著作権法改正:何が違法で何が合法なのかまとめてみた

違法ダウンロード行為へのの刑事罰適用、アクセス制御を回避しての複製の違法化等を含む著作権改正法案が、6月15日に衆院で可決されました(参考記事)。このまま参院も通過して改正が成立してしまう可能性は高いと思います。

本来であればこのトピックについてはもっと早く触れておくべきでしたが、いろいろと忙しくてブログが更新できておらずどうもすみません。

さて、メディアの記事タイトルで「リッピング違法化」などのちょっと省略し過ぎの用語が使われていることもあってか、一部で混乱が見られるようです。そこで、まずは、何が合法で、何が違法なのか、さらには、犯罪になるのか否かについてまとめてみます。

1.CDからのリッピング行為→今までもずっと合法です。今回の法改正が成立しても合法です。

通常のCDには著作権法上の「技術的保護手段」に相当するコピー制御もアクセス制御も施されていませんので、個人またはそれに準ずる範囲で使用するのであれば合法的にコピー可能です。ただし、コピー制御のついているCD(CCCD)のコピー制御を解除してその事実を知りながらリッピングするのは前から違法です。

なお、ついでに書いておくとレンタル屋で借りたCDをリッピングしてから返却するのも合法です。さらに社会通念的に見ても、レコード会社(原盤権者)には新譜発売後1年間はレンタルを禁止できる権利が昔からありますが、その権利を行使せず敢えて新譜発売2週間後からレンタル解禁していることから、権利者側も許容していると見て良いでしょう(それをおかしいと言って権利者以外の人が騒ぐのはお門違いです)。

2.DVDからのリッピング行為→現時点では合法です。今回の法改正が成立すると違法になります(ただし刑事罰なし)。

DVDのプロテクト(CSS)はコピー制御ではなくてアクセス制御と考えられているので、今では著作権法による規制の対象外でした(参考ブログ記事)。しかし、今回の法改正が成立するとCSSを回避する形での複製をその事実を知りながら行なうことは(たとえ個人使用目的であっても)違法になります。ただし、刑事罰の適用はありません(今のところは)。自分で買ったDVDをiPadにリッピングして旅行中に見るというような使い方が違法になってしまうとちょっと困りますね。

3.DVDのリッピングツールの提供(販売、配布)→前から違法です。さらに、昨年の12月から刑事罰が適用されています。

アクセス制御回避ツールの提供は著作権法ではなく不正競争防止法で前から禁止されています。加えて昨年の12月から不正競争防止法改正により刑事罰が適用されるようになりました。これはDVDのリッピングツールだけではなく、マジコンにも適用されます(既に逮捕者が出ています)。いわゆる「黒B-CAS」の販売も同様と考えられます。

4.ネットに許諾なくアップロードされた動画・音楽をそれと知ってダウンロード→今までも違法(ただし刑事罰なし)、今回の法改正が成立すると刑事罰が適用されるようになります

これが今回の改正の重要な論点です。権利者寄りとされている弁護士先生も反対されているようでありいろいろと問題が多い改正であることがわかります。これについては別エントリーで考察しようと思います。

追加(12/06/18 23:55:00) すみません、CCCDとDVDのリッピング行為が違法になる要件として「その事実を知りながら」という条件を書き忘れていたので追加しました。

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12 Responses to 著作権法改正:何が違法で何が合法なのかまとめてみた

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  3. hagiwomiho のコメント:

    kurikiyo様

    解りやすいご回答ありがとうございます!やっぱり今回の著作権法改正では
    「違法ダウンロード」が焦点になるのですね。ACTAも気になる所ではありますが、まず10/1から何がダメになるのか、ちゃんと把握しておこうと思います。

  4. kurikiyo のコメント:

    hagiwomihoさま
    今回の著作権法改正と同人・二次創作の話は直接関係ありません。
    二次創作(絵のパロディを含むもの)は、建前を言えば元から著作権侵害ですが、著作権者が基本大目に見てくれたという点でグレーゾーンです。この点は、今回の著作権法改正後でも同じです。
    二次創作に関係すると思われるのは、現在議論中のACTA、そしてTPPの方で、こちらでは著作権侵害の罪を非親告罪化する流れがあります。もし非親告罪化されると、権利者でない人が著作権侵害を犯罪として告発できてしまいます。DVD大量複製して販売というようなケースは別として、健全な同人活動には影響が出ないような法制化を考える必要があります。

  5. hagiwomiho のコメント:

    10/1施行を前にTwitterでは二次創作、いわゆる「同人誌」なども今回の著作権法改正の対象になり、同人誌やアニメ・マンガの絵の無断利用(Twitter等でのアイコンに使用)まで全て犯罪になる、といった情報が出回っています。
    しかし、ググった限りそういった事に触れているサイトはなく、また、二次創作の頒布の場を提供する企業が何かコメントする、といった事もありません(実際、施行後に大きな同人誌即売会が控えています)

    そこで疑問なのですが、勿論二次創作はいわゆる「グレーゾーン」ではあると思いますが、今回の著作権法改正で、Twitterで騒いでる程に大きく「二次創作・同人誌などは犯罪」と位置付けられるのでしょうか?

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  8. とうりすがり のコメント:

    kuuuuさん
    日経PC21に度々載っていたことですが、マクロビジョンはコピー制限、CSSはアクセス制限という分類の下、CSS回避なら(今までは)違法ではなかった、ということらしいです。

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  10. kuuuu のコメント:

    現行の不正競売法ではプロテクトを何らかの手法で解除する行為は違法であったと思いますので、現在、個人の範疇でもCSSやマクロビジョンを回避してのDVDは違法だったと思うのですが違うのでしょうか?

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