【小ネタ】Appleの登録商標マークがちょっと下手くそである件

先日の記事用にApple Inc.の日本での登録商標を調べていたらちょっとおもしろいことを発見しました。

言うまでもなく、Appleは日本で数多くの商標登録を行なっています(400件以上)。下のちょっと懐かしいマークも当然ながら登録されています。

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このマークに相当する登録商標はいくつかありますが、その最も出願日が古いものが商標登録第1737946号です。この登録のマークの図版が手描きで微妙に下手くそなのでちょっと笑いました。出願日は1979年5月4日、当時は当然ながら出願も紙ベースですし、今のようにJPEGファイルを送ってもらうとか、カラーコピーを取ってなんてこともなかったので、製品現物(Apple IIでしょうね)を見て手描きしたのではと思います。

第1737946号第1737946号

なお、商標権の効力は類似範囲にも及びますので多少再現性が薄くても問題はありません。

さらに出願日が古いApple所有の図形商標としては、

第872064号第872064号第989999号第989999号第990000号第990000号

等がありますが、これは、Beatlesのアップルレコード(アップルコープス)との商標権問題の和解の結果、Apple Incが買い取った商標登録です(参照Wikipedia記事)。Appleが商標登録を保持して、アップルコープス側にライセンスする契約になっているようです(そうしないと第三者に類似商標を取られてしまう可能性があるからです)。

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iPhone用スケルトンパネルを売ると何の罪に問われるか

iPhone5用の透明バックパネルを売っていた(正確には販売目的で所持していた)人が商標法違反容疑で逮捕されたという事件がありました(参照記事)。ニュース映像を見ると、AppleのリンゴマークとiPhoneの文字が商品にはっきりと書かれていることから、Appleの商標権を侵害するのは明らかと言えます。

では、仮に、このバックパネルにもそのパッケージにもリンゴマークやiPhoneの文字を使用しなかったらどうでしょうか?商標法的にはクリアーできるかもしれませんが、意匠権の問題が出てきます。

言うまでもなくAppleはiPhone5の工業デザインの意匠権を数多く所有しています。たとえば、以下は意匠登録1493680号(部分意匠)の図のひとつです。点線部分は権利には関係なくて、実線の外周部分のデザインをAppleが独占できることを表わしています(角の丸い四角形すべてを独占できるということではありません、あくまでもこういう角のRと縦横比のデザインとそれに類似したデザインを独占できるという話です)。

20141003214952204432

細かいことを言うとiPhone(携帯情報端末)とバックパネルでは物品が違うので意匠権の直接侵害にはならないのですが、意匠法には間接侵害の規定があり、それに引っかかる可能性大です。

第三十八条 次に掲げる行為は、当該意匠権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

一 業として、登録意匠又はこれに類似する意匠に係る物品の製造にのみ用いる物の生産、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

意匠権を侵害する物を作ることにしか使われないもの(たとえば、組み立てキット)を販売すると間接侵害になるという規定です。このスケルトンバックパネルはiPhoneの裏に付けて使う以外の現実的な使い道はないので、この規定にひっかかる可能性大です。似ないようにいろいろ装飾をつければ、意匠権侵害を回避でできる可能性はあるかもしれませんが、結果的にiPhoneに似ても似つかないものになってしまうえば商品としての魅力がなくなるので、あまり意味がないでしょう。

Appleに限らず、大手消費者向け機器メーカーは意匠登録を結構やってますので、デザインに影響があるような互換パーツの製造販売には注意が必要です。筐体の中に入っていて外から見えない互換パーツやネジのようにデザインに影響を与えないものであれば問題はないですが。

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スティーブ・ジョブズ最後(?)の発明:その意外な中味

アメリカのQAサイトQuoraで知りましたがスティーブ・ジョブズを発明者とする特許出願がつい最近の9月18日に公開(20140277850)されています(公開されただけでまだ権利化はされていません)。

20140919-00039246-roupeiro-001-7-view
(出典:USPTO)

スティーブ・ジョブズは生涯で300件以上の特許を取得しています(その多くはデザイン特許(日本でいう意匠権)ですが、技術的な特許も数多く取得しています)。今回公開になった特許もデザイン特許ではなく、日本でいういわゆる特許に相当する技術的なものです。実質出願日は2013年3月15日です。ジョブズの命日は2011年10月5日なので、ジョブズの死後、共同発明者たちが改良を続けて特許出願にまで持ってきたということでしょう。おそらく、ジョブズの発明による最後の特許出願といってよいのではないかと思います(これ以降は絶対にないという保証はないですが)。

さて、中味も意外なんですが、まず意外なのは出願人(正確に言えば譲受人)が、Appleではないということです。Savant SystemsというiPhoneやiPadを使ったホームオートメーションを行なう会社です。

一瞬、これは同姓同名のSteven P Jobsさんなのではと思いました。米国公報は発明者の住所が市レベル(カリフォルニア州パロアルト市)までしか載ってないので同姓同名の可能性はなくもないと思いましたが、公報とは別の審査資料を見るとSteven P Jobsは既に亡くなったと描いてあります。パロアルトに住んでiPhone関連の発明をして既に亡くなっているSteven P Jobsさんと言えば、あのスティーブ・ジョブズしかあり得ないでしょうね。

 20140919-00039246-roupeiro-000-7-view
(出典:USPTO)

さて、特許出願の中味なんですが、これもちょっと意外で、ヨットなどの乗り物をタブレット機器で無線でコントロールするというアイデアです(上図は操作画面のイメージです)。ジョブズがヨットを趣味としており、ビーナス号という豪華ハイテクヨットを作っていたのは知られています(参照記事)。この時にSavant Systemsに制御関係を依頼し、そこでジョブズが思いついたアイデアをSavant Systemsが特許化しようとしているということなのかもしれません(もちろん、ジョブズあるいは遺族の許可をもらってです)。要するに、完全にジョブズの趣味の世界の話ということです。

しかしその一方で、HomeKitでホームオートメーション戦略を推進していくAppleが、Savant Systemsと単なるアプリデベロッパー以上の関係を築こうとしている(していた)ということも考えられなくはありません。ちょっと気になることころです。

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なぜ「恋チュン」は良くて「Happy」はダメなのか:神奈川県のああ勘違いの理由

ちょっと前になりますが、神奈川県が観光振興目的でファレル・ウィリアムスのヒット曲HAPPYを使った「踊ってみた」動画を作成し、Youtubeで公開しようとしたところ、権利者との折り合いがつかず楽曲使用を断念したというニュースがありました(参照記事)。税金を使って制作しているのですから、事前の権利クリアランスはちゃんとやってほしかったですね(著作権切れ楽曲のI Got Rhythmを代わりに使ったので動画がまったく無駄になったわけではないようですが)。

なんで、HAPPYが無料で使えるという勘違いをしてしまったかというと、以下の2つの可能性があると思います。

1.非営利だから権利者の許可はいらないと思ってたのではないか

確かに、日本の著作権法の規定では非営利・入場無料・ノーギャラの上映・上演・演奏は自由に(権利者の許可なく)できます(本ブログ関連過去記事1本ブログ関連過去記事2)。ただし、これは、上映・上演・演奏だからこその話なのであって、Youtubeにアップするのは公衆送信(送信可能化)という利用行為なので別の話です。上映・上演・演奏は、その時1回限りで後に残らないので権利者の許可がいらない規定になっているわけです。

観光振興目的が非営利かという議論はあると思いますが、それ以前に公衆送信なので非営利目的であるかないかにかかわらず権利者の許可は必要です。

著作権法は利用行為(複製、上映、演奏、公衆送信等々)によって、規定が微妙に異なるのでややこしいです。この辺を把握していないで、QAサイトやブログのコメント等で、間違ったことが書かれているケースがたまに見受けられるので注意が必要です。

2.以前に「恋するフォーチュンクッキー」の踊ってみた動画がOKだったので「HAPPY」もOKだと思ってたのではないか

「恋チュン」のCD音源を使った動画をYoutubeに無料でアップできたのは著作権法上認められているからではありません。権利者がOKだと認めているからです。非営利ならOKと言うのは著作権法の規定には関係なく(前述のとおり公衆送信には営利・非営利は関係ありません)、権利者が決めた条件です。

HAPPYについては、他の都市から個人投稿の動画はOKとされていたそうですが、これも著作権法の規定とは関係なしに、権利者が黙認していただけの話です。

たとえば、仮に権利者が福島の復興目的でYoutubeにアップするなら営利目的でもOKだけど、それ以外は非営利でもダメだよという条件をつけてもそれは権利者の勝手であり、他者はそれにしたがう必要があります。


タイトルの質問「なぜ「恋チュン」は良くて「Happy」はダメなのか」には著作権法の規定には関係なくて「権利者の勝手」というのが答になります。

一般論として、誰かが他人の著作物を無料で利用しているように見える時、それが権利者の許可不要と著作権法で定められているからなのか、あるいは、権利者が(黙認も含めて)OKしているからなのかを区別するのは重要です。

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iPhone6のかっこ悪いポイントと特許との関連について

iPhone6のカメラ回りのデザインがかっこ悪いということで、一部のユーザーから批判の声が出ています(たとえば、ZDNetの記事)。

筐体を薄型にしたために、カメラのレンズがちょっとだけ飛び出しているのがあまりにもダサイということです。確かに、「美は細部に宿る」という観点から言うと、ちょっとAppleらしくないというか、最近のスマホらしくないデザイン上の妥協だと思います。ZDNetの記事では”This is ugly. Really ugly.”と評されています。美観だけの問題ではなく、ケースなしで平面に置くとぴったり置けないという点で実用上もちょっと難ありという気もします。

iPhone 6

(出典:Apple)

さらに、Appleの公式サイトにおける真横から見た画像では、画像を修正してカメラの出っ張りを消している疑惑もあります(たとえば、この記事この記事)。Apple自身もかっこ悪いのを自覚していると言うことなんでしょうか。

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(出典:Apple)

ところで、冒頭で引用したZDNetの記事では、Appleの自社特許への対応のためかもしれないとの推測が追記されています。その特許とは携帯機器の交換レンズ取付機構の特許で、本ブログでも過去に解説しています

キャプチャ

ただ、この特許に記載されている構造だと、交換レンズのバヨネットの爪をはめる部分(上図参照)が必要なのですが、写真ではそうなっているようには見えません。カメラの飛び出し部分をなんらかの方法でさらに飛び出させるとバヨネット構造が露出する、あるいは、カメラレンズ枠の内側に爪をはめる構造があると考えられなくもないですが、であれば、通常時は出っ張らせる必要はないわけであって、交換レンズのためにこういう構造にせざるを得なかったとは考えにくいと思います。さらに、もし交換レンズ機能があるのだとしたら、このタイミングで発表がないというのも考えにくいです。

禁句と言えば禁句なんですが、「もしジョブズが生き(ry」なんてまた言いたくなってしまいますね。

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