NetApp社のグリーンIT戦略について

NetApp社のアナリスト向けイベントで取材した内容からグリーンIT関連のお話しを簡単に紹介します。

そもそも、NetApp社とグリーンITはイメージ的にあまり結びつかないのではないでしょうか?しかし、同社は自社データセンターのグリーン化をかなり積極的に推進しており、対外的にもアピールしております。たとえば、昨年に日経BPが主催した「グリーンITフォーラム」では、NetApp社のIT部門CTOであるDavid Robbins氏が自社事例紹介で基調講演しています。今回は、まさにそのRobbins氏にインタビューすることができました。

NetAppはクラウド事業やデータセンターアウトソーシング事業を行なっているわけではないので、自社業務向けデータセンターでのグリーンIT化を推進しています。

グリーンITという観点ではストレージ機器は結構重要な要素です。理由は、1)そもそも機器台数が多い(サーバより多いことが通常)、2)ハードディスクにはメカ部分があるので定常電力消費が大きい、3)一般に利用効率が低くスカスカの状態で使われていることが多いので効率性向上の余地が大きい、などがあります。

ストレージ・ベンダーの立場から言うと、グリーンITを売り込むことで、ストレージ統合・仮想化やデデュプ(重複排除)などによるストレージ利用効率向上のソリューションが売りやすくなるでしょう。そういうわけで、NetApp社は自社のデータセンターのグリーン化を進めることで経費を削減すると共に、顧客向けのグリーンITソリューションのPOCともしているわけです。

Robbins氏のプレゼン ではグリーンITの具体的効果として、カリフォルニアの電力会社PG&Eのリベート金を挙げていました。PG&Eは、電力効率性が高い設 備を使用している利用社に対して奨励金を払っています。その金額がおよそ140万ドルに達したようで、額面140万ドルの小切手(本物)のスキャン画像を プレゼンの中で紹介していました。正直、日本でもこういう金銭的インセンティブ制度をもっと取り込まないと日本でのグリーンIT推進は難しい気がします。

さらに、データセンターも見学させてもらうことができました。一般の顧客も見学可能な場所のようですし、ブログの掲載許可ももらっているので写真を載せます(とは言え、Googleのデータセンター等と比較すると全然普通ですが)。

NetApp社のデータセンター、既存の部分はPUE=1.31、新規建設部分はPUE=1.2を目指しているそうです。かなり優秀な数値ですが、ポイントは外気冷却、つまり、クーラーを使わず外気を直接取り入れる方式にあるそうです。PUEの向上には冷房の効率化が最も重要なので、クーラーを排除できるとかなり効果的です。外気冷却は寒冷地だけでしかできないのかと思っていましたが、シリコンバレーでも全然OKなんですね。ただし、本当に猛暑になった時はクーラー作動するようです。当日は、半袖Tシャツでも暑いくらいの陽気でしたが、クーラー作動なしで外気冷却していました。マシンルーム内に入ると、特有の寒さがまったくなく外と一緒です。どうやら外気冷却のポイントとなるのは温度よりも湿度のようで、東京などの多湿な地域では外気冷却は難しいらしいです。下の写真ちょっとわかりにくいですが外気を直接取り込んでいるファンです。暑くなるとシャッターが閉まり、クーラーが作動して内気循環するようになります。

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冷却の効率性向上のもうひとつのポイントが機器により熱せられた空気をできるだけ効率的に外に排除すること。冷たい空気と暖かい空気が混ざると冷却の効率性が一気に落ちます。周知とは思いますが、ホットアイルとコールドアイル、つまり、冷気の通り道と暖気の通り道とを明確に分離することが重要です。

NetApp社のデータセンターでは、ビニール製のすだれのようなものを使用してホットアイルとコールドアイルの分離を行なっています。特許出願中ということでしたが、同様の仕組みはかなり昔にラーメン屋で見たことがあるので公知技術ではないかと思うのですが?(他に何か隠された特徴があるのかもしれません)。

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なお、新型データセンターの方は、アクリル性の扉でコールドアイルを完全に囲い込んでいます。

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PUE向上のもうひとつのポイントはUPS(無停電電源装置)ですが、蓄電池ではなくフライホイールタイプのバックアップ電源を使うことで効率性を向上しているようです。

NetAppに限らず、米国系ベンダーのグリーンITのプレゼンを聞いて思うことは、グリーンITを環境対応という倫理的な観点よりも、コスト削減、効率性向上という実利的面からとらえていることが多いということです。エコはエコでもエコロジーではなくエコノミーということですね。私も、グリーンITは「インフラコスト削減の取り組み」(メイン)+「地球にも優しい」(サブ)で考えた方が良いと思っています。

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