IIJ(株式会社インターネットイニシアティブ)がコンテナ型データセンターに関する特許(第5064538号)を取得したというプレスリリースが出てましたので、ちょっと中身を調べてみました。
念のため書いておくと、コンテナ型データセンターとは、貨物用コンテナの中に、データセンターに必要なサーバ、ストレージ、ネットワーク、電源、冷却などの機器を入れることで、設置コストや設置時間を大幅に向上するテクノロジーです。特に、クラウド系のサービスにおいて多数のサーバを使用する際には重要なテクノロジーです。
本特許のポイントはびっくりするほどシンプルで、コンテナの中でサーバラックを斜めに配置するというだけのことです。他にもいくつか付加的なアイデアをクレーム化しているのですが、結局、一番シンプルな(=一番範囲が広い)クレームで権利取得できています。この配置により、コンテナの奥行きを短くできて標準サイズのコンテナを利用できること、作業スペースを十分に取れること、ラックの側面からも吸排気できること等がメリットです。
【請求項1】
コンピュータシステムを含むハードウェアを登載した複数のラックをコンテナの中に設置したコンテナ型データセンタモジュールであって、 前記複数のラックは、それぞれのラックの正面から奥行き方向に向かう方向がコンテナの長軸方向に垂直な方向から所定の角度だけ傾斜した態様で設置されており、よって、それぞれのラックの正面から奥行き方向に向かう方向がコンテナの長軸方向と垂直な方向に一致するように設置されている場合よりも前記コンテナの長軸方向と垂直な方向のサイズを縮小することができることを特徴とするコンテナ型データセンタモジュール。
プレスリリースにも概要図が出ていますが、実はその概要図がほとんどそのまま特許の権利内容というわけです。こういうシンプルな特許は回避しにくいので、競合他社はちょっと困るかもしれません。
「こんなの当たり前じゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが、であれば出願時(2010年8月2日)より前に同じような例があったことを証明すればこの特許(クレーム)を無効化できます(とは言え、簡単に見つかるような先行事例があるくらいならそもそも特許化されてはいません)。
一般的に「言われてみれば単純だけど誰もやってなかった」というのは強力な特許の特性です。製品・サービスや開発や改良の中で「他社がやっていないちょっとした工夫」を思いついたならば、特許出願しておけば思わぬハイリターンの投資になる可能性があります。みんなで集まって頭をひねって特許出願する発明を考え出すのもひとつのやり方ですが、日常的にやっている改善活動からダメ元でも良いので特許化できるアイデアを抽出する方が効率的なことが多いんじゃないかと思います。
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