ノキアはパテントトロールになってしまうのか?

マイクロソフトによるノキアの携帯事業買収ですが、予想通り少なくとも米国系メディアでは酷評されています。マイクロソフトの株価も買収発表後に約5%下がりました。

PCWorldの記事”The Microsoft-Nokia deal: Fail plus fail equals more fail”(失敗と失敗を合せてもより大きな失敗ができるだけ)という記事では「マイクロソフトとノキアは互いに命綱を投げ合い「私を助けて」と叫びながら一緒に崖に飛び込んだ」とひどい言われようです。

一般論として言うと、初期市場でマジョリティを取れなかったプラットフォームが後から挽回するケースはあまりない(強いて言うとMacOSくらい?)ので、相当のブレークスルーがないと前途は多難であるとは思います。

さて、携帯ビジネスのお話はもっと詳しい方々にお任せして、特許間連についていくつか追記しておきます。

マイクロソフトに携帯事業を売却した後のノキアには、地図情報サービス(HERE)、ネットワーク機器関連事業、そして、「知財ライセンス事業」が残ることになります。

ここで「知財ライセンス事業」とは、要は、実業なしで特許権利行使を行なうビジネスということで、中立的な言葉を使えばNPE(Non Practicing Entity)、悪意を込めて言えば「パテント・トロール」ということになります。

ノキアは既にグーグル、HTC、ブラックベリー等を特許権侵害で訴えていますが、特許権しか資産がなくて収益を上げようと思えば権利行使するしかないので、今後はますます権利行使に積極的になってくることは容易に予測できます。権利行使のメインターゲットはほぼ確実にサムスンを含むAndroid勢になるでしょう。

しかし、よく考えてみると、ノキアはアップルもターゲットにできます。

仮にマイクロソフトがノキアの特許権を(ライセンスではなく)買っていたとしたならば、その特許権に基づいてアップルを訴えるのには問題があります。アップルとマイクロソフトの間には包括的な特許クロスライセンス契約が結ばれているからです。

このクロスライセンス契約は、1997年に復帰後のジョブズによる、アップルの経営を建て直すためにマイクロソフトと提携するという劇的な戦略の一環として締結されたものです(参考記事)。その具体的内容は社外秘だったのですが、昨年にアップルvsサムスンの裁判の資料として提出されて内容が公開されました。それによると少なくとも出願日が1997年から2002年までの特許に関しては相互にライセンスする(権利行使しない)取り決めになっています。

要は、マイクロソフトは、ノキアが「トロール」として暴れるのを安全地帯にいながら見ていられる立場にたてたわけで、そこまで考えてノキアに特許権を残したのだとしたらなかなか抜け目がないとしか言いようがありません。もちろん、マイクロソフトは既に強力な特許ポートフォリオを持っているので敢えて多額で特許権を買うまでもなかったという点が大きいとは思いますが。


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