【Teradata PARTNERS便り】「企業文化は電話線では伝わらない」

Oracle Open Worldの後連続して、TeradataユーザーグループのコンファレンスPARTNERS(@ワシントンDC)に参加しています。

eBayの運用担当マネージャーSarang Kirpeker氏の”Data Warehouse Support Considerations for eBay”というセッションに参加してきました。eBayはご存じのように世界最大のオークション会社です。日本ではヤフオクに敗れて撤退という失態を演じてしまいましたが、グローバルでは8,800万人のアクティブユーザー(登録ユーザーではない)をサポートする超大規模なネットサービスとなっています。

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同社のデータウェアハウスも合計サイズ5PBを越えており、商用分野では世界最大のデータウェアハウスと推定されます。そのようなデータウェアハウスのDBAの仕事はかなり大変そうです。

eBayでは基本的にTeradata社にデータウェアハウスの管理業務をアウトソースしています(ETLの管理は、業務システムに関する深い知識が必要であることから自社で行ない、データウェアハウスと分析機能の管理はアウトソースするという切り分けを行なっています)。そして、Teradata社はインドにあるグローバルサービスの拠点でリモートによる管理を行なっています。米国では典型的な形態です。

Kirpeker氏によれば「当初はすべての管理業務をインドからリモートで行なっていたが、後に一部要員をオンサイトに置き、残りをインドに置く形態に変更した」そうです。さらに、リモートの要員を年に1週間ほどeBayのサイトに呼び、対面でのコミュニケーションを実施しているそうです。その理由は、「企業文化は電話線やチャット画面では伝わらないから」ということであり、このような対面コミュニケーション強化戦略はきわめてうまく機能しているそうです。

そういえば、6月にやった日経BP主催のMDMコンファレンスでもP&Gジャパンのグローバル ビジネス サービスディレクター玉置肇氏が、フィリピンのマスターデータ管理者を日本に呼んで交流したことでデータ品質の改善が見られたとおっしゃっていました(参考記事)。

如何に世界がフラット化しようとも、わざわざ飛行機に乗って対面で交流するという要素が(少なくなるとは思いますが)まったく無くなるということはないと思います。

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もしコルシカがアメリカのサービスだったらどうなっていたか

コルシカですが、結局すべての雑誌の販売を中止したようで、このままフェードアウトしていく可能性が高いと思われます。そういう意味ではもう済んだ話ではあるのですが、仮にコルシカが米国でサービスを開始していたらどうなっていたかを考えてみましょう(米国では主要雑誌はほとんどWebでコンテンツを提供してますので、雑誌のスキャンサービス自体の商売としての意味があまりないですが、ここでの目的は日米の著作権制度の違いを説明することです)。

コルシカが米国でサービスを始めれば、当然に権利者側はなんらかの法的手段に訴えるでしょう。裁判かそれ以前の交渉であるかは別として、コルシカ側はフェアユースの抗弁を主張できます。具体的には「利用者がデジタルコピーを買った分だけ、物理的な雑誌が購入されているので、出版社には損害が発生していない、そればかりか、雑誌の売り上げ増に貢献にしている」と主張することになるでしょう。

この主張が認められない可能性もありますが、たとえば、「コルシカがちゃんと本を買っているかを担保できるよう権利者側が監査できる」との条件の下にサービスを継続できるという形で落ち着く可能性などがあります(あくまで仮説)。

これに対して日本の著作権制度ではフェアユースの抗弁という考え方がありませんし、差し止め請求(著112条)の規定がありますので、損害が発生しているか否かにかかわらず、権利者側はサービスの停止を請求できます(これは損害賠償請求とは別の話)。そして、著30条に「使う人自身がコピーしなければ私的使用目的複製ではない」旨が明記されているため差止請求はほぼ確実に認められることになるでしょう。交渉の余地はほとんどありません。

要するに、何か新しいサービスが出てきたときに、米国の著作権制度ではフェアユースの抗弁の考え方があるがゆえに、利害関係者が交渉して新しいWin-Winの秩序を作れる余地が大きいと言えます。なお、新しい秩序ができた後は、それが成文化されることもあります(フェアユースの制度があると何でもかんでも裁判に持ち込まれるというわけではありません)。日本の著作権制度では、法律に書いてある著作権侵害の要件に合致しさえすればメカニカルに差止請求できてしまいますので、このような全体最適化を行なう余地は法律を変えない限りほとんどないと言えます。

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【OOW09便り】OOWでエリソンが語らなかったこと

ラリーエリソンの基調講演により、Oracle Open Worldが終了しました(イベントはもう1日残っていますがメディアの取材日は終わりました)。OOWでエリソンが何を語ったかについては、他の多くのメディアの人が書くと思いますので、私は「何を語らなかったか」について書こうと思います。

「語らなかった」ことの中で最大のトピックはやはりクラウドでしょう。今回のOOWでは、あたかもクラウドがNGワードになっているかのようでした。あるセッションでCLOUDというスライドが出てきましたが、講演者が「これはOracleの検閲通ってるから大丈夫だよ」とジョークを言ったほどです。そして、そのスライドの内容もプライベート・クラウドに関するものでした。

もちろん、OracleはCRM on DemandなどのSaaSビジネスもやっていますし、Amazon EC2のインスタンスでOrcale DBMSをサポートする等、テクノロジー的にもクラウドをサポートしています。しかし、ビジネス戦略としてはかたくなにクラウドを拒否しているように見えます。

この理由は明らかで、クラウドビジネスに乗り出すことが、Oracleの既存ビジネスモデルに与える影響を無視できないということです。言うまでもなくOracleは企業に対してソフトウェアを販売し、ライセンス料金と保守料金で収益を上げる会社です(これから先はハードウェアも収益になってきますが)。顧客の維持さえできれば最も高利益率のビジネスモデルのひとつです。オラクル的にはこのビジネスモデルをしばらく守りたい、そして、十分に守っていけると思っているということでしょう。

では、同じようなビジネスモデルのマイクロソフトがなぜAzureに乗り出したかですが、これは、同社がソフトウェアライセンス料金中心型のビジネスモデルにそろそろ限界が来たと感じたからでしょう。実際、デスクトップOSやOfficeスイートに依存して成長していくのはますます困難になっていくと思います。このような過去にとらわれない切り替えの速さはマイクロソフトならではと思います。

もちろん、オラクルもいずれはクラウドに大々的に乗り出す可能性は十分にあります(エリソンがクラウドのモデルをまったく評価していないのであればSalesforce.comに投資するわけはありません)。実際、Fusion Applicationはセルフサービスの管理機能を提供することでSaaS-readyであることを売りのひとつにしています。来年か再来年のOOWでは、Oracleが大々的にクラウド戦略を打ち出してもまったく驚くことはないでしょう。

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【OOW09便り】展示ブース小ネタ集

Oracle Open Worldの展示会で見た中で興味深いものをいくつか挙げてみます。

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スタートレックのエンタープライズ号風のBestITというコンサルティング/ホスティング会社のブース。社員がやって(やらされて)いるのでしょうか、どことなく照れが見られます。

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Salesforce.comのブースはかなり大規模(ただし、メイン会場ではなく別棟のMoscone West)

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Salesforce.com社はゴールドスポンサーのはずなんですがなぜかリストされていません。

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地味なマイクロソフトのブース。「いったい何を展示しているのですか?」とぶしつけな質問をすると、「PeoplesoftやJD.EdwardsはSQLServerをサーティファイしてるし、BizTalkなどの統合ソリューションもサポートしてるので」とのこと。

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Green Marketという環境関連コーナーがありましたが、Sunのモジュラーデータセンターのブースがあるくらいで後は自然食品の販売コーナーという超地味な存在。

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プラカードで”STOP STORAGE WASTE”を訴えるデモ隊。その正体はPillar Data Systemsというストレージベンダー。アプリケーションアウェアなHSMを実現しているようです(これはちょっと興味深い)。

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Teradataも出展しています。TeradataによるデータウェアハウスとOracleのBIツールが最強の組み合わせとのこと。Hyperion時代からのつながりでしょう。

とりあえずこんなところで、後で追記するかもしれません。

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【OOW09便り】まさかのマークベニオフCEO登場

今年のOracle Open Worldでは、Salesforce.com社がゴールデンスポンサーの1社になっています。3日目には、同社CEOのマークベニオフによる講演が行なわれました。マークベニオフと言えば、”No Software”の旗印の元に、高額なライセンス料と保守料金に基づく従来型ソフトウェアベンダーを声高に批判してきたことで知られています。まさに、Oracleのビジネスモデルと相反する存在です。

ベニオフCEOが何を話すのかに興味津々だった人はやはり多かったようで、雨天にもかかわらず会場には長蛇の列が。

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記者席が最前列だったので下から見上げるように写真を撮る形になりましたが、ベニオフCEOがますます大きく見えてプロレスラーのようです。

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当日の悪天候にかけて「クラウドを集め過ぎちゃったかな」とのジョークから話し始めます。

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メインフレームからクライアント・サーバの時代を経て今日はクラウドの時代ですといういつものピッチから始まりますが、「こういう古い世界とクラウドとの共存を目指します」といつもとちょっと感じが違います。

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そもそも、この講演のテーマも”No Software”ではなく、”The Best of Both Worlds”、つまり、オンプレミスとクラウドの良いところを組み合わせようというものです。ブレてると言えばブレてるのかもしれませんが、自社のイベントでは理想論を語り、ここでは現実論を語るということなのでしょう。

「長期的にはクラウドだけど当面は共存共栄」だと思っていても、そのまんま講演等で話したのではウケない(メディア等の注目を集められない)ので、「これからはクラウドしかない」と(ウソにならない範囲で)極端な物言いに走るのはほぼすべての米国系ITベンダーで見られるお話しであります。

そもそも、Salesforce.com社はOracle DBMSの大型ユーザーでもありますし、ラリーエリソン氏は同社の株主にして、創業時の役員でもあり、ベニオフ氏の心の師でもありますので、両社の関係は険悪というものではまったくありません。

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