また、FOSS Patentsがネタ元です。
欧州において特許侵害に基づく販売禁止仮処分命令が出されてちょっと苦しい立場のSamsungですが、明るい兆しもあると言っています。その理由は、Appleが主張した特許の多くがオランダの裁判所によって進歩性を欠き無効であると判断されたことにあります。
まだ、仮処分の段階なので確定ではないのですが特に注目すべきものとして、iPhoneやiPadで使用されているスライドバーによるスリープ解除アクションの特許(米国特許公報)があります。
私は、以前、HTCのWindows Mobile機を使っていましたが、これは電源ボタンの長押しでスリープ解除する仕組みでした。これですとポケットやかばんの中でいつのまにかスリープ解除してしまい誰かに勝手に電話をかけてしまうという事故が結構ありました。かと言って、解除時にいちいち暗証番号を入れたりするのもめんどくさいですね。Windows MobileからiPhoneに持ち替えたとき、スライド式の起動方式を見て、簡単に起動でき、かつ、誤って起動してしまうこともないエレガントな設計にさすがAppleと思ったものでした。
しかし、今回のオランダでの裁判において、スウェーデンの小規模携帯メーカーのWindows CE機で同様のアイデアがAppleの出願(2005年12月)より前に使用されていた証拠を、Samsungが無効理由として提出しました。これにより、オランダの裁判所は本特許は進歩性を欠き、無効であると判断したようです(あくまでも仮決定)。
そもそも、特許の審査プロセスとは「特許できる理由を探す」プロセスではなく、「特許できない理由がない」ことを確認するプロセスです。これはいわば「悪魔の証明」なので、絶対に漏れが生じます。特許制度自体がこのような漏れ(本来は進歩性がないのに特許にしてしまう)ことを前提に作られており、後で、利害関係者が裁判や審判で無効性を争うことができるようになっています。
このように特許権者が訴える→訴えられた方が出願前の先行技術を探して特許を無効化するというパターンは、別に今回のケースに限らず、さらには、ソフトウェア特許に限らず、あらゆる特許訴訟において頻繁に行われているパターンです。これにより、進歩性・新規性がない特許が無効になり、真のイノベーションを生み出す特許だけが残っていくことになります。
これを労力の無駄と考える人もいるかもしれませんが、私としては自由主義経済のすべての企業がプレイしているパワーゲームのひとつであり、たとえば、M&Aにおける議決権獲得争いなんかと同じようなものだと思っています。