【速報】アップルのLightningコネクタの特許が登録されそうです

iOS7のアップデートに伴いアップルの独自コネクタLightningの非正規互換製品が使用できなくなったようです(MacRumorの参考記事)。今のところは警告ダイアログが出るだけのようですが、アップルの判断でいつか本当に使えなくなるかもしれません。

Lightningに認証機能が入っているというのはiPhone5の発売当初から知られていました。非正規品には認証機能をバイパスする仕組みが入っていたのがiOS7でそのバイパス機能が無効にされたようです(MacRumorの記事によると中国の非正規品メーカーがiOS7でも動作する互換品を作ると豪語しています)。

さて、当然ながら、特許出願されているであろうと調べてみると、Apple Insiderの記事(Apple’s Lightning connector detailed in extensive new patent filings)が見つかりました。Lightningの基本設計ほぼそのものの特許出願”DUAL ORIENTATION CONNECTOR WITH EXTERNAL CONTACTS AND CONDUCTIVE FRAME”(外部コンタクトと導電性フレームを有する双方向コネクタ)(公開番号20130115821)が昨年の11月にされていることがわかります(優先日は一昨年の11月)。

この特許出願の最新状況を米国特許庁の審査情報データベースPAIRで調べてみると何とつい先日の9月19日に許可通知が出てました。後はアップルが登録料を払いさえすれば登録される状況です。

US20130115821A1-20130509-D00000

クレーム1は以下のようになってます(公開時点と同じです)。

A dual orientation plug connector comprising:

a 180 degree symmetrical connector tab adapted to be inserted into a receptacle connector during a mating event, the connector tab having width, height and length dimensions and comprising a frame that defines a shape of the connector tab, the frame having first and second opposing sides extending in the width and length dimensions, and third and fourth opposing sides extending between the first and second sides in the height and length dimensions, the first side including a first opening and the second side including a second opening directly opposite the first opening;

a first contact region formed in the first opening of the frame, the first contact region including a first plurality of external contacts and dielectric material between each adjacent contact in the first plurality of contacts and between each contact in the first plurality of contacts and the frame; and

a second contact region formed in the second opening of the metal frame, the second contact region including a second plurality of external contacts and dielectric material between each adjacent contact in the first plurality of contacts and between each contact in the first plurality of contacts and the frame, wherein at least one individual contact in the first plurality of contacts is electrically coupled to an individual contact in the second plurality of contacts.

中身を詳細に見ている時間がないですが、Lightningコネクタの基本構造をクレーム化したと思われます。普通は物の構造に関する特許でクレームの構成要素が多いと容易に回避されてしまうので権利としてはあまり強くないのですが、デッドコピー製品を排除することが目的であればあまり関係ありません。なお、同様の出願が国際出願されていることから米国以外で成立する可能性も十分にあります。

冒頭にiOS7でもLightningの認証をバイパスできる互換品を作ると言っている中国メーカーの話を書きましたが、特許が成立すると認証バイパス以前の問題として、同じ構造のものを作るだけで特許権侵害になり、販売禁止や輸入禁止の対象になってしまいます。Lightningケーブルの非正規品は(たとえ技術的にはちゃんと動作するものであったとしても)今後入手が困難になる可能性が高いでしょう。

まあ、アップルのライセンスを受けた正規品を買えばよい話なのですが、普通にUSBで接続・充電できるAndroid系のデバイスと比較すると、やはりアップルは俺様企業だなあという感を新たにしてしまいます。

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なんとなく読めてきたJOCの知財広報「戦略」

先日のTBSサンデージャポンで、例の東京オリンピック便乗商法規制問題が取り上げられてました。記憶を頼りに書くと以下のような流れでした。

まず、件の朝日新聞の記事と同様に、「オリンピック」と言う言葉や五輪マークを無断で使うのがNGであるに加えて、「おめでとう東京」等の東京オリンピックを連想させる言葉だけでも商売として使うのはNGであるというような解説がされていました。

ひな壇には弁護士の細野敦先生がいらっしゃったのでどういう解説をするのだろうと見ていたら「悪質なケースの場合は」と前置きした上で「商標権の侵害となり10年以下の懲役や1000万円以下の罰金の対象になり得ます」というような解説をしていました。

弁護士、元東京高裁判事、そして、超大手法律事務所の顧問として法律的に間違ったことは言えないですし、かと言って、「JOCの主張は法的根拠がない」みたいにガチで主張してもバラエティ番組の流れにそぐわないので、うまく処理したなあとは思いました。

最後に、杉村太蔵氏が「公式スポンサーから得たお金はスポーツ関連団体に流れてスポーツ振興に結びつくので便乗商法はやめよう」というような真っ当な意見を(おそらくは台本通りに)しゃべってこのコーナーは終わりになりました。

これでわかってきたのは、JOCのメディア戦略は以下のようになっているんじゃないかということです。

1)法律(商標法、不正競争防止法等)で明確に禁じられているパターン (例: 「オリンピック」、五輪マーク、そして、「がんばれ!ニッポン」や「TOKYO 2020(ロゴ入り)」などのJOCの登録商標の無断使用)

2)法的に禁止できる根拠はないがJOC的にはやって欲しくないパターン(例:「おめでとう東京」「4年に1度の祭典がやってくる」などオリンピックを連想させる言葉の商業使用)

という2つのパターンをわざと両方ごっちゃに論じて1)については、専門家のお墨付きをもらうというやり方です。こうすることで、2)の方まで禁止される法的な根拠があるのだなとようなイメージを持たせる効果を狙っているのかもしれません。

また、もうひとつ読めない要素として、前回書いたように、ロンドンオリンピックの時のような特別法の制定で上記の2)のパターンも法的に禁止されてしまうという可能性もあります。

まあいずれにせよ、規制されるのは業としての使用だけなので、一般市民の表現の自由に及ぶことはないはずです。ただ、たとえば、オリンピックに関するブログを書いたり、NAVERまとめ等でオリンピックの関連記事を作ったりしてアフィリエイトで収益を得たり等のグレーゾーンでもめることはありそうです。

また、商用の使用であっても、たとえば、地元築地商店街に過剰な規制を行なって、看板のひとつも出せなくなってしまうというような無粋なことは避けていただきたいと思います。

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ロンドン五輪での便乗商法禁止はこうなっていた【やや衝撃】

7年後の東京オリンピックに関して、公式スポンサー以外がオリンピックを連想させる言葉をビジネスで使うことが禁止される根拠がどこにあるのかをいろいろと考えてきました(関連エントリー1関連エントリー2)。

ふと、ロンドンオリンピックではどうなっていたかが気になり調べてみたら衝撃の事実がわかりました。ロンドンオリンピックでは、London Olympic Games and Paralympic Games Act 2006という特別法を立法しており、そこでは五輪マークの無断使用禁止やダフ屋行為の禁止に加えて、London Olymipics Assiciation Right(いわば「ロンドンオリンピックを連想させる言葉使用権」)という権利を定めて、オリンピックを連想させる言葉自体の商用使用を制限するようになっていたのです。

たとえば、オリンピック会場の近くで、公式スポンサー以外が、game、2012、gold、silver、bronze, London, medal、sponsor、summer等の表現の特定の組み合わせを宣伝で使うと罰金を課される規定になっていたようです。

ここからは憶測になりますが、先の朝日新聞の記事は、JOC担当者が「もし、London Olympic Games and Paralympic Games Actと同等の法律が日本でも施行されれば..」という仮定で話していたのを記者が曲解したのかもしれません。

また、ひょっとすると日本でも同等の法律を議員立法で制定するという既定路線が固まっているのかもしれません(少なくともIOCは制定せよと圧力を働きかけているでしょう)。もし、このような法案が提出されれば、ねじれ国会も解消されていることから、すんなり通るんじゃないかと思います。

「ルールをよく守れだってルールはいつだって勝手に変えていいってルールだもん」というフレーズを思い出してしまいました。

しょうがないとは思うのですが、もし、そのような法律が制定されたとするならば、悪質な便乗商法を取り締まるという領域を越えて、通常の市民生活や表現の自由に過剰な制限を加えるようにならない運用をお願いしたく思います。

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TOKYO 2020を勝手に使ってはいけない理由とは?

昨日の記事「JOCは許可なく「おめでとう東京」を使うのはアウトと言っているようですが、根拠はあるのでしょうか?」は結構な反響を呼びました。そこで引用した朝日新聞の記事については、記者がJOCの「担当者」の発言を曲界したのではないかという見方もありましたが、同様のトピックでまた別の微妙な記事「東京五輪 商用での便乗はNG」を見つけました。

記事中では以下のように書かれています。

「オリンピック」、「五輪」、「がんばれ!ニッポン!」という表記などは、日本オリンピック委員会(以下、JOC)の許諾が必要で、無断での使用は禁止されています。それだけではなく、前出の「TOKYO 2020」についても、商用での使用は禁止となります。

これは、JOC/IOCなどの登録商標は無断で使ってはいけないという話で当たり前です(私の昨日の記事でも登録商標と同一・類似の商標の使用が禁じられる点については問題にしていません)。なお、「五輪」は登録されていないですが、オリンピックと概念類似なのでアウトとされてもしょうがないと思います。

ここで、「TOKYO 2020」ですが、以下のデザインで登録されています(5464947, 5509560, 5509561)(固定リンクががが)。出願人は「特定非営利活動法人東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」ですがその後JOCに譲渡されてます。

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非常に広範囲の指定商品で登録されてますのでこれと類似のデザインを商売で使うと商標権侵害になる可能性が高いです。

さらに、これとは別にデザイン抜きの「TOKYO 2020」の標準文字商標が出願されています。なぜか、昨年1月に出願されて、昨年8月に拒絶理由通知(暫定拒絶)が出てからずっとそのまんまになっています。上申書が出ているのでオリンピック開催地が決定してから判断してくれというお願いをしているのかもしれません(商標の審査経過情報はWebで無料では見られないので不便です)。もしこの商標が登録されると「TOKYO 2020」の文字商標としての使用もアウトになります。

まあ、ここまでは真っ当なのですが、記事中の以下の記述が気になります。

また、これ以外でも商用でオリンピックに便乗するような意図がある、あるいはそう判断される場合の表現は、すべてNGになります。「2020年に『夏のスポーツを応援しよう』と銘打ったキャンペーンなどがあった場合には、JOCがクレームを入れることになります。企画意図がオリンピックをベースしていると判断されるので、そういった企画は配慮いただきたいです」(前出の関係者)。

朝日新聞の記事のように知的財産権を侵害するとみなすとまでは言わず「配慮いただきたい」というお願いレベルの話になってます。まあ、お願いするのは勝手だと思います。ただし、その一方で、

「これまでの五輪はJOCの管轄でしたが、今後、自国開催となり、IOCの管轄になります。ですので、これまで以上に厳しくなります。IOCから法的な手続きをとるよう指示される可能性もあるので、配慮いただきたい」とJOC関係者。

なんてSLAPP的なことをほのめかしたりもしています。

いずれにせよ、法律的に明確にNGな部分はNGとして(商標権関係がそれにあたります)、お願いレベルの部分はお願いとして、ルールを明確にしてフェアにやってこそスポーツの祭典にふさわしいのではないかと思います。

また、7年後の開催ということを考えると、ソーシャル・メディアの影響力は今よりはるかに大きくなることはあれ、小さくなっていることはないでしょう。そうなると、IOC/JOCがあまり無茶を要求して炎上→公式スポンサーの商品をボイコットみたいな事態になってしまうこともあるのではないかと危惧します。

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AppleはiPhone5sの指紋認証ホームボタンをNFCアンテナ兼用にするつもりだったかもしれない件

AppleのiPhone5sの新機能の一つとして、ホームボタン上に実装された指紋認証センサーがあります。めちゃくちゃ革新的とは言えないまでも、限られたスマートフォンデバイスの筐体上で機能を詰め込むためにはナイスなアイデアだと思います。

「別に指紋認証なんていらないよ」と思っている人もいるかもしれませんが、今後、スマホの決済用デバイスとしての利用が進んで行くにつれ、指紋認証などの生体認証による厳重なセキュリティはますます重要になっていくはずです。

さて、この指紋認証ホームボタンに関する特許出願が、あたかもiPhone5sの発表とタイミングを合わせたかのように、つい先日の9月5日に公開されています(もちろん、まだ権利化はされていません)。番号はUS20130231046(新しすぎてまだGoogle Patentsには掲載されてません)、出願日は2012/01/03、発明の名称は”Electronic Device With Shared Near Field Communications and Sensor Structures”(NFCとセンサー構造を共用した電子機器)です。

発明の名称が表わしているように、この出願のポイントは同じ電極を(指紋)センサーとNFCのアンテナの両モードで使えるようにする点にあります。これまた、限られたスマホのフォームファクターをできるだけ有効活用するためのアイデアと言えます。

特許出願通りに製品を作らなければならないというルールはありませんので、この機能がiPhone5sに入っているとは限りません(というかたぶん入ってないでしょう、どこかのメディアで分解記事が出ればすぐわかるでしょうが)。仮に、ハード的にNFCが既に入っているとするならばiOSのアップデートだけでNFCが使えるようになるので大変すばらしいことです(まあ、そうはならないでしょうが)。

最近、Appleはこれ以外にも生体認証系の特許を出しまくっているようです(これから公開されるものも多いでしょう)。また、おもしろそうな出願があれば紹介していこうと思います。

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