独立以来、弁理士、ITアナリスト、翻訳を収益の3本柱としてやってきたわけですが、翻訳仕事(特に産業翻訳)は、市場環境の変化により条件的にどんどん厳しくなってきたので控えめにしています(もちろん、ビジネス書翻訳、特許翻訳、および、超特急や高品質を求められる付加価値の高い案件については継続的に受けています)。
と言いつつ、ちょっと前に、メールでイギリスの翻訳エージェントから産業翻訳の特急案件の依頼が来て、レートもそれほど悪くない(30分仕事で5,000円くらい)し、その時はヒマだったのでお小遣い稼ぎとして受けてみました(大昔に何社かエージェントに登録してたのでそのうちの一社かと思ってましたし、過去に同じようなパターンで仕事を受けたこともあったので)。その後、その会社から似たような案件を何件か受けて、支払サイクル(1カ月後)が来たので請求書を出しましたが、梨のつぶてになりました。
むむっと思って調べると、思いっきり詐欺だったようです(翻訳詐欺情報サイトに載ってました orz )。ちなみにメアドはwr.linguistics.trans @gmail.comです。Gmailである時点で怪しいのに気づくべきでした(だけど、正規のエージェントでもGmail使ってるところはあるんですよね)。
会社名も正規のもので、担当者名もその会社の実在の人物のもので、メアドだけが違う、要はなりすましです。前述の詐欺情報サイトによると本拠地は中国らしいです(そういえば、英国にいるはずなのに時差関係なしにメールが来るので「どこに住んでるのか?」と聞いたら「イギリスに住んでるけどアジア担当なのでアジア時間に合わせて仕事してる」と返事が来てましたね)。
私の場合は数時間分の作業が無駄になっただけですみましたが、翻訳仕事をメインでやられている方はご注意ください(私は時間がなくて受けてないですが英日の大型の案件も来ていたので、誰か別の日本人翻訳者が被害に遭っている可能性が高いと思われます)。
支払サイクルを長めにしておいて、詐欺情報が公開されると、名前を変えてまたすぐに似たような詐欺を続けるのでしょう。まあ、なかなか防御しにくいですね(実績がないところから受けないことにするといつまで経っても新規チャネルが開拓できないですし)。フリーメールは怪しいとは言っても前述のとおり、正規のエージェントでもGmail使っているところはあります。せいぜい会社に電話をかけて、なりすましでないことを確かめるくらいでしょうか。
追記: いろいろと調べてこの詐欺スキームの全貌が理解できました。
(1)公開されているリアル翻訳者のレジュメのメアドだけ変えてリアル翻訳エージェントに登録して仕事を受ける
(2)受けた仕事をなりすまし翻訳エージェントを通じて、別のリアル翻訳者にそのまんま振る
(3)リアルの翻訳者の仕事をそのままリアル翻訳エージェントに納品して料金をがめる
ということのようです。翻訳原稿にはクライアントの社名が入ってたりしますが、クライアントはリアル翻訳エージェントに仕事を投げて成果物を受け取り、リアル翻訳エージェントは実在のフリーランス翻訳者に仕事を投げて成果物を受け取っているとしか思っていないので詐欺師を突き止めるのは結構面倒そうです(だからこそこのスキームがはびこっているのだと思います)。
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