【DreamForce便り1】アプリケーション基盤と統合された新コラボレーション機能Chatter

Salesforce.com社のイベントDreamforce 09に来ています。

今回の発表の目玉は、Salesforce Chatter、要は企業内Twitterのような機能ですが単なる独立アプリケーションではなく、Service Cloud、Sales Cloudなどのアプリケーション機能と完全に統合されているのがポイントです。

メインフレーム・コンピューティング → クラサバ → クラウドとコンピューティング基盤が発展してきたように、コラボレーションの世界も ワークグループ → イントラネット → ソーシャルコンピューティングと発展してきた。facebookやtwitterで実現されている世界がなぜ企業の世界で実現できないのか、facebook上のフレンドのことはよく知っているのに、同じ会社の人のことはあまり知らないのはなぜなのかとベニオフ氏は吠えます主張します。

そして、Salesforce Chatterはfacebookやtwitterのマジックを企業内に持ち込み、今までバラバラだったコンテンツ、アプリケーション、コラボレーションの世界を一体化することを目的としています。

Chatterのデモでは、人間同士がChatterを使ってtwitter的な会話している途中で、アプリケーションからのアラート(たとえば、「案件xxxに競合他社が介入したとの情報が入りました」)などが同じTL上に表示されます。アプリケーションがボットとして動いて、イベントをメッセージとして吐いていると考えればよいでしょうか。

社外のtwitterとも連携が取れます。前述のとおり、Chatterは単なるアプリケーションではなく基盤機能なのでSaleseforce.comのプラットフォーム上のネイティブ・アプリケーションは自動的にChatter対応になります。利用開式時期は2010年初め。

エンタープライズ・コンピューティングとソーシャル・コンピューティングの融合についてはしばらく前からいろいろ議論されていましたが、なかなかイメージがつかみにくかったと思います。今回の発表でその具体的姿がわかってきた気がします。

アプリケーションもアクターとして会話に参加する。アプリケーション間でやり取りされるイベントも人間同士の会話におけるメッセージも同格に扱われる。すべてがリアルタイム、イベントドリブンでダイナミックに進んでいくという感じでしょうか。これはかなり大きなテーマだと思います。今後もこれからいろいろリサーチしていきたいと思います。

df09j1

あいかわらずパワフルなベニオフCEO、今回も1時間くらい時間が押して後半めちゃくちゃ早口になっていました。Join The Conversationが新しいキャッチフレーズ。

df09j2

会場もヒートアップしてきたようなのでちょっと照明も変えようかということで赤くなりました。よくわかりません。

df09j3

TwitterのBoard of DirectorメンバーJason Goldman氏も登場。Twitterとは完全に棲み分け路線です(まあ当然ですが)。

df09j5

ところで、来場者全員に配られたエコバッグ。twitterの文字が大きいことからスポンサーとして結構な支援をしていることがわかります。

df09j4

SaaSy(左)に次ぐ新たなキャラクターChatty(右)、何かどこかで見たような感じです。

(続く)

カテゴリー: IT | タグ: | コメントする

【お知らせ】シンクライアントについて講演します

株式会社アクシオ主催のシンクライアントセミナーで講演します。11/4(東京)と11/11(大阪)の2回。入場無料(要事前申込)。詳細はこちらです。

カテゴリー: IT, お知らせ | コメントする

【お知らせ】ITpro EXPO 2009のBIフォーラムで講演します

直前の告知になってしまいましたが、東京ビッグサイトで開催されるITpro EXPO 2009のBIフォーラムで10/29(木)の11:00から基調講演します。詳細はこちら。受講は無料です。一応事前申込みが必要みたいです。

最近はプライベート・セミナーの仕事が多くなってきており、ブログで告知できるものが少ないですが講演の仕事は定期的にやっております。

カテゴリー: IT, お知らせ | コメントする

【Teradata PARTNERS便り】進化するeBayのAnalytics on Demand

eBayによるセッションをもうひとつ聴講しました。昨年に引き続き、eBayのデータウェアハウス・オペレーション/アーキテクチャー責任者であるOliver Rotzesberger氏の講演(昨年の講演内容の記事)です。

ebayoliver

この講演のポイントは”Analytics on Demand”(別名 Analytics-as-a-Service)、つまり、社内の分析担当者の要求に応えて迅速に環境を用意できる仕組み作りです。

通常、このような仕組みを実現するためには、別途サーバを立ててデータマートを作ることになりますが、このようなアプローチではサーバ/DBMSの導入・設定やデータのコピーに時間がかかりすぎること、そして、データ管理の負担、データ不整合のリスクが高すぎることから、データウェアハウス内にテーブルとして仮想データマートをダイナミックに構築する仕組みを開発しています。

分析担当者の定義済テンプレートを使ったセルフサービス操作により、5分でデータマートの分析環境が利用可能になるそうです。

なお、このプロビジョニングの仕組みは、eBayとTeradataの共同開発によるもので、今回Teradataが発表したクラウド・ソリューションの一部として提供されます。プライベート・クラウド・ソリューションとは言っても「仮想化+イントラネット」とどこが違うんだというケースもある中で、Teradataはクラウドとしての付加価値を一応ちゃんと提供しています。

ところで、eBayのデータウェアハウスのサイズは5ペタバイト(Active-Active構成なので実質2.5ペタバイト)に達しているわけですが、ここまでに至った経緯については、「1999年にTeradataで1テラバイトのデータウェアハウスを構築し、その後、ノードを追加して、年率2倍強のペースで拡大して現在に至った」とのことです。成功したデータウェアハウスは年率2倍程度で拡大していくこともあるというのが経験則として知られていますが、まさにそのパターンに当てはまっています。さらに言えば、ノードの追加だけで1TB→5PB(5000倍)への拡張を可能とするTeradataのスケーラビリティも賞賛に値します(この製品はxxxPBまで拡張可能(理論的には)というような製品は多いですが、現実の企業の本番システムでこれほどのレベルの拡張性を実現したシステムはさほど多くないのではと思います)。

Teradataというと金融系とかのお堅いエンタープライズ系という一般的イメージがあるかもしれませんが、eBayだけではなくAmazon.comもTeradataを採用しているようで、米国の大規模ネットサービス企業のデータウェアハウスとして実は定番的な存在のようです。

カテゴリー: IT | コメントする

【Teradata PARTNERS便り】今年のゲスト基調講演者はドンタプスコット

今年のPARTNERSの基調講演は拙訳『デジタルネイティブが世界を変える』(原題: Grown Up Digital)の著者であるカナダのコンサルタント/リサーチャーのドン・タプスコット氏でした。

一昨年のPARTNERSの基調講演者は拙訳『ライフサイクルイノベーション』(原題: Dealing with Darwin)の著者であるジェフリームーア氏、そのときは、Teradata社にお願いして講演後にごあいさつをお願いしましたが(関連ブログ記事『ジェフリームーアさんとお話ししました)、今年も同じパターンとなりました。

tapscott

握手をしたタプスコット氏の手は大きくて暖かでした(笑)。

さて、講演の内容ですが基本的には著書の内容の抜粋でした。なので、興味がある方は『デジタルネイティブが?』を買ってください(笑)。本ブログにもちょこっとだけ抜粋してます(関連ブログ記事)。

と言いつつ、本には書いていなかったいくつか最新の事例も紹介していました。

tapscott2

卒業後の収入の2%を毎年死ぬまで支払うので私が大学に行けるよう出資してくださいとeBayに出品したデジタルネイティブ世代の話(すぐにeBayの規約違反で削除されてしまったようですが)。

rypple

Ryppleというサイト。自分の仕事上の関係者(信頼できる人々)にサーベイ(例: 今日の自分の講演はどうだったか?)を送り、匿名で返事をもらえるという仕組み。facebookと連動しているようです。

compete

ブロガー集団を中心としたネット新聞であるThe Huffington Postと伝統的新聞であるThe New York Timesのユニークビジターの違いを表わしたグラフ(赤い方がNY Times)。注目すべきはこのデータを生成したcompete.comというサイトです。Alexaのようにサイトのアクセス数調査を行なう会社なのですが、複数のサイトのビジター数がどのように変化しているかを簡単にグラフ化できるようになっています。マーケティング担当者が競合サイトとの比較を行なうのには便利そうです(ただし、米国内のネットユーザーしか調査対象になっていません)。

ところで、TeradataというとITベンダーの中でもかなりエンタープライズ寄りであり、デジタルネイティブとかソーシャル・メディアとかとの距離があるかもしれません。しかし、Teradataユーザー会代表による別のスピーチでは、LinkedInやfacebookのサービスデリバリチャネルとしての重要性が強調されていました。また、メディア向け会見ではちゃんと冒頭に公式ハッシュタグを指定するなど、twitterによる中継も前提としているようでした。米国に来る度に思うことですが、ソーシャル・メディアはエンタープライズITの世界にも深く関係するようになっています。ちょっと日米の差を感じるところです。

カテゴリー: IT | コメントする