ウォールストリート・ジャーナル(日本版)に「米テスラ、特許を公開へ?技術促進目指し」なんて記事が載ってます。ちょっと記事からだと意味がわかりにくい(「特許を公開」と言ってますが、特許制度のポイントは技術の公開の代償として独占権を与えることにあるので特許が公開されるのは当たり前です、「特許を開放」という意味なのでしょうか?)ので一次ソース(Tesla Motorsの公式ブログ)に当たってみました。
Tesla社CEOのElon Musk氏が以下のように書いています。
Tesla will not initiate patent lawsuits against anyone who, in good faith, wants to use our technology.
テスラは、誠意の元に、当社のテクノロジーの使用を希望する企業に対して特許侵害訴訟を提起することはありません。
そして、大手自動車メーカーの脅威を避けることよりも、EV業界全体の拡大の方が重要なので、オープンソース的な考え方を適用することにしたと結論づけています。
ということで、特許権を放棄したというわけではないようです。上記引用の”in good faith”の意味するところですが、特許訴訟をしかけられた時には防衛的に権利行使することはあるということでしょう(CNETの記事に記者発表会でのMusk CEOの発言骨子が載ってますがそれを裏付けています)。
要するに、特許は防衛的にのみ使うということで、twitter社のポリシー等と同様です。こういう考え方は、少なくとも成長中の市場では今後も広まっていくと思います。
もちろん、防衛手段としての特許が不要になったわけではないのですが、成長市場では特許技術の保護よりも利用を優先した方がよいということで、一種の「グロースハッキング」みたいなものでしょう。EVが成熟産業になると状況はまた変わるかもしれません。
追記:上記CNET記事をよく読むと、Musk CEOは他社に権利行使しない見返りの「紳士協定」として他社にも同様の行為を期待するとも言っています。いざという時の「軍事力」として機能する特許権を維持した上での「平和外交」戦略とも言えるかもしれません(ちょっとシニカルな書き方をしてしまいましたが、方向性としては正しいと思います)。