個人が特許出願する場合の考慮点について

弊所の特許出願案件はソフトウェア開発会社が多いのですが、個人発明家の方の案件も一定数あります。個人が出願人(権利者)として特許出願する場合の考慮点を何点か挙げておきます。

1)出願人住所の問題

願書には特許出願人の氏名と住所を記載しなければなりません。そして、特許出願の内容は出願から1.5年後に公開されてしまうので、自宅住所を記載していると、自宅住所が公開されてしまうという問題が生じます。

なお、この点は、発明者についても同様です。出願人が企業の場合でも、発明者は個人ですから建前上は住民票上の住所にすべきなのですが、実際上は勤務先の住所にしている人も多く、特許庁も大目に見てくれるようです。

個人の場合も勤め人であれば会社の許可を得て、発明者も出願人も会社の住所を使うことも検討した方がよいでしょう。フリーランスで自宅で仕事をしている場合では私書箱を契約するとか実家の住所を使わせてもらうかでもしない限り、あきらめるしかないかと思います。

それにしても、個人情報の問題がこんなにうるさく言われている昨今、この問題は何とか運用で解決できないものででしょうか。米国だと発明者・出願人(個人)の住所はネットでは市レベルまでしかわからなくなっています。日本でも同様の運用にしてほしいものです。

なお、審査係属中に特許庁から出願人に直接連絡が行くケースはほとんどないと思います。例外的に、たとえば、所定の手数料が納付されていない場合には、代理人に加えて出願人にも連絡が行きます(代理人にも連絡が行きますので出願人に通知が届かないことで出願が取り下げられるようなことはありません)。

また、審査が完了して登録された後に他者から無効審判を請求された場合等ですが、建前上はもう代理人の手を離れているので、出願人にしか通知がいかず、自宅住所が記載されていない場合には知らないうちに無効審判が進行して特許が無効になるという事態が生じ得るのですが、現在の特許庁の運用では出願時の代理人にもFAXで通知が行くようなので(参考サイト)、この問題は大丈夫そうです。

2)産業競争力強化法による審査請求料減額の問題

平成30年(2018年)3月までの時限措置として、産業競争力強化法により、中小ベンチャー企業向けの出願審査請求料が3分の1に減額されます(特許庁参考ページ)。約18万円の審査請求料が約6万円になりますので、結構大きいです。

この制度の対象は以下のとおりです。

a.小規模の個人事業主(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))
b.事業開始後10年未満の個人事業主
c.小規模企業(法人)(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))
d.設立後10年未満で資本金3億円以下の法人

すなわち、純然たる個人はこの制度の対象になりません。

なお、産業競争力強化法とは別に、特許法にはもともと出願審査請求料を免除または2分の1に減額してくれる規定(特許庁参考ページ)があるのですが、こちらは、個人の場合は、生活保護受給者、地方税非課税、または、所得税非課税といった条件なので、サラリーマンの場合は難しいと思います(逆に学生さんの場合は是非活用していただきたいです。)

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