ちょっと忙しくてチェックを怠っていましたが、オリンピック・パラリンピック招致委員会が出願していたTOKYO 2020の文字商標(2012-002562)が登録されていました。10月16日に登録査定が出て、11月1日に5626678号として登録されています(現時点ではまだネットでは登録公報は見られません)。指定商品はきわめて広範なので、「TOKYO 2020」あるいはそれに類似した文字列(たとえば、「2020年東京」)を商売でマークとして使用すると商標権侵害となり得ます。
本ブログの過去記事(「TOKYO 2020を勝手に使ってはいけない理由とは?」)では、TOKYO 2020の文字に公式デザインのマークを合わせた結合商標は登録されているが、TOKYO 2020だけの文字商標は審査中と書いてましたが、それが登録されたわけです。
ちなみに、紙媒体の「販促会議」12月号に「販促担当者が必ず押さえておくべき”アンブッシュ・マーケティング”の境界線」という記事(Webには載ってません)を寄稿したのですが、その段階ではどうやら登録されそうだという関係者からの情報はあったのですが、情報の確定がぎりぎり間に合わなかったのでちょっとぼかした書き方にしてます。
通常は、地名+年号というタイプの文字商標は識別力なしとして登録されないと思われますが、TOKYO 2020についてはオリンピックを表わすものとして識別力ありとして判断されたのでしょう。ただ、商標法3条2項の規定では、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」となっており、識別力が生じるのはあくまでも使用の結果という規定ぶりになっているので、この辺をどう解釈したのかが気になります。
また、広範な商品・役務が指定されている(たとえば、べっこう、かんなくず、ボイラーの修理保守等も指定されています)のですが、商標は自身が使用することで出願するのが建前なので、通常、このようなあまりに広範な出願をすると本当に使用意思があることの証拠(業務計画書等)を求められます(過去記事「【商標小ネタ】AKB48ブランドの「ぞうげ」は発売されるのか」を参照)。この辺もどうなったのかと思います(「TOKYO 2020ブランドのかんなくずを販売したいとの要請があればライセンスに応じる」というような業務計画書があればいいのかもしれませんが)。
LONDON 2012などの商標も(マドプロ経由で)登録されてます(ただし、このように広範な商品・役務が指定されているわけではありません)ので国際的観点からはつじつまがあってるのですが、特別扱いなんだなあという印象はぬぐえません。
なお、この商標権はTOKYO 2020に類似の商標の使用を禁止するだけなので、以前、話題(過去記事「JOCは許可なく「おめでとう東京」を使うのはアウトと言っているようですが、根拠はあるのでしょうか?」を参照)になったように、「おめでとう東京」などのオリンピックを連想させる言葉の商売での使用がこの商標権を根拠に禁止されることはありません。「おめでとう東京」と「TOKYO 2020」は観念類似なので商標として類似というような判断を裁判所が下したらかなり驚きです。
もちろん、今後、ロンドンオリンピック特別法のような法律が立法されるのであれば、商標権とは別の理由により「オリンピック連想語」の使用が禁止される可能性はあります(過去記事「ロンドン五輪での便乗商法禁止はこうなっていた【やや衝撃】」を参照)。
来年、新開発の商品を販売予定です。
全ての部品を東京都の業者が生産するのでそのことを表す文字を商品の片隅に表示しようと思っています。
具体的には「made in Tokyo 」です。この表記をしようすることはなにも問題ないと認識しています。
この表記に併せて、製造年を表す「2020」を表示すると商標権侵害になってしまうのでしょうか?
具体的には「made in Tokyo 2020 」です。
これが商標権侵害になるとすると、納得がいきません。製造場所と製造年を表示しているに過ぎないからです。侵害になるということであれば、その理由をご教授ください。