Android陣営は垂涎かもしれないPalmの特許ポートフォリオ

HPの年次アナリストイベントにおいてTouchPadの製品計画を最初に聞いたとき、「確かにPalm由来のWebOSテクノロジーの素性はいいかもしれないが、市場がiPadとAndroidで支配されつつある今からISVのエコシステムを築くのは困難だろう、HPには何か秘策(ものすごく安いとか、Windowsとデュアルブートとか)があるのだろう」と思っていました。しかし、実際に出た製品は特に何の秘策もなかった(しかもちょっとお高め)だったのでがっかりしてしまいました。

案の定、ほとんど売れなかったようで、早くも8月18日には、HPはWebOS系ハードからの撤退を発表します。Fail Fast, Fail Cheap的な発想としては良いのですが、だったらそもそも何でWebOSベースのハードを出そうと思ったのかということになります。市場のニーズがあるからというoutside-in型の発想ではなく、買収したPalmのリソースがあるからとりあえず何か作ってみるかというinside-out型の発想があったとしか思えません。

一般に、プラットフォーム製品は、「ISVのエコシステム確立→ソフト充実→プラットフォーム売れる→ISVがますます集まる」という良循環を達成できれば一気に普及しますが、逆に「ソフト不足→プラットフォーム売れない→ISVが離れる→ソフト不足」という悪循環にはまるとそう簡単には抜け出せないので、衰退フェーズに入ったプラットフォーム・ベンダーの企業価値の評価には十分な注意が必要です。『MSよ、グーグルに対抗してノキアかRIMを買ってはいけない』なんて記事がありましたが、まさにその通りだと思います。

しかし、特許資産となると話は別です。衰退しつつあるプラットフォームの価値は疑問としても、昔から研究開発をしている企業には魅力的な特許資産がある可能性があります。Palmも1992年かPDAを作っていますので強力な特許ポートフォリオを持っている可能性があります。

以前に、AppleとPalmの間で特許関係が問題になりそうになった時のEngadgetの記事ではPalmの特許がいくつか紹介されています。たとえば、1) 周りの明るさに合わせてディスプレイの明るさを自動調整、2)電話アプリのダイヤル画面に連絡先を表示、3)AC電源につながれている時は画面を自動で暗くしない、4)キャッチホン使用時にひとつの画面を切り替えて使用、などです。正直、進歩性に疑問もあるものもありますが、PDA、スマートフォン関係で数百件の特許を有しているのでまあそれなりに魅力はあると思います。

当然、GoogleはPalm(WebOS)の資産(できれば特許だけ)を買いたいと思っているでしょう。しかし、最近出た噂ではどうやらSamsungが積極的にWebOSビジネスを買収しようとしているようです(参考記事)。GoogleのMotorola買収によって、SamsungにとってGoogleも完全な「お友達」とは言えなくなりました。ゆえに、AppleだけでなくGoogleとも戦える特許資産を保有することが重要になってきたわけです。

『米グーグルのモトローラ買収で「特許バブル」は終えんか』なんてロイターの記事がありましたがスマートフォン関連特許の世界ではまだまだいろいろ動きがありそうです。

カテゴリー: ガジェット, 特許 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です