米IBMがプライスライン社に特許侵害訴訟を提起

IBM Sues Priceline for Patent Infringementという記事(英文)がWall Street Journalに載ってます。Pricelineとはずいぶん懐かしい名前のように思えます(大昔に逆オークション特許が話題になったことがありましたね)が、ホテル予約サイトのBooking.comやレストラン予約サイトのOpentable.comを運営している現役バリバリの会社です。

上記のWSJの記事にもIBM自身のプレスリリースにも特許番号が載ってません。特許訴訟は当事者だけではなく、広く業界全体に影響が及ぶ(たとえば、レストラン予約サイトを運営している会社であれば、どの特許が争点になっているかは是非知りたいでしょう)ので特許番号は公開してほしいものです。しかしながら、日本ですと裁判所に出向いて調べるくらいしか手がないのですが、アメリカではPACER(Public Access to Court Electronic Records)というWebサイト(事前登録必要、一部有償)で検索するとすぐに訴状を入手できます。ということで、公益目的のために、自腹で(とは言っても1.5ドルですがw)調べた特許番号を以下に挙げます。

5,796,967”Method for presenting applications in an interactive service ”

7,072,849”Method for presenting advertising in an interactive service ”

5,961,601“Computerized method”

7,631,346“Method and system for a runtime user account creation operation within a single-sign-on process in a federated computing environment”

まだ中身をちょっと見ただけですが、少なくとも最初の2つは1993年の出願でかなり古いです(ゆえに範囲が広い可能性があります)。IBMがオンラインサービスのPRODIGY(古い!)から譲渡された特許であると訴状に書いてあります。

「IBMは特許権を攻撃目的では使わないと誓約していなかったっけ」と思った人もいるかもしれませんが、それはオープンソース開発企業に対して特定の特許を行使しない等の特定条件付の誓約の話であって、それ以外の企業に対しては積極的に訴訟をしかけることもあるようですね。

追記:上記のように書きましたが、よく考えてみると、水面下でプライスラインがIBMに権利行使しており、それに対する反撃としてIBM側が訴訟を提起した可能性もあるかと思います。そうとでも考えないとIBM側のメリットが思いつきません。なお、PACERで調べる限りPriceline側がIBMを先に訴えた形跡はないので、もしそうだとすれば秘密裏に警告書送付という段階だったのでしょう。

追記^2:↑のように書きましたがCBS Newsの記事”Why IBM is suing Priceline”によると、IBMの知財担当役員がインタビューで「ずっとライセンス交渉をしてきたのに応じなかったので提訴した」と回答しているようです(よく見ると訴状にも書いてありました)。また、「関係者」の話として(業績悪化に伴い)IBMは知財のマネタイズに力を入れ始めているという見方も紹介されています。オンライン予約系のサービスを米国で展開している(する予定のある)企業はちょっと気にしておいた方がよいかもしれません。

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特許を取得したスタートアップ企業は成長の確率が25倍高いというMITの研究について

英エコノミスト誌のサイトに” Mapping startups A recipe for success”という記事(英文)が載ってます。MITスローンビジネススクールの研究者が、2001年から2011年にカリフォルニア州で創業したスタートアップ企業160万社を統計的に分析した結果を発表したそうです(論文自体はサイエンス誌に掲載されてますが有償)。

同内容についての日本語記事から引用すると、

オーナーの名前に基づいて創設された企業は6年間にわたる成長確率が70%低くなると指摘した。一方、短い社名の企業は50%成功の可能性が高かったという。法人企業は非法人事業体の6倍の成功確率であり、ロゴがあると成功の確率が5倍高まる。特許を獲得している企業は25倍成長の確率が高い。

ということです。

直感的にはうなずける話です。たとえば、「栗原企画」とか「Kurihara and Associates」などの社名でロゴも作らずに営業して、会社がどんどん成長できるとは思えません(というかもともと大きく成長することを想定していない企業がこういう選択肢を取ると思います)。

特許と企業の成長率の関係についてはいろいろな意見があります。スタートアップの中にも、商品力や営業力だけで勝負する企業もあります。たとえば、ブルーボトルコーヒーが特許を取ってもしょうがないですね。また、今回のMITの調査結果も特許取得とビジネス成功への相関が判明しただけで、因果関係があることが証明されたわけではありません。優秀な経営者がいるスタートアップは成功の可能性が高い、そして、優秀な経営者は特許出願を行なう可能性が高いというだけの可能性もあります。

スタートアップ企業にとっての特許の価値について、米国ベンチャーキャピタルY-Combinator創業者のポール・グレアムは(だいぶ昔の)コラムで以下のように書いています(抄訳は栗原による)

我々は投資対象のスタートアップ企業に特許出願を勧めているが、それは競合他社を訴えるためではない。スタートアップ企業の成功とは、大企業に買収されるか、大企業として成長するかのいずれかになる。大企業とし成長したいのであれば他の大企業と対抗できる特許ポートフォリオ構築のために特許を取得しておくべきだ。大企業に買収されたいのであれば交渉材料として特許を取得しておくべきだ。

買収側企業がスタートアップ企業のビジネスに興味を持ったときの重要な意思決定は、自社で類似製品を作ってそのスタートアップと競合するか、スタートアップを会社ごと買ってしまうかのいずれの選択肢を取るかだ。この時、スタートアップ企業が強力な特許を持っていれば、この意思決定は「会社ごと買ってしまう」に大きく傾くことになる。「自社で類似製品を作って競合」では特許によるトラブルに巻き込まれることになるからだ。

テクノロジー系のスタートアップで商品やサービスの技術的要素で差別化できるのであれば特許取得はローリスク・ハイリターンのオプションになると思います。特許取得の費用の相場は100万円くらいという認識があるかもしれません。しかし、弁理士の報酬は自由競争なのでスタートアップに特化した事務所(たとえば、弊所(笑))であれば50万円以下の予算でも十分に特許取得は可能です。

ここで、注意すべきポイントは魅力のない製品やサービスの特許を取ってもその製品・サービスの価値が増すことはないということです。あくまでも、魅力のある製品やサービスをまず作り出し、その付加価値を高めるために特許を使うという考え方が重要です。

もちろん、実際の製品やサービスとは関係なしに、頭の中のアイデアだけで特許を取得し、それを大企業に買ってもらって悠々自適というパターンはないことはありません(私の知り合いの中にもそういう人がいます)。しかし、やはり、まずは良い製品・サービスを作る→それを特許で守るというパターンが基本だと思います。

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【雑談】やっと見つけた最強の足下暖房

テックバイザーのオフィスはいわゆるデザイナーマンション系のコンクリート打放し風のおしゃれな建物なんですが、冬はめちゃくちゃ寒いです。備え付けのエアコンでは全然容量が足りません。特に机の下の足がめちゃくちゃ冷えます。補助暖房器具をいろいろと試行錯誤して、ようやくベストに近い組み合わせが見つかったのでご紹介します。

まず、足下暖房としてすぐ思いつくのはホットカーペットです。もちろん使ったことはありますが、床がコンクリートなので熱が床側に逃げてしまうのかイマイチ暖かくありませんでした。ダイソー等で売っているアルミホイルぽい敷物を敷いてもあまりかわりません。アルミホイル加工になってるのは輻射熱を防ぐには有効かもしれませんが、熱の伝導を防ぐにはあまり意味がありません。

そもそも、ホットカーペットってそんなに熱くなるものではなく、ほんのり暖める用ですよね。通常よりワット数の大きい強力タイプみたいのがないかと思っていたのですが、どのメーカーもワット数はほとんど同じです。低温やけどのリスクを考えてということなんででしょう。

それからよくあるパネルヒーター型、おしゃれですが、これはホットカーペット以上に寒いです。特に足下を暖めるという目的ではほぼ無力です。

扇風機形状のハロゲンヒーターは試したことないですが、同じく足下を暖めるという目的には向いてないと思います。机の下にハロゲンヒーターを置くのは安全面でちょっとはばかられますね。同様の理由で従来型の電気ストーブも却下です。

カーボンヒーター式の電気ファンヒーターを机の下に入れて使うと、暖かいことは暖かいのですが、常時、熱風が足にあたっていると逆に辛いです。音がうるさいのもちょっと気になります。お客様との打ち合わせ用のテーブルで使っています。

電気膝掛けは(商品も電気代も)比較的安くてそこそこナイスです。自分は下の製品を買って愛用しています。ただ、これでも足先の冷え対策は厳しいものがあります。

 

足先暖房用に、電気スリッパみたいな形状の商品がありますが、昔持ってた時に足が動かしにくて非常にウザかった記憶があるので、今回は検討対象にしませんでした。

ということで、足先暖房用に今回買ってみたのがこのフットヒーターという商品です。

 

こたつのヒーターを裏返しに置いたようなものの上に足を直接乗っけます(風は出ません)。かなり暖かいですし、足を自由に動かせるので楽です(ちょっと熱いなって時に一瞬足を離しておけます(もちろん、温度調整はついてますが))。前述の電気膝掛けと組み合わせるとかなりナイスです。

ということで、SOHO系のオフィスで足下が冷えて辛いという方には、膝掛け+フットヒーターが私のお勧めです。

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EMS(国際スピード郵便)のあて名ラベルの簡単な作り方

#周知の話だったらすみません。

特許事務所の商売をやっているとしょっちゅう海外事務所との書類のやり取りが生じます。EMS(国際スピード郵便)を使うことが多いのですが、複式コピー式の宛名ラベルに書くのが結構面倒です。

複式コピー式なのでボールペンで筆圧をかけて書かなければならない(最近はペンで文字を書くことがほとんどないのでしんどい)ですし、自分は悪筆なので住所を読み間違えられて万一届かなかったりも心配です。パソコン画面の文字を見て正確に書き写すという作業もコピペ慣れした脳にはつらいものがあります。

そして、当然ながら複式コピー式なのでプリンタも使えません(ドットマトリックスのプリンタを買えば別ですが)。

しかし、郵便局の国際郵便マイページサービスに登録して「EMSラベル印字ネット受付サービス」なるサービスを使うと、ネットで宛名を入力して申し込めば事前印刷した宛名ラベルを送ってくれることがわかりました。無料です。

ラベル到着まで約5営業日かかるようなので緊急のケースでは使えませんが、宛先になる海外事務所はそんなに数があるわけではないので、事前に何枚かずつ作っておけば便利だと思います。

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テックバイザーの特許関連報酬体系(2015年度版)

今まで弁理士としての報酬体系をいろいろと試行錯誤してきました。弊所としてのポイントは、1)業界の平均値よりは低い価格を提供する、2)満足いただけるサービスレベルを提供するために過剰な値引きは行なわない、3)書類1枚提出すれば完了するような手続については最低限の料金で対応する、というものです。これは、以前も今も変わりません。2015年1月1日より、以下の料金体系でやっていこうと思います。

特許出願の標準手数料は、出願時:20万円、登録時(成功報酬):10万円です。日本弁理士会のアンケート調査ですと、それぞれの平均値は30万円、12万円となっていますので業界平均を下回っています。特に出願時の初期費用を抑えることで個人や小規模企業の方にも対応しやすくしています。通信費等の根拠が不明確な料金はいただいておりません。なお、明細書10ページ、図版10点、クレーム数20を越えるような複雑な案件については別途お見積もりいたします。

これに加えて、ソフトウェア関連発明である場合には、以下の割引き制度を提供します。

小規模企業割: 個人の方、および、社員10名以下の法人が出願人になる場合には出願時料金から3万円を割引きします。

図面提供割: 明細書作成で一番手間がかかる図面(システム構成図、画面例、フローチャート等)を編集可能な形式で提供いただき、かつ、明細書の説明書きのベースも提供頂けた場合には3万円を割引きします。

また、出願審査請求時ですが、これは弁理士の業務としては書類1枚出すだけなので5,000円で対応します(一般に、書類1枚出せば済む仕事(名義変更等)の弁理士手数料は5,000円で対応しています)。

これに加えて産業協力強化法により、2018年3月までは個人事業主や小規模企業にとって審査請求料と特許料(登録時)が3分の1になりますので、ベストケースシナリオですと以下のようになります(クレーム数6の場合)。

出願時(小規模企業割+図面提供割):140,000円(弊所)+15,000円(特許庁)

出願審査時:5,000円(弊所)+47,333円(特許庁)

登録時: 100,000円(弊所)+3,500円(特許庁)

合計30万円強で特許取得可能です)(実際にはこれに中間処理(補正・意見書)の料金が加わるケースが多いです。)

十分にコンペティティブな料金かと思いますので予算的に厳しい方も是非ご検討ください。個人の方等の出願できわめてシンプルな発明である場合には上記よりもさらに値引きすることも可能です。また、米国、中国、EPO(欧州特許庁)、韓国、カナダを中心に海外案件についても弊所でワンストップで対応可能です。

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