Googleで「実用新案」をキーワードにして検索すると「実用新案は費用の無駄」と主張する特許事務所のサイトがトップに表示されたりします。もちろん、無審査登録なので特許ほどの価値はないですが本当にそうでしょうか?
模倣品を製造販売しようとする競合他社が、その製品が実用新案登録済であることを発見した場合、以下のオプションが取れるでしょう。
1.無視する
2.技術評価を請求する
3.無効審判を請求する
いずれもリスクを(そして、2と3では費用を)伴います。万一、2か3のオプションを取って新規性・進歩性ありの結論が出てしまえば、金を使って他人の権利にお墨付きを与える結果になってしまいます。そのリスクを嫌って、丸パクリはやめるように方針転換する可能性もあります。
競合他社がリスクを取ってでも権利を無効化する決意がある場合、あるいは、当該考案が明らかに新規性・進歩性を欠く場合は別として、一定の抑止効果はあります。
また、 実用新案登録に基づく特許出願という手段もあります。 まずは、実用新案で早期に権利化しておいて、競合他社を牽制しつつ、市場の状況を見つつ特許化するという戦略も取り得ます(この場合の実用新案の価値としては費用の安さよりも早期の権利化ということになるでしょう。
実用新案登録するなら意匠登録出願した方がよいという話もありますが、当然ながら、意匠登録は特定の工業デザインを保護するものなので、技術的アイデア(考案)そのものを保護できるわけではありません。外観を変えてしまえば容易に回避されてしまいます。仮に、特定の考案を実現するために不可欠な形状を意匠登録出願すると「 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠 」(5条3項)として拒絶になってしまいます。実用新案と同時にその特定の工業デザインを意匠登録出願するのならわかりますが、実用新案の代わりに意匠登録出願を行なうことが有効なケースがそう多いとは思えません。