特許更新料期限徒過の回復における注意点

弁理士職業賠償保険の事例として挙げられることが多い、特許更新料納付の期限徒過ですが、回復が可能になったのでだいぶ気が楽になりました(手数料が212,100円とバカ高ではありますが)。また、自分で管理していたお客様から期限徒過したけど何とかならないかと相談された時にも対応可能です。

特許更新料の場合には追納期間の期限徒過の回復ということになりますので、倍額特許料+回復手数料ということで結構な金額が必要になります。また、回復した翌年の更新料の納付についても気を付けなければなりません。

たとえば、2024年の4月1日が特許の10年目の更新料の納付期限だったとすると、倍額期間は2024年10月1日までなので、回復は2025年の10月1日まで可能です(もちろん、故意でないこと、期限徒過を知ってから2カ月以内であることが大前提です)。気を付けないといけないのは、この例で言うと、2025年の4月1日に11年目の更新料の納付期限が来てしまうことです。

10年目の回復手続の結果を待っていると、11年目の更新料納付が追納期間あるいは追納の回復期間に入ってしまう可能性があります(2年連続で212,100円は痛いですね)。回復手続の結果待ちは結構時間がかかります。以前、PCT国内移行期限徒過で使った時は回復を認める通知が来るまで4カ月かかりました(年金の場合もそれくらいかかるのかは不明)。

これを防ぐためには、10年目の更新料を回復理由書と共に納付した直後に11年目も納付しておくことが必要です。なお、この場合に、同じ納付書で10年目と11年目を一緒に払ったりとか、インターネット出願ソフトで10年目更新料と11年目更新料を同時に支払ったすることはせず、必ず時間差を付けてくれと特許庁年金担当に口をすっぱくして言われました。

この点は特許庁のサイトにも出ていますが、同じ内容をわざわざ郵送でも通知してきました。結構間違える人が多いのかもしれません。なお、ないとは思いますが、回復が認められなかった場合は、納付済特許料も回復手数料も全額戻ってきます。

カテゴリー: 知財, 特許 | タグ: | コメントする

住所(居所)変更届における旧住所の調べ方

識別番号に紐付く出願人の住所(居所)を変更する際には、旧住所の記載が必要です。ずっと自分が代理していた出願人であれば旧住所はわかりますが、代理人が切り替わったばかりだったり、複数の代理人を使っている出願人だと、今どの住所が識別番号に紐付いているのか出願人自身もわからないことがあります。あと、在外者だと、どのようなカナ表記が当てられているかは出願人に聞いてもわからないですね。

特許庁の識別番号担当部署に電話をかけて、こちらから「識別番号xxxxには東京都墨田区yyyの住所が紐付いていますか?」と聞いてYes/Noで答えてもらうことはできますが、「識別番号xxxxに紐付いている住所は何ですか?」と聞いても答えてもらえません。プライバシーの問題でしょうか?しかし、少なくとも法人の住所であればプライバシーも何もないと思うのですが。

このような場合、書面で照会することもできるのですが、一番簡単なのはとりあえず旧住所を当て推量で書いて住所変更届を出すことです。そうすると、もし旧住所が違っていた場合には、「旧住所が違っていますxxxxに直してください」という補正指令書が出るのでそれに応じれば良いそうです。便利ではありますが、それだったらそのまま職権で修正してくれても良いのになあと思いました。

カテゴリー: 雑談, 知財 | タグ: | コメントする

国の機関による出願の特許庁手数料は完全無料です(念のため)

そこそこ長い弁理士稼業の中で初めて官庁出願(国の機関による商標登録出願)を受任しました。官庁出願は登録料不要(国から国に払うことになるため)というのは認識していましたが、出願料はどうだったかとちょっと気になったので、官庁による既存の商標登録出願を調べてみると、結構大手の事務所でも出願手数料を支払っているケースが見られます。また、審査便覧にも、特許庁の手数料計算システムにも官庁出願の手数料免除への言及はありません。ChatGPTに聞くと、「結論から申し上げますと、国の機関(官公庁)が商標登録出願を行う場合であっても、特許庁の手数料が免除される制度はなく、通常の出願料や登録料の支払いが必要とされています。」と自信満々に回答してきます。

不安になったので特許庁に聞いてみました。結論から言うと、国の機関による出願では手数料も登録料も一切不要です。根拠条文は、商標法76条3項(手数料)と40条3項(登録料)です(条文に書いてあることを、わざわざ電話で聞いてしまって申し訳なかったです)。ちなみに、特許法では195条4項(手数料)と107条2項(特許料)、意匠法では42条2項(手数料)と67条3項(登録料)です。官公庁は、弁理士に依頼せず本人出願すれば完全無料でいくらでも商標登録できてしまうことになりますが、まあ当然に稟議が必要になるので商標ゴロにならないかといったことを心配してもしょうがないでしょう。

前述のとおり、大手事務所でもこの点を勘違いして官庁出願で手数料を支払ってしまったケースは結構あるようです(補正指令に対応することで返金されるので特に実害はないのですが)。あと、法律関係の調べ物でChatGPTを信頼してはいけないことがよくわかりました。

カテゴリー: 知財 | タグ: | コメントする

電子特殊申請の落とし穴(というほどでもありませんが)

2024年1月1日より、電子特殊申請が利用可能になり、それまでは郵送によるしかなかった手続の多くがインターネット出願ソフトからPDFファイルを送ることで行えるようになりました。はっきり言ってめちゃくちゃ便利なので使わない手はないと思います。

新規性喪失の例外の手続、委任状を追加する手続補足書、マドプロ商標の中間処理、ハーグ意匠の中間処理、移転関連手続等をよく使っています。ただし、(識別番号に紐付く)住所(居所)の変更には対応していませんので今まで通り郵送で行う必要があります(そんなに対応が大変とは思えないのですが何でなんですかね?)

また、移転関係でも住所変更は問題ないのですが、譲渡手続は譲渡証書に電子署名を付加しなければならないのでちょっと面倒そうです。従来通り、捺印済みの譲渡証書原本を郵送した方が楽ちんかもしれません。この場合において、譲渡と住所変更を同時に行うパターンがあると思いますが(譲渡前にそれまでに怠っていた住所変更を同時に行うパターン)、このケースではできれば両方とも紙で出して欲しいと特許庁の登録課に言われました。住所変更だけ電子特殊申請でやると紙の書類と担当者が異なるのでかえって時間がかかる可能性があるとのことです。

また、登録住所変更を単独で行う場合には、料金支払いを口座振替でできるので便利です。収入印紙は買いに行くのが面倒くさいですし、万一、間違えて買うと返品が効かないのでやっかいです。万一手続却下になったときの返金手続も面倒です。

さて、登録関係の手続については、申請書に代理人の識別番号が書いてある場合のみに、登録通知がPDFで送られてきます(インターネット出願ソフトの「発送」で受信できます)。これは、電子特殊申請でも同じで、申請書に代理人の識別番号が書いてあればPDFで、書いてなければ従来どおり紙の郵送で登録通知が送られてきます。電子特殊申請の場合は送付票に代理人の識別番号が自動的に記載されますが、それは関係なく、あくまでも申請書に書いてあるかどうかで決まります。登録通知は、PDFでもらった方がおそらく1週間ほど早くもらえると思いますので申請書に代理人の識別番号を書いておくことが大事です(過去に使った書類をひな型として再利用すると忘れがちです)。

カテゴリー: 知財 | タグ: | コメントする

画面領域内の画像を正確にテキスト認識する方法

PowerToysというマイクロソフトが提供する公式ユーティリティセットがあります。便利な機能満載で手放せません。特に便利に使っていた機能の一つとしてText Extractorがあります。スニッピングツールのように画面上の領域を選択すると領域内の画像をOCR処理してテキスト化してクリップボードに保持してくれます。

特に、公報データがイメージ版しかない時にテキスト化してコピペしたい場合などに重宝していたのですが、OCRが文章のコンテキストをまったく理解していないようで、たとえば、for(エフ オー アール)をf0r(エフ ゼロ アール)と認識するようなアホな間違いを平気でします。テキストの修正に結構な手間がかかっていました。

代替の機能として、翻訳アプリのDeepLの「画面上のテキストの取り込み」の方が全然優秀であることがわかりました。無料版でも使えます(設定でオンにする必要あり)。選択した領域のOCRをしてくれますが、ちゃんとAIが機能しているようでスペルミスはまずありません。本来翻訳のための機能ですが、原文を正確にOCRしたい場合でも使えます。

カテゴリー: IT, 雑談 | コメントする