Googleのブック検索は「世界中のあらゆる情報を検索可能にする」という企業理念の元に行なわれているとされていますが、当然ながらGoogleも営利企業ですから、そうすることで利益を上げることが大前提となります。
あまり知られていないかもしれませんが、Googleブック検索では絶版書の全文を販売するだけではなく、流通中の本も権利者のオプトイ ンがあれば販売することが可能になっています(つまり、絶版書籍はダウンロード販売するのがデフォルトで権利者はオプトアウト可能、流通している 書籍はダウンロード販売しないのがデフォルトで権利者はオプトイン可能ということです)。
これに加えて、Googleは電子書籍の販売に乗り出す意向を表明しています(ソース)。
これが実現すると、書籍を探している消費者はまずGoogleブック検索で検索し、買いたい本が見つかれば、1) ブック検索サイトでダウンロード購入(オプトアウトされていない絶版書、あるいはオプトインされた流通書)、2) Googleの電子書籍サイトでダウンロード購入、3) Amazon等でダウンロード購入、4) Amazon等で物理的な本をダウンロード購入等々様々な選択肢が取れるようになります。音楽をインターネットラジオで視聴してiTMS等でダウンロード購入するのと同じようなエクスペリエンスです。Googleはこのエクスペリエンスを実現するため仕組みを着々と積み上げています。
権利関係うんぬん以前の問題として、書籍コンテンツが全文検索できるのは一般消費者にとって大変便利です。権利関係さえクリアーされれば、ネットで検索→ダウンロード購入というエクスペリエンスを求める流れは止められないでしょう。iPodに慣れた人が、CDをいちいちプレイヤーにかけて聴くというスタイルに戻れないのと同じです。もちろん、紙の本という存在は当面残ることになるでしょう。これはCDが凋落傾向にはあるものの当面はなくらないと思われるのと同じです。
そう考えてみると、2008年に図書館蔵書のスキャンプロジェクトから撤退してしまったMicrosoftの判断は正しかったのかという点が気になります。Microsoftによるネット広告事業への進出の遅れがGoogleの躍進を許してしまったというのはよく言われる話です。同じようなことがブック検索についても数年後に議論されるかもしれません。