ITmediaに「GoogleとSamsung、広範な特許クロスライセンス契約を締結」という記事が載っています(一瞬AppleとSamusungに空目してびっくりしてしまいました)。実は、これはそれほどたいした話ではありません。
両社が現在保有しているものだけでなく今後10年間で取得される特許も対象になるようですが、それ以外の条件は公開されていません。クロスライセンスとは、要するに両社がお互い特許権を権利行使しない(訴えない)約束であって、そもそもGoogleとSamsungが互いを訴えることはどちらにしろ考えにくいので、このクロスライセンス契約は「SamsungとGoogleは(少なくとも今後10年間は)仲間だよ」ということを対外的にアピールするだけにすぎないと言えます。
Apple(およびMicrosoft)からの特許攻撃に対する防御という点ではこのクロスライセンス契約はほとんど関係ありません。そもそも、特許権を所有していることは他人の特許権を侵害しない保証にはなりません(ちょっとややこしい話ですが、当ブログの過去記事「【超入門】高度な技術を使っても特許侵害が回避できるとは限らない」)を参照してください)。また、特許訴訟に対する対抗措置として逆訴訟する場合でも、原告になれるのは特許権者であってライセンス先ではありません。
FOSSPatentsでは「SamsungとAppleの和解がうまくいきそうにないのでアドバルーンを上げたのでは?」との憶測が書かれていますが、ちょっと考えすぎじゃないかと思います。
また、これもFOSSPatensに書いてある話ですが、クロスライセンスの範囲がAndroid以外(典型的にはTizen)にも及ぶものであるとするとちょっとおもしろいことになりそうですが、契約内容の詳細が公開されていないので何とも言えません。