新たな業界秩序の形成に水を差すエセ自炊代行業

昨日、「自炊代行」業者が著作権侵害容疑で逮捕されたというニュースが流れました。当初流れたニュースでは、情報が十分でなかったために、本来的な自炊代行行為(顧客が送った本をスキャンし、本は廃棄して、電子化データを返却)によって逮捕されたのか、それとも自炊代行業者がやっていた別件の著作権侵害行為によって逮捕されたのかがはっきりしませんでした。

しかし、ITmedia eBook USERの取材によればどうやら後者であるようです。「大人買い電子化サービス」と銘打ったサービスが実質的には勝手にスキャンしたPDFの販売でしかないと判断されたようです。

確かに、問題となったサイトを見ても、少なくとも「大人買い電子化サービス」というサービスについては自炊でも何でもなく、単にマンガのPDF化されたファイルを結構なお値段で売っているようにしか見えません。また、会員登録特典として「ハンター×ハンター1巻〜10巻までプレゼント中!!」なんて表記もあります。

そもそも、BOOKSCANなどの真の意味での自炊代行業が始まった時には、電子化した後の書籍のオリジナルを廃棄することで権利者には不当な損害を与えないよう配慮している点がポイントになっていました。

法律を厳密に解釈すればこれも違法になってしまいます(私的使用目的複製が認められるためには使用者自身が複製を行なうことが要件のため)。しかし、道義的・社会通念的には許容すべきである(法律の方が現実に合っていない)という意見にも納得できます。

真の意味ので自炊代行(スキャン代行)ビジネスについては、法律改正による合法化(以前に本ブログでも検討しました)、裁判所における法律の「画期的」解釈(たとえば、「代行業者はユーザーの手足として動いているのでユーザーが複製しているのに等しい」という解釈)、権利者へのライセンス料支払による許諾等々、新たな業界秩序を作っていく方向性はあったと思うのですが、このようなエセ「自炊代行業」が水を差す結果になってしまいそうで心配です。

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