ではデータそのものに対する保護は非常に薄い状態です。データをあまり強く保護するのも公共的な観点から問題ですが、保護が全然ないのはやはり困ります。

たとえば、クリエイティブ・コモンズが機能するのは、著作権を公衆に対してライセンスする構造になっているからです。こうなっていることで、たとえば、Attributionの指定を無視して他人の作品に勝手に自分の名前を付けて公開するような不届き者を排除できます。

今の日本で、広く流通させたいデータ(広義のオープンデータ)に対してクリエイティブ・コモンズ的な仕組みを作ろうという動きがありますが、著作物ではないデータの場合は、そもそも公衆にライセンスする元になる権利がないので、単なる「お願い」レベルの話になってしまいます。結果、重要なデータは秘匿化しない限り守れないというジレンマ状態になってしまいます。

ビッグデータ/オープンデータに向かう流れの中でデータそのものを新たな「知財」として利用を促進していく上ではこれは結構大きな問題と思います。

(続きます)

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