NetApp社のクラウド戦略について(2)

NetApp社のクラウド戦略についての続きです。

クラウド事業者あるいはインターナルクラウド(この言葉についてはいろいろありますので別記事で書きます)を展開する一般企業向けにストレージのソリューションを売ることにフォーカスする(つまり自社ではクラウド事業はやらない)というNetApp社の戦略はシンプルであり妥当であると考えます。

しかし、ここでのポイントとなるのは差別化の方法です。あらゆるハードウェアベンダーについて言えることですがクラウドの世界では安価なコモディティテクノロジーを大量に使って「規模の経済」を出すことが重要となりますので、ハードで差別化するのは根本的に難しいと言えます。Googleなどはそもそも外部ストレージすら使っていないと推定されます(独自サーバの内蔵ディスクをファイルシステムレベルで抽象化して大容量/高信頼性のストレージ空間を実現している)。

ということで、NetApp社のクラウド担当マネージャーにどう差別化していくのという質問をぶつけたわけですが、あたかも「その質問は予期していたよ」と言わんばかりに即座に回答が返ってきました。その答とは、「当社はGoogleの市場にはフォーカスしていない」というものです。

NetApp社ではクラウドを4つのカテゴリーに分類しています。1)パブリック(Non-IT)、2)パブリック(IT)、3)プライベート・エクスターナル、4)プライベート・インターナルです。

1)パブリック(Non-IT)とはfacebookやiTunesなど要するに一般消費者向けの大規模なネットサービスのことです。2)パブリック(IT)とはGmail、Google Appsなど、3)プライベート・エクスターナルはSalesforce.comやOracle On Demandなど、4)プライベート・インターナルは社内向けのクラウドです(NetAppの製品を活用した事例としてはBMW、Siemensなどが挙げられていました)。

通常、クラウドをパブリック(一般向け)とインターナル(社内向け)の2つに分類することはよく行われていますが、NetApp社のこの分類方式の方が利にかなっていると考えます。

1)から4)に行くに従ってSLAの要件がどんどん厳しくなっていきます。そして、上記の3)と4)にフォーカスするのがNetApp社の戦略ということになります。Google(そして、Amazon)は基本的に2)にフォーカスしていますので直接的には競合しないということです。

では、3)と4)の領域でどう差別化していくかですが、ここでは従来型のエンタープライズ市場における強みと同じ強みを生かせることになります。たとえば、システム稼働中にバックアップを取ったりデータを移動したり、ファイルの複数論理コピー(それぞれが更新可能)などの機能です。この辺はどのストレージベンダーも提供している機能ですが、NetApp社の場合、ファイルシステムレベルで実装しているのでより堅牢性・効率性が高いと言えます。同社のテクノロジーのポイントは、基本的にはデータが更新「された時には、データブロックを上書きしないで別のブロックを割り当てるという仕組みにより、ファイルの物理的コピーを最小化しつつ、複数の論理バージョンを維持できる点にあります(SunのZFSなども似たような仕組みです、なお、この件に関してSunとNetAppの間で特許関係でもめてますがそれについてはまた機会があれば書きます)。

ところで、今回インタビューさせていただいたNetApp社のマネージメントの方々ですが、テクノロジー好きでフランクな人揃いでインタビューもなかなか楽しかったです。この雰囲気は以前にも感じたことがあるなと思いましたが、(調子よかったころの)Sunに近いものがあります(実際、元Sunの社員は多いようです)。やはり、強力な製品テクノロジーに基づいたシンプルな製品ラインとシンプルな戦略という会社が社員の立場としては一番良いのかもしれません。実際、NetApp社はFortune誌による「最も働きやすい企業番付」の常連で、今年は第1位に選ばれております。と言いつつ、単独製品での強みに基づいた企業が、製品テクノロジー面での差別化を維持していく、そして、独立した企業としてのポジションを維持していくというのは昨今のIT業界の環境ではなかなか難しいであろうとも思います。

次回は同社のグリーンIT戦略について書きます。

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