LADY GAGA商標の審決取消訴訟の判決文が公開されました

先日このブログでも書いたLADY GAGA商標登録出願が拒絶された件の審決取消訴訟の判決文が裁判所のサイトにアップされています。

基本的には、審決の内容の繰り返しに近く、ガガ側の主張はまったく認められていません。

最初に書いておくと、「LADY GAGA商標は(CDという商品に使われると)商品の質を表わすだけで商品の出所識別能力がない(ゆえに、登録できない)」という特許庁の考え方に疑問を感じる人もいるかもしれません。「LADY GAGAと書いてあるCDの出所はレディーガガなんじゃないの?」ということです。しかし、これは、CDを著作権法で言う著作物(GAGA本人が作詞・作曲した楽曲の場合)および実演の複製物ととらえた時の話です。今論じているのは商標の話であって、商品の出所とはレコード会社やレーベル名になる(ガガの例で言えばユニバーサル・レコードとかインタースコープ・レコードといった商標がCDの商品としての出所を表わしています)と特許庁は考えているということです。

原告側の主張と裁判所の判断を以下に簡単にまとめました(判決文はそんなに長くも、難解でもないので興味ある方は読んでみるとよいでしょう)。

1.確かにCDジャケットに「LADY GAGA」と書いてあると消費者は商品の質を表わすだけの商標であると認識するかもしれないが、審査段階で商標の使用形態を限定して拒絶するのはおかしい。→ CDという商品にLADY GAGA商標が付されていると消費者はどう判断するかを考えて拒絶査定しているので使用形態を限定しているわけではない。

2.仮にアーティスト名を(CDを指定商品として)商標登録しても26条1項(商標権は著名な芸名には及ばない)があるので弊害はない。→ 既に登録された商標の権利制限規定の話は関係ない。

3.たとえば、将来的にレディー・ガガがLADY GAGAレーベルを始める可能性があるが、そういう可能性を排除して拒絶するのはおかしくないか。→ 仮に、LADY GAGAレーベルや株式会社LADY GAGAがあっととしても、LADY GAGAという商標が付いたCDを見て消費者が商品の質を表わすだけと判断するのは同じ。

4.アーティスト名がCDという商品の質を表わすとは言えない。→ 表わすと言えます。

5.LADY GAGAのような著名商標に保護が与えられないのはおかしい。→ それは登録を認める理由にはならない。

6.”MICK JAGGER”、”ユーミン”等々、過去に登録された事例がある。→ 過去の判断に拘束される理由はない。

7.消費者がCDを買うときはレコード会社名ではなく、アーティスト名で検索するのが通常、これはアーティスト名が出所表示機能を果たしていることを意味する。→ 商品の内容を選ぶ上でアーティスト名を目印にしているだけであって、アーティスト名を商品の出所を確認しているわけではない。

ということでとりつく島なしという感じであります。

特許庁の主張も筋は通っていると言えば通っているのですが、現実的には、海外ではOKなのに日本だけがNGということで国際的な調和が取れない点が問題です。まあ裁判でこの点を主張しても「それは立法論の話」で終わってしまうと思いますが。

もう一つの問題(というか腑に落ちない点)は、上記の5にもあるように、レディー・ガガのように超有名になってしまうと(CDを指定商品としては)商標登録できないのに、知名度が低いアーティストであれば(審査官はアーティスト名と認識しないので)商標登録できてしまうという点です。本来的に保護の必要性が強い著名商標の方が保護されないというのも変な感じです(現実的には不正競争防止法等でカバーされますので実害はそんなにはないとは思いますが)。

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