大手マーケティングリサーチ会社マクロミルが日本の一般消費者1551人に対して行なったIoTに関する調査レポートの一部が無料公開されました。本レポートは、私もアドバイザーとして助言させていただいており、コラムも寄稿しています。概要レポートはマクロミルのサイトから無料で入手可能です(要ユーザー登録)。
ここでは、特に興味深かったポイントをご紹介しましょう。
まず、IoTという言葉自体の認知度です。今回の調査では、IoTという言葉を知らないと答えた回答者の割合はなんと91%に達しています。IoTという言葉自体になじみがない可能性も考えて、「モノのインターネット」「インターネット・オブ・シングズ」という表現を使ってもこの結果です。一般論として、テクノロジーの提供側や業界の識者の認識とその顧客である消費者側の認識が大きく異なることはよくある話ですが、もう少し認知度はあるかと思っていました。テレビ番組で紹介されるケースも増えていると思うのですが、まだまだ一般消費者の中ではこんなもんなんだなあということがわかります。
今後IoTテクノロジーの提供企業がソリューションの価値を消費者に訴求していく際には注意が必要と言えます。安易にIoTや「モノのインターネット」という言葉を使ってしまうと「何か難しいことを言っているなあと」と敬遠されてしまうリスクがあるでしょう。
この点、さすがにマクロミルさんは調査のプロで、この後の調査質問では技術用語を使わずに、ソリューション(スマートホーム、ヘルスケア、自動車関連、ペット関連等)の具体的なイメージを説明して「使ってみたいか?」「どのような価値を期待するか?」「活用の上でプライバシー不安はないか?」といった質問をなげかける構成にしています。こういう質問の仕方をすると、一定数の回答者が「使ってみたい」と回答します。IoTという言葉の認知度とその価値の認識はまた別だということがわかります。期待する価値としては、「快適で便利な生活を得られる」、ついで「安全な生活」が代表的回答です(年齢層、性別によって多少回答割合が異なりますが、詳しくはレポートをご覧下さい)。
また、これは業界としての懸念と同様に、プライバシー面での不安が一般消費者にとっても重要な考慮点になっています。情報のタイプごとに提供の抵抗がどの程度あるかが調査されていますが、性別、好きなブランド、趣味等の情報の提供には抵抗が薄い一方で、ウェブ閲覧履歴、勤務先、顔写真、金融資産等は抵抗が大きいという結果が出ています(これはうなずける結果です)。
IoTソリューション提供企業に対してプライバシー情報を提供する際に重視するポイントも調査されています。「情報の提供をいつでも自分の意思で止められる」というオプトアウトや「取得する情報の種類を説明してくれる」等の透明性が重要視されているのは当然として「プライバシーマーク」が重要視されているという結果が出たのが意外でした(今回の結果の中で最も意外でした)。
プライバシーマークというと専門家の中では有効性に疑問符を付けている人が少なくないと思う(ベネッセもプライバシーマークを取得していましたし)のですが、一般消費者の認識としてはそうでもないということなんでしょう(あくまでも認識上の話)。何らかの公的認証制度というのはやはり重要なのではと考えられます。
本レポートは、今の日本における消費者の生の声ということで、いろいろな気づきを提供してくれると思います。