3Dプリンタで殺傷能力のある銃を作成した人が逮捕された事件は周知だと思います。ついに来るべき日が来てしまったという感じですね。
この問題に関して、公安委員長が法規制の検討が必要との見解を示したそうですが(参照記事)3Dプリンタの販売を一律に禁止するわけにもいかないので難しいところです。
テクノロジー的解決策としては、今すぐには無理としても、将来的には特定の強度・構造を持つ部材を製造(印刷)する場合にネットワークから認証が必要とされるような仕組みが有望かもしれません。
そして、米国ではそのようなアイデアに関する特許が既に成立しています(US8286236)(Manufacturing Control System)。クレーム1は以下のようになっています。
1. A method for secure manufacturing to control object production rights, the method comprising:
identifying at least one object data file configured to produce an object by a manufacturing machine;
confirming that an authorization code is associated with the object data file, the authorization code configured to be received by the manufacturing machine, the manufacturing machine adapted to receive the authorization code; and
enabling the manufacturing machine to interface with the object data file only if the authorization code meets one or more predetermined conditions,
wherein the manufacturing machine is configured for at least one or more of additive manufacturing, subtractive manufacturing, extrusion manufacturing, melting manufacturing, solidification manufacturing, ejection manufacturing, die casting, or a stamping process.
クレームは長いんですが、実質的に言っていることは、「設計データに対応する承認コードを受信した時だけ製造を許可する製造機械」といった感じでかなり範囲が広いです。「3DプリンタのDRM」特許とも呼ばれています。
権利者はThe Invention Science Fundですが、これはNPEとして有名なIntellectual Ventures(IV)の一組織である発明者部隊です。IVは他社から特許権を買い集めて、権利行使するという典型的NPEのオペレーションに加えて、社内でも一から発明を行なっています(そういう意味では、IVは、他のいわゆるパテントトロール的NPEとは微妙に違います)。
この特許の優先日(実質出願日)は2007年12月21日です。この時期はスタラタシス社による3Dプリンタの基本特許が2009年に切れる直前で3Dプリンタの民生部門での普及が予測されていた時期です。この特許の明細書には、3Dプリンタについての記載がないので、先を読んでいたのか、単なる偶然なのかは不明ですが、やはり広い特許を取るためにはタイミングは重要です(テクノロジーが普及してからその分野で広い特許を取るのは困難です)。
なお、ちょっと調べた限りでは日本では同等特許は成立していないようなので、日本ではこのような仕組みを自由に実施できる可能性が高いです。