批評のためにブログでCD音源を引用したらどうなるのか?

日本の著作権法における権利制限(許諾なしに利用できること)のひとつとして「引用」があります。

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

ここで、「公正な慣行」とは、(1)正当な範囲内であること、(2)本文と引用部分主従関係が明確であること、(3)引用部分が明確になっていること、などであるとされています。(加えて48条による出所の明示の要件があります)。

これをそのまま解釈すると、ブログ等でヒット曲の歌詞の一部を引用して批評したりすることは問題ないように読めます。しかし、過去においては、JASRACは管理曲の歌詞の無断掲載をたとえ一部であっても認めない方針でした(昔のレコードのジャケットに書いてあった「無断で録音することを禁じます」と同じで法律的な根拠がない表示であったと言えます)。

しかし、「いつの間にかJASRACの「引用」の定義が変更されていた件について」というブログ記事によれば、JASRACのWebサイトのFAQが変更され、上記の著作権法上の要件に合致するようであれば歌詞も引用できるとの方針に変わったようです(いつ変わったかは不明)。

(旧)部分的なご利用であってもその曲と特定できる形でのご掲載であれば、一般的には許諾が必要な利用となります。

(新)歌詞の一部の引用については、著作権者の許諾を得ることなく利用することができます。

もちろん、歌詞をほとんど全部掲載して、最後にちょこっと自分の感想を書くというようなのは公正な慣行に合致しているとは言えず論外ですが、一部を引用して感想を書くという小説等であれば昔から普通に出来ていたことが歌詞に対してもできる(今までも法解釈的には問題なかったわけですが)ことが明らかになったのは喜ばしいことです。

ところで、上記の32条の規定は、102条1項においてレコード製作者の著作隣接権(通称、原盤権)にも準用されています。

ということは、CD音源の一部をブログ、インターネット放送、投稿動画等で引用して、「このサビ最高」といった批評や、この曲の出だしはこの曲が元ネタになっているのではというような研究成果を書く(言う)のも問題がないように思えます(実際にやってレコ協に怒られても責任は持ちませんが)。

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