#やや賞味期限切れのネタですみません(昨年書きかけて途中で忘れてましたw)
ミクシィが「チェック」「イイネ」「つぶやき」等を商標登録出願していることが話題になっています(参考記事)。なお今調べてみたら、「つぶやき」は2010年11月5日付で既に登録されてました(登録されてからネット(特許電子図書館)で検索可能になるまで多少のタイムラグがあるので上記記事には間に合わなかったものと思われます)。これにより、「つぶやき」というネットサービス名称はミクシィが独占的に使用可能となりました(実際に同社が他社を排除するかどうかは別)。
ネット世論ではけしからん論が一般的になっているようですが、商標は早い物勝ちが基本ですし、ブランド戦略として防衛的に出願する(他社に取られないようにする、あるいは、誰も登録できないことを確認する)こともありますのでそれほど非難されるべき話ではありません(たとえば、阪神球団に縁もゆかりもない人が「阪神優勝」を商標登録しようとしてしまうのとは訳が違います)。
商標の機能である自他商標識別機能を発揮できないケース(たとえば、PCに対して「パソコン」という商標を出願した場合)、あるいは、一社が独占することが妥当でないと特許庁が判断した場合には、当然ながら商標出願は拒絶され登録されることはありません。ただ、特許庁の審査官にも見落としはありますし、グレーゾーンもありますので必ずしも拒絶されるとは限りません。また、拒絶する場合には、商標法の規定に従った拒絶理由が必要なので何となくまずいんじゃないかというだけでは拒絶されません。上記の「つぶやき」は正直グレーなところではないかと思います。
万一登録されてしまっても事後的に商標権をなくすこともできます。登録(正確には公報発行)から2ヶ月以内であれば異議申立を行なうことができます。それ以降であれば、無効審判を請求することができます。ただし、両方とも料金がかかりますし、特に、無効審判は利害関係者(商標権侵害で訴えられている、同一・類似の商標で商売しようとしている等)でないと請求できないのでちょっとハードルが高いです。現実には、特許事務所に依頼することになると思います。
一般に、業界で普通名詞化しているもの、あるいは、特定の人や企業と密接に結びついているものが商標登録出願された場合(後者については当然ながら本人自身が出願する場合や本人の許可を得ている場合を除く)等々、これを一社に独占させちゃまずいんじゃないという商標登録出願が行なわれた場合、やるべきことは、登録されるまでの審査段階で情報提供制度を利用することです(特許庁に電凸しても意味なし)。
情報提供制度とは、商標法ではなく施行規則で運用として定められた制度であり、審査段階で特許庁の審査官に対してこの商標は登録すべきでないとという参考情報を提供するるものです(特許庁の参考文書(PDF))。情報提供の料金は無料で、匿名で行なうこともできますが、あくまでも参考情報なので採用してくれるとは限りません。しかし、単に「この商標は登録したらまずい」ではダメで根拠条文と証拠を提示しなければなりませんので商標法の知識がある程度ないと書類作成は難しいかと思います。特許事務所にお願いすれば手数料数万円程度で対応してくれると思います。
それから仮に「チェック」「イイネ」が商標登録されたとしても、これらの言葉がミクシィの許可がないと使えなくなるわけではありません。商標、つまり、商標やサービスの出所を表わす名称やマークとして使えなくなるだけです(これについては当ブログのエントリー『【保存版】商標制度に関する基本の基本』でも書きました。)
ポイントを引用すると、
たとえば、ビッグマックはマクドナルド社の登録商標ですが、別に日常会話やウェブ上で「ビッグマックおいしいねー」とか書いたり、言ったりするたびにマクドナルドの許可がいるわけではありません。許可が必要なのは、商売としてビッグマックというハンバーガーを作ったり、売ったりすることです(もちろん、マクドナルドが正規のライセンサー以外に許可することはないでしょう)。
ということであります。ということで、たとえば普通名詞として「つぶやき」を使う分にはミクシィの権利は及びません。とは言え、ミニブログ系のサービスに「つぶやき」という名前を使う場合にミクシィの許可が必要というのは正直ちょっと微妙なところであります(ツイッター社の許可が必要というならまだ納得できますが)。
追加情報(11/11/11): タイミング良く特許庁サイトに「商標登録出願に関する情報提供について」という記事が上がりました(こちらはPDFではありません)。
ピンバック: 【IP】mixiが「チェックイン」と「イイネ」を商標登録。【Trademark】 | TAKA@P.P.R.S TECH!!!!