【夏休みネタ】「若年性冷凍庫侵入症」はグローバルな現象である

ご存じのようにコンビニやレストランの従業員がキッチンの冷凍庫に入ったり、食い物をおもちゃにしたりした写真をソーシャルメディアに投稿して、炎上し、閉店などの大騒ぎになる事案が頻発しています。自分は勝手に「若年性冷凍庫侵入症」と読んでます。

まあ正直、誰にでも若い頃には何してでも目立ちたい、羽目をはずしたいという欲望があると思います。30年以上前の私の大学時代だって、歌舞伎町の噴水に飛び込んだりとか、その他ここでは書けない悪ふざけをしたことがないとは言えません。

今日における違いは1)身内の悪ふざけだけでは終わらずソーシャルメディアに投稿することで拡散・炎上する点、2)現在でも多くの人が不快と考える食い物をおもちゃにする行為がからんでいる点かと思います。

2)については飲食店の信用問題にかかわるので重大です。低価格の飲食店ではキッチンで不潔な行為をしているのではないかというそこはかない不安が客にもあるわけですが、それをまさに狙い撃ちするような行為であるからです。従業員の不潔な行為のソーシャルメディアへの投稿は、飲食店チェーンにおける重要なリスク管理項目になったと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、このような「若年性冷凍庫侵入症」の事例が海外にもあるか調べてみました。検索キーワードの選択が難しいところですが「”fast food” “social media” employee gross」で検索したところ、やはり同様の事例はありました(正直、米国のファストフード店における店員のDQN度は日本の比ではないのでうなずけます)。

USA Todayの記事によれば、今年の6月に某有名ハンバーガーチェーン店員のこんな写真が「バイラル」に拡散したそうです(写真はBusiness Insiderより引用)。これまでにも多くの同様の事例があったようですが、ここで引用するとマッチポンプになってしまう気もするので興味ある方は元記事を見てください。

そういうことでこの種の事案は「グローバル」な(少なくとも日米共通の)現象であると言えそうです。上記USA Todayの記事ではコンサルタントが以下のように発言しています。

“Fast-food companies will never be able to totally prevent this kind of thing,” says Laura Ries, a brand consultant. “The majority of their workers are young adults armed with cellphones and getting paid minimum wage. It is the nature of the beast.”

「ファストフード企業はこのような行為を完全に防止することはできないだろう。従業員の大多数は携帯電話で武装した若者であり、最低限の賃金で働いている。こうなるのも無理はないこれは獣の世界だ。(追記:すみません、”the nature of the beast”は”the basic character of something”という意味のイディオムでした)」

多くの従業員が真面目に働いており、企業も管理をしっかりやっているにもかかわらず、ごく一部もDQN店員の行為が増幅されてしまうソーシャルメディアの力にはなすすべがないと言うしかありません。

とは言え、全米レストラン協会の広報担当者が以下のように発言しています。

“You haven’t seen these things at a Chick-fil-AやChipotle, where employees are much more committed to the brand,”

「このような行為は、従業員のブランドに対する絆がはるかに強いChick-fil-Aや Chipotleでは見られない」

従業員を将棋の駒としてしか見ない企業文化を改めて、企業と従業員の「絆」を重要視する企業文化に変えていくことが結局のところ一番重要なのかもしれません。

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グーグルとオラクル:邪悪なのはどっちか?

グーグルCEOの行為は”邪悪”だった』:オラクルCEOエリソン氏、L・ペイジ氏を語る」なんて記事がCNETに出ています。エリソン氏がインタビューにおいて、グーグルに対する知財訴訟におけるその企業姿勢について、グーグルの企業モットーである”Don’t be Evil”を引き合いに出して批判したというお話であります。

オラクル対グーグルの裁判は、アップル対サムスン裁判の陰に隠れて目立たなくなっている感もあるので、現状どうなっているかをここで簡単にまとめておきましょう(参考資料:WikipediaのOracle v. Googleのエントリー等)。

この訴訟は、オラクルが、買収したサンマイクロシステムズのJava関連の著作権と特許権をAndroidが侵害しているということで、2010年7月に北カリフォルニア連邦地裁でグーグルを訴えたことに始まります。

まず、特許権の方ですが、米国特許6061520(静的初期化を実行する方法とシステム)およびRE38104(生成されたコード内のデータ参照を解決する方法と装置)が対象になりました(発明の名称の日本語訳は栗原による)が、いずれについてもAndroidは非侵害という判決が2012年5月に出ています(なお、RE38104の発明者はジェームス・ゴスリンです)。

この件についてはOracleは控訴していません。

著作権の方ですが、rangeCheck()というJavaの短いコード(わずか9行)、テスト・ファイル、37個のAPI(実体は呼び出し関数とそのための変数定義をしたヘッダーファイルです)とそのドキュメンテーションを、グーグルがAndroid OSにコピーし、オラクルの著作権を侵害したという訴えです。

rangeCheck()およびその他のコードの一部についてはグーグルの侵害が認められています(しかし、あまりにも短いコードのため賠償金額はゼロ)。APIについては、そもそも著作権による保護の対象ではない(ゆえに、侵害や”fair use”を検討するまでない)という判決が出されました(以下に判決文を一部引用、日本語訳は栗原による)。

“So long as the specific code used to implement a method is different, anyone is free under the Copyright Act to write his or her own code to carry out exactly the same function or specification of any methods used in the Java API. It does not matter that the declaration or method header lines are identical.”

「メソッドを実装するために使用される特定のコードが異なっている限り、何人もJava APIで使用されている任意のメソッドとまったく同じ機能を実行する独自のコードを著作権法にしたがって作成することができる。宣言やメソッドのヘッダー行が同一であるかどうかは関係がない」

著作権の方についてはOracleは2012年10月に控訴しています。ここでは、37個のJava APIのみが問題とされており、オラクルとしてはAPIは著作権の対象ではないという第一審の判断を覆すことを狙うことになります。

著作権法の目的は独創性のある表現の保護と公共の利益のバランスにあるわけですから、実装のコードが著作権で保護され得るのは当然である一方で、APIは著作権の保護対象とすべきでないと思います。そうでなければ異機種システム間での相互運用が困難になり公共の利益が著しく阻害され得るからです。

ということで、私見としては、APIの著作権侵害を主張する方が「邪悪」だと思うわけです。

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【お知らせ】セミナー2本お知らせです

8/28(水)にソフトバンクリエイティブ主催の「トレンド・機能・事例・効果から考えるフラッシュストレージセミナー」で基調講演します。詳細はこちら

9/13(金)に日本IT特許組合主催の「先進企業の特許から製品・サービスのトレンドを読む」というセミナーでアップルの特許について講演します。詳細はこちら

そろそろプロフィール写真を撮り直したいと思っているのですが、なかなか時間が取れません。

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【小ネタ】ジャマイカの商標制度について調べてみた

以前の記事にも書いたとおり、ばれにくいように商標登録出願の優先日を確保する上で重要なジャマイカですが、その商標制度がどうなっているかをざっと調べてみました(ジャマイカへの出願案件をやるようなことがあればもっとちゃんと調べますがたぶんそのような機会が来ることはないでしょう)。

ジャマイカ特許庁(JPIO)にもシンプルなWebサイトがあり商標間連の情報も載っています。Trademark Act(商標法において、出願公開(publication)がどのように扱われるているかを調べてみました(条文の翻訳は栗原によります)。

22 (1)  On the acceptance of an application, the Resitrar shall
cause it to be published in the Gazette or in such other manner as may be prescribed.

22条(1)出願が受理されると登記官は公報(Gazette)あるいは所定の方法で公開する。

「所定の方法」は法文には具体的に書いてないのでTrademark Rules(商標法規則)の方を見てみると。Publicationについては以下の規定があります。

56. A form or other document in these Rules which is required to be published shall be published in the Gazette or a daily newspaper circulating in the island or a journal published by the Registrar.

56. 本規則で公開が要求される文書は公報、あるいは、ジャマイカ島で配布されている日刊新聞、もしくは、登記官が発行する刊行物によって公開される。

新聞に載るのではジャマイカ国外から知るのは大変そうです。また、ネットでの公報閲覧はないと思われます。刊行物(journal)というのはTrademark Journalという刊行物のことのようで、WebサイトにもPDF版が載っているのですがなぜか2012年度分までしか載っていません。それより後の号は印刷物として入手できるのかもしれません。正直、結構いいかげんな感じがします。

ということで、国外からジャマイカの商標登録出願の状況を監視するのはそう簡単ではなさそうです(商標公開公報(Gazette)を有料で定期的に送付してくれる業者もあるらしいですが)。ゆえに、アップルのように商標権の確保と機密確保に極端に気を遣う企業がジャマイカへの商標登録出願を優先日確保のために利用するというのはまあうなずける話です。

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【週末ネタ】TSUTAYAの定額レンタルが定額でなかった件

コーエン兄弟等の旧作の名作映画をちゃんと網羅的に観ておきたいという気持ちが盛り上がりTSUTAYAの宅配レンタルDISCASに申し込んでみました。旧作借り放題、新作は月8枚まで借りられて定額月1,958円という「定額レンタル8」というプランに申し込んでせっせと借りては観ていました。

ところが、先日クレカの明細をチェックしていると月額4,000円くらいの料金を取られている月があります。「あれ、定額のはずなのに?」と思って調べたところ、そのからくりがわかりました。

第一に、月に新作を9枚以上借りようとした場合に翌月に回されずに借りられるが別途追加枚数毎に料金が発生する「追加レンタル」オプションというものがありまして、デフォルトではオンになってます。

第二に、「旧作借り放題、新作は月8枚まで」のカウント方法は以下のようになっています。1)月初から8枚目までは旧作・新作ともレンタル可能、2)9枚目からは新作はレンタル不可(あるいは上記の追加レンタル料金発生)、旧作は借り放題。

つまり、ある月の月初から8枚旧作を借りて9枚目から新作を借りた場合、上記の追加レンタルオプションがオンになっていると、借りた新作ごとに追加料金が発生してしまうわけです(追加レンタルオプションがオフだと、もうその月は新作は借りられません)。借りる順番によっては旧作8枚+新作1枚でもう追加料金ということになります。毎月新作8枚までというプランを意味あるものにするためには、各月の最初に借りる8枚を新作にするという調整作業が必要になります。

まあ、これらはサイトをよ〜く読むと書いてある話なので「情弱乙」とも言われそうですが、「定額月1,958円、新作は8枚まで、旧作借り放題」というイメージとはだいぶ違うなと思いました。「追加オプションがオンになっているので定額の料金を超える場合があります、旧作であっても8枚借りてしまうとそれ以降の新作レンタルに追加料金が発生します」なんてわかりやすい注意書きはどこにも書いてないのがポイントです。勘違いしたままで余計な料金を払っている人もいるんじゃないかと思います。

昔は、この手のミスリーディングな料金体系で余計な金を払うのがすごく嫌で真剣に調べていたものですが、最近は歳を取ってきたせいかだんだんめんどくさくなってきています。しかし、たいした金額ではないとは言え、こういうのはちゃんと調べた方が老化防止のためにもよいと思ってます。

ちょっと似た話として、携帯電話関連の2年縛り、かつ、2年自動更新という料金体系があります。最初の2年縛りは、2年使ってもらう前提で値引きをするということなので理解できますが、2年後の更新月内に解約しないとまた2年間は解約料なしでは解約できなくなるというのは理不尽な気がします(最初の2年で投資は回収できているわけですから)。そして、当然ながら、携帯電話会社は「来月中に更新しないとまた2年間は解約料なしでは解約できなくなりますよ」なんてお知らせをくれるわけではありません(ひょっとすると料金明細のどこかに小さい字で書いてあるのかもしれませんが)。

対抗策として、私は商品買った時点でOutlookに2年先の更新月の予定のアラームを入れるようにしています。さらに、WiFiルーター等ではテプラで更新月を本体に貼ったりしています。

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