iWatchの特許公開公報を読んでみたらこんな感じでした

AppleのNext Big Thingがスマートウォッチ(通称、iWatch)になりそうなことはよく知られています。なお、実際にiWatchの名称で商品化すると、また世界各国で商標関係で一悶着ありそうな気がしますが、それはまた別の機会に書くこととして、最近公開されたAppleのスマートウォッチ関連特許出願(US 20130044215 A1)からiWatchがどんなものになるかを予測してみようと思います(なお、一部報道ではデザイン特許と書かれているようですが、これは意匠登録出願ではなく、通常の特許出願(utility patent)です)。

なお、別に特許出願(さらには特許権取得)したからと言って製品をその通りに作らなければいけないということはありません。最終製品が特許公報の内容と異なったものになる可能性は十分にあります。

発明の名称は「Bi-stable spring with flexible display」(柔軟性のあるディスプレイを備えた双安定スプリング)ということで、腕にはめた時とはずしてぺっちゃんこにした時で両方とも安定する機構を備えている点がポイントのようです。従来型のウェアラブル機器が体にぴったりフィットせず不安定であるという課題を解決するための発明であるとも書かれています。

明細書としては、そんなに長くないので全部読むことも十分可能ですが、最初のクレーム(特許請求の範囲)に注目してみます。(通常は、Appleとして一番権利を押さえたい発明が書かれているはずです)。

A wearable video device arranged to be worn by an end-user, comprising:
a flexible substrate having a flat state and a curled state;
a flexible display disposed upon a first surface of the flexible substrate, wherein in the curled state the flexible substrate conforms to an appendage of the end-user, the flexible substrate further comprising:
an electronic module in communication with the flexible display, the electronic module providing information to the display, at least a part of which is presented in real time for presentation by the flexible display; and
a mechanism for detecting an end portion of the flexible display, the detection for adjusting the arrangement of information shown on the flexible display to match the size of the appendage the wearable video device is mounted on.

ざっくり訳すと、まずvideo device(動画表示機器)であって、フラットな状態とカールした状態がある柔軟な基板上に、柔軟なディスプレイを配置して、カールした状態では腕にフィットするようにする。基板上にはディスプレイにリアルタイムで表示を行なうための通信モジュール、 付けた腕のサイズに応じてディスプレイの端を検知して表示を調整するメカニズムがあると書いてあります。

これがどういうことかというと、図5Aと図5Bを見るとわかりやすいです。

image

図5Aが腕に付けていないぺっちゃんこ状態です(絵としてY軸方向の長さがちょっと足りない気がしますが)。402は柔軟性のあるディスプレイ、408は電子回路部分(本体)です(なお、502は腕の動きを利用して自動巻時計方式で充電するデバイスです)。この状態でも操作できます(設定作業等をする時はこの状態の方がやりやすいと書いてあります)。これを腕にまいた状態が図5Bです。本体部(408)は完全に隠れてフレキシブルなディスプレイが腕に巻かれたような状態になります。付けた人の腕の太さによって、ディスプレイがどの位置で重なるかが変わりますが、その場所を検知してディスプレイ上の表示が連続して見えるようにするのがクレーム1の骨子だと思います(図5Bでディスプレイ上に”CONTINUOUS”という文字が切れ目なく表示されていますが、この点を表現していると思われます)。実現できるかどうかは別としてクールだと思います。

また、クレーム16には、通信リンク、電子回路、および、柔軟なディスプレイとタッチ入力装置を表面に備えた「スラップ・ブレスレット」という書き方で発明が記載されています。

自分はスラップ・ブレスレットというもの自体をよく知らなかったのですが、YouTubeに説明をしている動画がいくつかあります。絵で見るよりも動画で見るとどういうものかわかりやすいです。いくつかある中で自分が最も「味わい深い」と思った動画を引用しておきます。

 

スマートウォッチ的な製品は今までもいくつかありましたが、成功したとは言いがたい状況です。その大きな理由のひとつは(キラー・アプリケーションがあまりないことに加えて)デザインがイマイチであったという要素が大きいと思います(言うまでもなく、腕時計におけるデザインの重要性は電話以上です)。Appleは当然工業デザイン的なイノベーション(斬新な意匠というだけではなく、腕時計をはめるという「体験」の変革)を追求するでしょう。

iWatchが下の図のようなものだったら全然欲しくないですが(画像はBrett Jordanという人が作ったジョーク画像でCCのAttributionで公開されているものです)、

iWatch

もし、この特許出願のように表面に時計やiPhoneの通知が表示されるスラップ・ブレスレットのようなものであれば、めちゃくちゃ欲しいです。Appleが4度目の(iPod、iPhone、iPadに次ぐ)破壊的イノベーションを行なってくれることに期待します。

追記: もしiWatchがこの特許公開公報に記載されているようなものになるとすると、従来のように時計本体にベルトが付いている形態の腕時計ではなく、切れ目のないつるんとしたベルト(というよりも、ブレスレット)の全面に時刻など表示がされる形態になります。ということは、「スクリーンセーバー」としてベルトに自分の好きな画像を表示することが可能になるわけであり(e-Paperにより非動作時の消費電力がないことが前提)、アクセサリ性が強い時計という商品を大量販売する上での問題、つまり、他人と同じデザインの時計を持つのをいやがる人が多いという問題を解決できることになります。誰もが自分独自のスクリーンセーバー(=ベルトデザイン)で自己主張できるわけですから。まあ、特許公報のとおりに作れば(作れれば)という前提での話ですが。

カテゴリー: ガジェット, 特許 パーマリンク

2 Responses to iWatchの特許公開公報を読んでみたらこんな感じでした

  1. ピンバック: iWatchは今までのスマートウオッチの「これじゃない感」を覆せるか? | CORAL CAFE

  2. ピンバック: 配電盤ショートの原因はネズミか/血管からのウイルスベクター投与でアルツを遺伝子治療/囲碁棋士「Crazy Stone」に敗れる/中国の太陽電池大手が破産 at サイエンスライター 森山和道

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です