アップルとの特許戦争では不利な状況にあったサムスンですが、米国時間の6月4日、ITC(米国国際貿易委員会)により、iPhoneとiPadの旧機種の米国への輸入・販売禁止命令という有利な決定を勝ち取りました(参照記事1(ロイター)、参照記事2(MacRumors))。
対象となった機種は、iPhone4、iPhone 3GS、iPhone 3、Pad 3G、iPad2 3G(いずれもAT&T向けモデル)です。なお、命令は直ちに有効というわけではなく、今後オバマ大統領による審査もありますし、アップルによる不服申立のプロセスもあります。アップルにとって致命傷ではないですが、厳しい措置と言えます。なお、今後、仮に裁判所においても特許侵害が認定されて、過去の行為に対する損害賠償というようなことになると、アップルにとってはさらに厳しい状況になります(注:ITC は輸出入を司る行政機関であって裁判所ではないので損害賠償を命じる権原はありません。)
この特許(US7,706,348)ですが、CDMA間連の標準必須特許(SEP)のようです。もちろん、アップル側はFRANDの抗弁をしているわけですが、ITCには「FRAND宣言をしていることは、限定的な差止め命令を妨げるものではない」と一蹴されているようです。ちょっと前の米国の地裁判決や多くの識者の意見に反するところであり、意外な判断と受け止められているようです。
なお、この米国特許の元になったPCT出願(国際公開番号WO0103366)は日本にも国内移行され登録されています(3987508号「通信システムの伝送率情報復号化装置及び方法」)(米国特許と権利範囲が同じとは限りません)。特許の中身については私は専門外なのでよくわかりません。
なお、この国内特許に基づいて日本で訴訟が行なわれているかどうかは、日本では裁判情報がほとんど公開されないため、当事者が発表しない限りわかりません。